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ついに叔母の女優デビュー

ちゃんちゃら可笑しい、この題名。
でもその事件は突然起きた2013の夏。

わたしはハナの東京で羽をのばし
芸能人に会えるか毎日ワクワクしていたその頃

「なんやらさぁ(ここから三重の方言で話します)
昌樹の車貸してくれ、言う人が来て。」
「ほんで来たんやて〜向井理と宮崎あおい」

え?なんて?   うっそ〜!
でもその話を聞いたのはのちのこと。 

年末の帰省、母の親族が大好きな父に連れられ
(また行くの?と言われるから母の居ぬ間に)
母の姉(やよい)宅に行く道中のこと。

「ええか?まず、いちばんに驚いて
おばちゃん、映画に出たんやってー!
って言うんやぞ」と父。
「はーい」とわたし。

わたし:「そんでそれ、なんて映画なん?」
父:      「きいろいゾウ、や」
わたし:「そんなん、何で出たん?」
父:      「しらん」
わたし:「まぁ、エキストラやもんな」
父:      「そやけど、おばちゃんゾウの役で出たん?
            って絶対言うなよ」

こんな打ち合わせで10分で着く叔母の家は
家業で車屋さんを営んでいる。
昌樹、はそこの長男(わたしの従兄弟)
その昌樹が乗り回していた軽トラを貸してくれと
ハナの東京の人がやって来たそうな。

車屋さんに着いて降りる
「おばちゃん女優デビューやってなぁ!」
近所中がお茶を飲みに集まる「車屋さん」
で、お茶をたしなむ一同大爆笑。

この叔母は棺桶に入っても笑っている
と言われているほどよく笑う。
返事をしたのかしていないのか
まだ笑っている。膝をたたいて笑っている。
彼女の膝は青あざだらけのはず、と町中のウワサ。

「まぁね」といった具合に。
「それがさぁ、葬式の場面でそれも冬物(撮ったのは夏)
汗ダラダラ、家からむすめと喪服で出かけたら
みーんなに、どこが葬式やな?と聞かれるし
まいったわぁ、フフフ」と、その笑顔はもう女優。

「ほんでクルマは?」
そのクルマが例によって貸し出した軽トラ。
茶色く塗られた軽トラがおいてある。

「せっかく俺がかっこええホイルに替えとったのに
撮ってるカメラが映ってしまう、いうて
ダサいホイルにまた替えたんやぞ」と従兄弟。
すっかり協賛者の顔。

軽トラのホイルにかっこいいもダサいもあるんか。
と内心思ったけど、いまは女優一家に口出しするまい。

囃せ囃せと父は横から目くばせしてくるし
その続きも聞いてみると
今は亡き祖父母の古い家、秋子とやよいの生家
(モーツァルトでもなしそんな言い方?笑)
はスタッフさん泊まって機材も置いてたんさ。

ふぅーん。
ほんでおばちゃん、どこに出たん?
「ん?おばちゃん?葬式の場面で後ろ姿で
よぉ映っとる!」女優は笑う。

「……。」

よぉ映った後ろ姿がどんなものやら
ましてや喪服。わかるんかいな。

孫の部屋も出たらしい。し
そこ(近く)の役場の「ソテツ」も出たらしい。
果たして「部屋」は出演者なのか…。
子役の子の「部屋」に抜擢や!とイバる。
ソテツに至っては、まさしく「木」の役やん!

軽トラ、喪服の後ろ姿、孫の部屋、ソテツ。
以上が我らが町の出演者だそうな。
ゾウの役の方がまだよかった。

この主演のおふたりが乗っているのが
ホイルを替えた茶色い軽トラ🛻

きいろいゾウは素敵な映画でした。
出演者さんも見事なもので大好きな方ばかり。
ダブル主演は宮崎あおい、向井理さん。
一番好きになった役はソテツ
声は大杉漣さんです。
かわいいカンユ(ジャックラッセル)は安藤サクラさん。
柄本明、柄本佑おやこも好きだし
リリーフランキーさんも出てる。

喪服の後ろ姿の女優さんがまたいい、笑。
「なーんべんも(何回も)あっち歩いたり
こっち歩いたり、焼香したりしたんやで?
全部カットや!わたしは顔出してもいいと
言ったのに!」

顔を出さなくてもいいと判断されたのでしょう。
お化粧してたのにね。

ひと通りの会話を済ませて帰る。
父が愛する妻を迎えに行くために。
運転する車は我が家を通り過ぎ、母の職場へ。
父は休みの日になると母の送迎をしたがった
車を運転するのも好き
母を隣に乗せて走るのはもっと好き
私はソフトクリームが食べたくてついていく。

父: 「おばちゃんとこ行ってきたなぁ」
母: 「また?」
私: 「ゾウの話、聞いていたで」
父: 「顔出てない言うて笑ってたわ〜」
母: 「またその話してたん」
私: 「おばちゃんって役者さんで誰か似とると思う?」
母: 「んーアンパンマンかな」
 

次回作をたのしみにしています。
ヒーローの役が来るかもしれない
顔を出したら顔を食べられるヒーローの役。

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