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川上弘美「あなたたちはわたしたちを夢みる」

川上弘美先生である。川上未映子先生が出るまでは、綿谷りささんと並んで、文芸界の綺麗どころとして有名だった。セクハラですか。すいません。最近は眼鏡をおかけになってて、その美貌の程を拝謁叶わぬことが残念である。セクハラですね。すいません。

川上弘美先生はデビュー作の「神様」が素晴らしかった。たしか熊が出てきて良かった。そいから、出てる本全部に当たって、「センセイの鞄」で、ズキュンきた。名作である。もう一生ついていきます思うてたら、「真鶴」が出て、これが読めなかった。なんか賞も取られたようで、慶賀の至りであるが、私には難しすぎた。確かイカを食べるシーンがあって、美味しそうだった。ありましたよね、イカ。

まあ、そんな奴なんでキチンと読めるはずがないんだが、しかも連載の五回目だけ読むんだから、なんと言いますか、とほほである。が、気を取り直して、行ってこよう!

読んできた。イカが出てきた。連作だったので、本作だけで完結してて良かった。これまでも、この不思議な世界が語られていたのか分からない。これから、この不思議な世界が続いていくのか知らない。
アサという女性が生きる村の話だ。ファンタジーというのだろうか。現実とは違う世界が描かれる。現実とは違う世界なのだけれど、現実的な世界が語られる。寓意とは違う気がする。それが現実世界の何を風刺しているのか、そんなことを考えてしまうと、途端に小説世界は萎んでつまらなくなる。こうした異世界のその世界特有の約束事に縛られた生活を、読んで堪能すればよいと思う。
面白かった。私はファンタジーとか異世界ものとか、まるで読まないのだけれど、もっと言うなら、SFとか時代物も読まないで、現実の紐付きの話ばかり好んで読むのだけど、この話に違和感はなかった。生活する者の地に足のついた生活ぶりが好ましいと思ったからだろうか。人間の本質を描くのに舞台は関係ない。そう言えば藤沢周平は好きだ。
作者のデビュー作の「神様」もファンタジーめいた話だった。ファンタジー嫌いの私が読んで感銘して、もっと読みたいと思ったのだった。随分離れていたが、また川上ワールドに帰ってみたい気もする。そう言えば、「神様」の新作を書いたとどこかで読んだ。あの「神様」が何十年の時を隔ててどう変化したのか、これはぜひ読みたいと思う。
熊さんは元気だろうか。

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