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年森瑛「逃走」

「走れメロス」のパロディものである。あの事件の前日譚が妹視点で語られている。テクスト論的に言えば、テクスト論は小説で書かれたものだけで考えるのであるから、メロスはこんな奴だと充分成立する。字義通りに読んだら、まあこうなるな、と思う。特に驚かない。
私もメロスについては考えたことがあるので下に掲げておく。この中で触れずに、私も引っ掛かっていた描写に、妹の婿となるものが、「もみ手して、照れていた」というところがある。「もみ手」という言葉には、卑屈さ、ゴマすり、のようなニュアンスがあり、恋人の仕草として相応しくないかなと思った。もしかしたら作者は、この「もみ手」から人物造形を始めたのかも知れない。

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