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あの頃15

例会の後は、飲み会になる。新歓の時とは違う店に行く。文藝部はここの常連らしい。着くと、すぐに二階に通された。
頼むのは焼きそば、のみ。あとはビール。酒はいくら飲んでもいいが、つまみは焼きそば一品のみ。ポッキリ1000円。足りない分は、先輩がだしてくれたのか。まあ、酒なんか飲み慣れてないので、それに女の人はそんなに飲まないので、数はでない。

私は同学年のWの隣になった。若いのにジジイみたいな顔をしている。

ーーお前の小説、俺は面白かったよ。

そんなことを言い出した。思ってるんなら、合評会のとき言えよ。

ーーそう。次、出す?
ーー俺のは長編だから。
ーー次は無理?
ーーまだ50枚で構想の半分も行ってない。
ーー50枚! そんなに書くのか。すごいな。

合評会に出た小説はみな30枚もいってない。長く書けることは、単純に尊敬に値した。私は疑問に思っていたことを訊いてみた。

ーーところで新井素子って誰?
ーー「グリーン・レクイエム」て読んだことないのか。
ーー読んだことない。
ーー読め。いいぞ。新井素子はいい。

読まなければいけない本が後から後からでてくる。困った。
困っていると、Wは続ける。

ーー映画は見るか

一番最後に見たのは、「スパイダーマン」と「溶解人間」
の二本立てだった。「スパイダーマン」といっても、SFXを駆使した最近のシリーズではない。というか、あったのになきものとされているC級映画であった。映画のキャッチフレーズは、

カーター大統領も大ファン

あのカーター大統領も大ファンなのだから、きっと面白いに違いない。そう思って友達と出かけた。
ものすごく酷い映画だった。スパイダーマンがビルを這うシーンがあるのだが、明らかに平面を這っているものを縦に置き換えてるだけだった。日本の初期の忍者映画より酷い。
「溶解人間」の方は、、、思い出したくもなかった。

ーー映画はあまり見ない。
ーーそうか。じゃ、今度見に行こう。池袋で「ゴジラ」の三本立てをやっている。

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