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この学びの成果は虹の向こうに!|2024スプラウト壱岐商業高校⑥

始まるプログラムあれば、最終回を迎えたプログラムもあり。

今日、この春から始まった壱岐商業高校での高大連携アントレ教育プログラム「スプラウト」は最終回を迎えます。朝7時に集合し、全員で博多港へ。そして8時の高速船で壱岐に向かい、原の辻ガイダンスにあるテレワークセンターのミーティングルームには10時前に到着。ここに来たのは4ヶ月ぶりですが、この動きはいつも通り。

テレワークセンター内のミーティングルームにて

今日の授業の打ち合わせ後、火曜日定休日のお店が多い壱岐での私たちの行きつけである「ととろ」へ。

ととろのハンバーグは今や定番

土曜日のマルシェから3日。マルシェの疲れもあるでしょうが、今日はふりかえりのため、再び壱岐へ。学生はマルシェ後、日曜日1日かけて壱岐島内のフィールドワークに出かけ、壱岐の魅力を堪能し、それから2日後再びここに来たというわけで(笑)。

既視感が漂う壱岐での時間。果たして最終回はどう迎えたのでしょうか。これまでの彼・彼女たちの軌跡はこちらのマガジンをご参照ください。

1時間目:これまでの学びをふりかえる

いよいよ授業がスタート。13:30開始が機材トラブルとふりかえりシート未実施に伴い、その作成に時間を費やしてスタート。

最終回はヌルっとスタートしたが、人間関係ができてたのでコミュニケーションは取れた。

これまでも何度か書いてきたように、『スプラウト』のカリキュラムは①アントレプレナーシップとコレクティブ・ジーニアス、②戦略、③組織と個人、④会計、⑤出店、⑥ふりかえりが基本線。壱岐商業では④と⑤の間に夏休みが挟まるため、今年度から出店直前授業回でミーティング(予算決定/当日シミュレーション)、マルシェ出店からの翌週授業回でふりかえりという構成に。

したがって、ふりかえりでは①から④で学んだことをダイジェスト的に学習しつつ、ふりかえりシートと実際の売上を比較して自分が何を学んだのかを確認することになる。

10月からワーホリに旅立つ学生。しっかりと組織論の講義を進めていました。

第1回を除けば、それぞれの授業担当者はオンラインで授業をしてきた。画面で見ているから、カンペを見ながら授業することもできる。しかし、対面での授業ではそうはいかないので、当事者たちは緊張しきり。朝のミーティングでも、ランチタイムでも書き込みをたくさん入れた資料をずっと見てブツブツ呟いていた。

その甲斐もあってか、高校生は大学生の授業を聞き入って、これまでの授業で学んだことを振り返りできていた模様。

2時間目:高校生はマルシェから何を学ぶことができたんだろう?

2時間目。今回のマルシェは単なるイベントではなく,高校生も予算を持って各店舗の売上を伸ばすべく役割を担っていた。果たして,マルシェの成果はいかに。

ここでは具体的な金額は表記しないが,予算に対して進捗率は82%。いくつかは予算を大幅に超える金額を達成したが,高校生企画の3つの商店の進捗が芳しくはなかったことが要因。そこで学生たちは事前の打ち合わせで,その原因を追求するのではなく(むしろ原因はよくわかっている),やってみてわかったこと,次にどう繋げるかを考えようと前向きなコメントにつなげていこうと話をしていた。

高校生からふりかえりの発表をしてもらいました。

こうしたマルシェを企画すると,高校生は「高校生のためのマルシェ」を掲げてスタートする。「壱岐には何も無い」が枕詞になってしまっているがゆえに,自分たちで創り上げるこのマルシェに高校生が来て,楽しむことができる場所を作れたら良いかもしれない。それは高校生の純粋な気持ちだろう。しかし,商売を組み上げていくと,そうした理想はなかなか難しいものになっていく。実際,当初は高校生をターゲットにコストリーダーシップ戦略を考えていたが,マルシェ直前になると,地域のお年寄りと親子連れがターゲットとなり,どうにかして客単価を上げようとしていた。

自分の経験を言語に落とし込むのは難しい。資格取得のために授業参加が遅くなった生徒もいた。

もし高校生を呼ぶにしても,果たして彼・彼女たちはこのマルシェへの呼び込みをどれだけできたのだろうか。実際に当日来たのはターゲット通りの客層だったが,高校生企画の3店舗の売上が伸びなかった原因はどこにあったのだろうか。

さすがに高校生に対してこれを追求することはしなかったが,担当の先生,学生たちとの間では共有するべき論点であり,来年に向けての課題でもある。

それでも,高校生たちはわからないながらにマルシェを運営し,商店を営業してみた。そして,今日改めて話を聞くことによって,マルシェで自分たちが経験したことがどんな意味を持っているのかを考えてくれればまずは御の字と言えるかもしれない。

また,学生たちが対話をしている間,校長先生と少しお話をする時間があった。学生たちの授業にいたく感心され,高校生がイキイキと活動している様子を暖かく見守ってくださった。担当の先生方にも大変お世話になり、今年も無事完走することができた。そして,校長先生から改めて「来年もよろしくお願いします」という言葉を頂くことができた。ホッとした。

最後は大学生それぞれから高校生へコメント。とても印象的な時間になった。

そうして一旦授業は終了。最後の時間は大学生から高校生へのメッセージを伝える時間になった。

今回のメンバーそれぞれがそれぞれに思い入れを持っていたようで,とてもあたたかい時間になった。スプラウトを通じて壱岐と交わり,そこに住むみなさんと交流し,高校生とかけがえのない関わりを作ることができている。その高校生たちは,あと半年もすればほとんどが島を離れる。そうした未来への朧気な不安を抱える彼・彼女たちに対して大学生は次のようなことを言っていた。

「壱岐は良いところ。みんなはマルシェを通じてそれを学んでくれたと思う。『壱岐には何もない』と言うけれど,みんなにはここが戻ってこれる場所なんだと思う。将来,島で働く,暮らすということも含めて,自分の未来を築いていってください」(意訳)

我ながら,学生の口からそんな話が出るとは思っていなかった。が,壱岐に関わって,高校生と過ごした時間が濃密だった,大学生にとっても学びや経験を積む時間になったからだろう。1つプロジェクトをやり切るという段になって,大学生も改めて自分たちの立ち位置に気づいたのではないか。そんなことを感じさせる時間になった。

ふりかえり

高校生と大学生がともに学び合い、気づきを共有して未来に活かす。

最後の最後でこのようなコミュニケーションができたことはプログラムの1つの学びだと言えるだろう。壱岐商業高校でのプログラムを進めて3年。初年度,2年目と積み上げてきた成果が実を結ぶときが来るのかもしれない。が,そうしている間にも地域の経済は次第に力を失っていく。時間は限られている。が,できることを少しでもやっていかねば,未来に繋がらない。

最後に全員で集合写真

マルシェそのものへの課題は多々あり,いつまでも不完全な形で終わらせるわけにはいかない。いつか今抱えている課題を乗り越えるブレイクスルーが必要になる。そこに立ちはだかるのは,常に物理的距離と時間。どうやって乗り越えていくか。まだまだできることはあるし,乗り越えていきたい。この島にはそれだけのポテンシャルがあると信じられるからこそ,この取り組みを続けていける。

そんなことを頭の中でふりかえりつつ,チャイムが鳴って授業が終了。別れを惜しむ間もなく,後ろ髪を引かれるように学生たちは教室をあとにした。

そして,学校を出て約20分。前回の壱岐商業での授業時にも訪れた木造4階建てビルの1階にあるD・D Cafeにて授業終了後のふりかえりを行った。

学生とのふりかえりでは、この日の授業で何ができたか,できなかったか,女子商やこれから始まるさまざまなプログラムにどうつなげていくかという話も出ていた。そうした話を踏まえて,私からは1つのプログラムをやり切ったことで学んだことをしっかりふりかえりましょう,その経験を持って他のエリアや次のプログラムなどに活かしていきましょうという話を。

やればやるほど課題は出るし、これまでともに時間を共有した高校生との別れは寂しいかもしれないけど、私たちは次の場所でまた「一歩踏み出す勇気」を伝えねばなりません。

そして,17:10に郷ノ浦港を出発した高速船で博多に戻る。福岡は午後に大雨が降ったとの通知が来ていたが,18:20に博多港に着いた頃にはもう雨が止んでいた。そして,南の空を見上げるとそこには虹が(その写真が表紙に)。

まるで次の機会に向けてチャレンジするわたしたちを祝福するかのように。

(余談)

博多港からの車中,学生同士で次のプログラムの人員が足りていないという話をしていたところ,そのメンバーから「手伝えるところは手伝うよ」というコメントが。スプラウトはプログラム進行中は授業を作り,学生を動機づけし,来るかわからないマルシェを立ち上げるという「重い」プロジェクトであることは間違いない。しかし,1つのプロジェクトが終わって到達点に達すると,それまで見えていなかった景色が見えるかもしれない。

人に何かを教える,伝えるという行為,それによって人を動かす可能性がある。教育も,ビジネスも,人と人とのコミュニケーション,相互作用で成り立つものであり,根本的には同じような性質を備えている。しかし,当の学生たちは「授業を受ける立場」にしかなったことがなく,恐らくこのプロジェクトで初めて「教える」という行為を行う。が,実はそこで学んでいるのは自分だということに気づけば,そして自分が高校生を導くことで学ぶことがたくさんあるのだと気づければ,このプロジェクトから得られるものは多々ある。

実際に,先日霧島での合宿時に人吉で「ひとよし球磨起業体験プログラム」に同席した某大学の学生は,このプロジェクトを一生懸命取り組みたいと言っていたという。わかる人は心が動くプロジェクトなんだということ。だから,挫けそうになっても続けなきゃと思っている。

小さな一歩が社会を作り変えていくと信じて。

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