【長編小説】父の手紙と夏休み 7
以上が「小説と二人のキョウコをめぐる冒険」になります。
この後、後日談が続くのか第三部があるのかは今のところはっきりしませんが、私はここまでの出来事だけでも、自分のことながら、とても驚いております。
あらためてこうして書き起こしてみるとまるで誰か他の人の話のように思えてしまいます。
しかし、これは確かに私の体験したことですし、私の感じたことです。少なからず思い出の補正がされていることは否めません、事実と違う部分もあるかもしれません。それでも本質的な相違はないと思われます。
私はある時期は深く深く混乱していましたし、その混乱をうまく言葉に置き換えることができたかと言われると自信はありません。これを読んで宮崎さんがどのように思うか不安でもあります。ただ宮崎さんを混乱させるだけではないか、こんなもの今すぐ消去してなにもなかったことにした方がよいのではないかとも思います。こんなものはただの私の自己満足に過ぎない、むしろ都合のいい言い訳でしかない、そんな風にも思えます。
じゃあ、なんでこんなものを私は書いたのでしょうか、うーん、自分でもよくわからなくなってきました。もう、やめます。
この手紙をあなたに渡すかどうかまだ判断がつきません。勢いで書いてみたものの、出来上がってみるととても失礼なことをしているような気になってきました。
ただ、もし本当のことを私があなたに伝えたいと思ったら、もしあなたが本当のことを知りたいと思ったら、もしそんな関係に私たちがなることがあったら、私はこの手紙をあなたに渡し、あなたの感じ方、考え方、判断に私は従おうと思います。
もし、私やあなたの意思も含めた偶然がこの手紙をあなたの元に運び、あなたが私のことを少しでも理解してくれたら、そして今度は宮崎さんがご自身の話を私にしてくれ、それに対して私が深く共感することができたら、私が生きてきた今までが「意味のある偶然」に変わるような気がするのです。
そんなことがあるんだろうかとも思いますが、あとは天に(偶然に)全てを任せます。春樹的に言うとこんな感じです。
僕は自分が感じていることをできるだけ正直に書いた。僕にはいろんなことがよくわからないし、わかろうとは努めているけれど、それには時間がかかる。そして時間が経ってしまったあとでいったい自分がどこにいるのか、僕には見当もつかない。でも僕はなるべく深刻にものごとを考えまいとしている。深刻に考えるには世界はあまりにも不確実だし、たぶんその結果としてまわりの人間になにかを押しつけてしまうことになると思う。僕は他人に何かを押しつけたりはしたくない。君にはとても会いたい。でも前にも言ったように、それが正しいことなのかどうか僕にはわからない
『螢』 村上春樹
今更ですよね。
長々と自分のことばかり書き連ねてしまい、申し訳ありません。
宮崎さんがこれから誰よりも楽しく、誰よりも幸せなることを心より、本当に、心より、お祈り申し上げます。
どうぞお体を大切になさってください。
では、さようなら。
八月二七日
高橋 直樹
宮崎 恭子 様
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