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千葉雅也「プロンプト」

これもまた分かりにくい話。分かりにくい時は、粗筋書くに限る。

まず、浮沈子の話がある。ストリートビューで、ロイヤルホストを見る話になって、大阪への引越しの話になる。勤めている広告会社の話になって、派遣バイトで肩パンされた話になる。大阪に行ったのは嘘で、広告会社の前にwebライターをやった。そこでAIを覚える。そしていたずらに日記を書き、AIに続きを書かせる。2024年の日記。2000年代に行ったロイヤルホストを訪ねる日記。
書かせておいて僕は、作り話にも動かしちゃいけない事実がある、とAIを叱る。
また、AIに、文学的に続きを書けと命じる。図らずも僕はAIの書いた比喩に心を惹かれる。
僕は画像生成AIも手に入れる。エロい画像を作ろうと思う。
僕を肩パンした男の情報を入れる。上半身裸の男が出来上がる。
sexをしている、と追加する。
Tシャツを着た別の男になる。システムの検閲が邪魔をしているのだ。
nsfw(仕事にふさわしくないの意味)と入力する。これが検閲解除の鍵となるはずだったが、パソコンの画面には、得体の知れない肉塊がいっぱいに現れる。

て、筋書いても、よく分からない。この話は何を意味するのだろうか。で、気になる場面を抜いてみる。

引越しのとき、大学のレポートでコピペしたのしてないのとの話がある。派遣バイトで廃棄するのは旧式のコピー機だ。ライターの仕事はAIに随分助けられるが、自分で書いたものをAIと間違えられ仕事を失う。AIに嘘日記を書かせ、最初馬鹿にするが、そうかあと納得するようになる。AIを先輩と呼ぶ。誰にでも言えそうなことが人生の知恵、誰にでも言えることを、言えるようになることが先輩になること、と思うからだ。そして画像AIに条件を示し要望し、化け物を生む。AIに与える指示を「プロンプト」と言う。僕は化け物の画像をすぐに消すが、すぐに頭の中でまた「プロンプト」を積み上げ始める。

うむむ、なんか近未来を見据えた、AIに関する啓発ドラマみたいな感じじゃないですか。このままじゃいかんぞ。このままじゃ人類に未来はないぞー。気づけ、皆の衆、騙されるんじゃねえぞー、て読めるのですが、違いますかね。これ以外、どう読むんだろ。

作者は、何度も芥川賞候補になってる気鋭の哲学者。ドゥルーズ(!)が専門だそうです。新書の「現代思想入門」は新書大賞かなんかとったらしい。

なんか、こんな人ばっかりだなあ、こんな駄文書いてて馬鹿って思われないかなあ。まあ思われてもいいけど。



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