【D2C/EC × 物的証拠】サービスデザインの視点から「また購入したい」と思われるブランド体験を考える
オンラインショッピングだからこそ、手触り感が大事
Shopify , BASE , STORES , カラーミーショップ... 専用のプラットフォームを利用することで、今では誰もが簡単に「モノを創り、オンラインで売る」といったことができるようになりました。
一方で「顧客はモノでは無く、サービスを購入している」などと言われるように、オンラインショップを通して単にモノを届けるだけでなく、「製品を通じてどのようなサービスを提供するか」という視点もまた大事です。
今回の記事では、そのような「購入したいと思われるブランド体験」についてお伝えできればと思います。
この問いに対して参考になりそうなのは、サービスデザインのアプローチです。2013年に刊行された『THIS IS SERVICE DESIGN THINKING.』では、重要なポイントとして5項目が挙げられています。
■サービスデザイン思考の5原則
1.ユーザー中心(User-Centered)
2.共創(Co-Creative)
3.インタラクションの連続性(Sequencing)
4.物的証拠(Evidencing)
5.ホリスティック(Holistic)
_______マーク・スティックドーン,ヤコブ・シュナイダー『THIS IS SERVICE DESIGN THINKING.』2013
この5項目の中、昨今のコロナ禍の中で「モノを創り、オンラインで売る」ことを考えたときにポイントになってくるのが、今回のテーマとなる「物的証拠」という視点です。
4.物的証拠(Evidencing)
形が無く、手で触れることのできないサービスは、有形の物的要素を用いて可視化する必要があります。
サービスデザインの観点の1つ、「物的証拠」とは?
物的証拠とは何かというと、そのままでは目に見えず形に残らないサービスを、どう「有形」として顧客に残してあげられるのか、といった原則になります。
分かりやすい例としては「ホテルのトイレットペーパーを三角に畳むこと」。宿泊したホテルのトイレットペーパーが畳まれていることによって、私たちは「宿泊サービスを受けていること」、「ホテルから歓迎されていること」を実感することができます。さりげなく畳まれたトイレットペーパーという物的証拠を通して、そのホテルへの愛着が湧き、また泊まりたいと思うのです。
ただし、完全オンライン化を余儀なくされるショッピング体験において、オフラインに出向きトイレットペーパーを折ってあげることはできません。
「モノを創り、オンラインで売る」までの一連の流れにおいて、裏でさまざまな工夫やサービス醸成をしていたとして、それを何か有形なモノとして顧客に印象づけることが出来ないと、無機質と勘違いされ、離れていってしまうかもしれません。
ではどうすれば?
オンラインショッピングにおいて何が、サービスの物的証拠になりえるのでしょうか?
少し考えてみました。
1. ホームページやアプリ、UI
今までは、
「オフラインで買えないものを買う場所」
「単なる販売チャネルの1つ、単なる問い合わせフォーム」
といった立ち位置だったショッピングサイト。
オンライン完結の時代においては、24Hいつでもアクセスできるサイトそのモノが、サービスを実感できる物的証拠になりえるのではないでしょうか。
例えばこんな体験が求められます :
・販売する製品の延長線上にあるような、リッチな風合い、いつでも見れるパンフレット
・ウェブアプリとして動的に形を変えニーズを満たしてくれる (あらゆるオーダー、サポートの窓口、マニュアル、リアルタイムなWeb接客、パンフレット、お知らせ)
2. パッケージ・梱包
https://news.livedoor.com/article/detail/15118861/
商品自体の包装とは別に、オンラインショッピングでより大事になってくるのは、顧客のもとに届く瞬間でもある梱包です。本来は使い捨てされる梱包材や箱を丁寧に作り込むことで、「(機能的には)商品が守られていること」、「(情緒的には)商品の世界観を体現するもの」などから物的な証拠としてサービスを実感してもらいやすくなるのではないでしょうか。
例えば : 製品専用の設計になっていたり、キャラクターが描いてあったり、もしくはとても捨てやすかったり、環境に配慮されていたり。
https://www.launchnotes.io/blog/how-they-launched-it-peloton
物的証拠とは少し外れてしまいますが、梱包だけでなく、手元に届ける「配送」の部分でもサービスをより体感してもらうこともできそうです。ブランド独自の配送網を使い、ブランドの世界観で統一された配達員が自宅まで届けに来てくれることで、より一層世界観に没入することができそうです。
3. お問い合わせカード、サポート、保証
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000005.000057151.html
製品を購入したときに付属する、一意な顧客番号つきのカード(ギャランティカード)を受け取ると、顧客としてすごく大切にされていると感じるのではないでしょうか。
有象無象の購入者の一人ではなく、しっかりと番号で製品と自分が紐付けられ、適切なサポートを受けることができる、といった安心感はまさにサービスを有形化するものと言えます。
4. 製品へのオンボーディング
https://au.pcmag.com/audio/21503/apple-ipod-nano-6th-gen-the-unboxing
車や高級時計を購入した時には、シャンパンや花束を貰った上で、最初の走り出しまでのサポートを手取り足取り行ってもらえます。
オンライン完結の購買の際にも、単なる説明書の同封だけでなく、オーナーになってくれることへの感謝、そして簡易的なオンボーディング(使い始めまでの手順、もしくは動画やリアルタイムでのビデオ通話などへのサポートURLが記載されたカード)などを含めたご案内を行うことで、ブランドへのロイヤリティは高まっていきます。
5. サプライズとしてのメッセージカードやお試し品
オンラインで何気なく商品を購入した際に、例えば意図しない手書きのメッセージカードやオマケ、同ブランドの試供品等が付属していたことで、とても嬉しかった記憶はないでしょうか。
サービスにはサプライズという側面もあると感じています。料金表に含まない形で、こうした有形のモノが付属することで、明確にサービスを感じることができます。
6. 持続的な周辺コミュニティの提供
https://jp.sharp/hotcook/community/
製品に関わる人々で形成される、限定コミュニティも大きな物的証拠の1つです。
コミュニティを通して、ユーザーは以下のようなサービスを(半永久的に)受け続けることが出来ます。
例えば :
・公式サポートとは別の、製品に関わる小さな粒度の不安や疑問などを気軽に解消できる場になる
・製品やブランドにより深く関わり、帰属できる場になる
・周辺の情報共有や活用情報を共有しあい、製品の体験価値を高め合うことができる
・etc..
7. 定期的な連絡・メールマガジン
購入後のアフターケア、何気ないご挨拶、(自社の販促に限らない)周辺ニュースなどを通して、常に電子手紙としてメッセージを送ることもやはりサービスを体感する上で大事です。これも、販促ではなくサービスとして送ることを考えた時に、内容は量産されたものではなく「1to1で顧客に書き下ろしていく」そんな意識が大事なのではないかと感じます。
まとめ
オンラインを通したブランド体験を考える際にも、サービスデザインの考え方は活用できそうです。今回取り上げた物的証拠はあくまで体験を創り上げる一つの視点なので、前提として「顧客の求めている商材・サービス」が存在していることが大事です。
また、どのような手段で物的証拠をユーザーに届けるのかは、製品やブランドの形に応じて変わります。顧客に敬遠されない適切な距離感を保ち、過剰なサービスにならないよう吟味していく必要があります。
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