見出し画像

2021年度の女子商コラボ(大学生が高校生に授業する)が始まった!

今日は,今年で3年目を迎える福岡女子商業高校での授業『福大コラボ』の第1回講義日。GW明けからオンライン講義になってしまったために,ゼミ生たちとは1ヶ月半振りの再開。ゼミ募集期間最終日に行ったオープンゼミ以来の対面でのゼミだった。

座席指定さえすれば対面でゼミはできた。しかし,当ゼミでは3-4年生合同でのゼミを行っており,30人とちょっとが1つのゼミ室に集まるにはそれなりのリスクを感じた。また,いくつかの講演会を企画していたのもあるので,この数回のゼミはオンラインで実施してきた。

そうした中でのコラボ1回目の講義。

昨年度の終わりにはこんなふりかえりをして終えていた。

この取り組みの良いところは,大学生自身が講師役となることで,自分が曖昧にしている理解を(厳しい言い方すると)許さない=学生自身で言語化し,体系化しなければ高校生に伝わらないという点にあると感じる。だから,学生が一番勉強になっているはずだ。
言葉は自分の行為に意味を与える。そして,その意味を自分自身でふりかえり,体系化することができれば,大学での学びにスムーズに移行することが可能かもしれない。

今年はこれを形にすることが目標だ。

そして,今年はさらなるチャレンジが始まる。これまで各学年1クラス設置されている進学クラスを対象に授業をしてきた。年次が上がっていくので3年目を迎える今年,3年1組の生徒は3回目の授業となる。2年1組は2回目。それに加えて,3年生全クラスに授業をということで,今年は3年2組,3組も担当。合計で5クラスを担当することになった。ゼミ生の合計数は変わらないので,これまでに比べると1クラスに割ける学生数は限られる。しかも,これまでとは異なる性格を持つクラスを担当することになるから,手探りで授業を作り込むことになった。

一発目の事前動画は那珂川市にゆかりのあるあの人!

このコラボ授業の1つの特徴は反転授業を全面的に取り入れていることにある。生徒は授業を受ける前に必ず事前課題に取り組むことが求められている。合計で25-30分くらいの事前動画を見て,プリントにその内容をまとめて,授業に出る。高校生にこれは厳しいだろうと思っているんだけれども…。

今年もテーマは「アントレプレナーシップ×コレクティブ・ジーニアス」。つまり,「一歩踏み出す勇気」を意味するアントレプレナーシップと,「組織として結束をして目的を実現するために自らの能力を発揮する」コレクティブ・ジーニアスをテーマにしている。それを伝える事前動画は次のように作成した。

3回目を迎える3年1組の動画は少しレベル高め
力量がつかめない3年2組・3組向けの動画はちょっと説明的

そして,去年は孫正義氏に登場して頂いたアントレプレナーシップとコレクティブ・ジーニアスの実践者としては木藤亮太さんにご登場頂いた。那珂川に縁がある人として,そしていつも講義で話をして頂いている「まちづくりはドラクエ」から発想してのこと。

もう話し慣れてる感半端ない。

1コマ目のグループワーク

そして,いよいよ授業本番。いろいろと小さなトラブルは発生していたものの,初めて教壇に立つ3年生も堂々と授業を始めていた。

画像1

3-1は3回目だけに高校生と学生との間の関係も早く構築できた

3-1は3回目の授業。昨年も散々「アントレプレナーシップ」と「コレクティブ・ジーニアス」を聞かされていた上に,今年も1回目はそのシャワーを浴びせることに。高校生の理解状況がわからない中では復習から入るのは悪筋ではない。むしろこれくらい丁寧で良い。

画像2

初めて授業を受ける1-1

1-1は高校に入学して2ヶ月半が経過し,ようやくクラスの雰囲気が温まってきた感じ。学生いわく「マルシェやるのはやるけど,なにすんの?」って感じの雰囲気だったと。確かにやったことがないのに,いきなりビジネスだ,アントレプレナーシップだと言われても面食らうだろう。教壇に立った3年生も生真面目さが発揮され過ぎてぎこちない空気感。でも,よく頑張ってました。

画像3

後ろで控える学生も余裕綽々

画像4

グループワークスタート

が,ここでクラスによっては問題発生。事前課題で配布されているプリントが違う。1本目の課題は見てきたけど,2本目は集中力が切れて見られなかったと。

ここはあとでのふりかえりでも出てきたし,昨年度も課題になっていたことなんだけれども,高校生には動画を見ながらメモをするという習慣がない。特定のクラスでは問題なくできることが,あるクラスになると全くできない。担当しているクラスによっては,当初設計していた授業案が崩壊しそうになる瞬間だ。が,経験値ある4年生と念入りに準備をしてきた3年生がうまくコミュニケーションを取りながら困難を乗り切り,無事1コマ目が終了した。

2コマ目の動画とグループワーク

これを受けての2コマ目。昨年は地元・那珂川で長年醤油醸造業を営むマルサン醤油の勝野光代社長にご登場頂いたが,今年はコロナ禍で地元の飲食店を救おうと立ち上がり,オヤジ軍団で宅配サービスを始めた合同会社ふうどの徳永憲司さんにインタビューをお願いした。

撮影は店休日だった喫茶店キャプテンをお借りして行った

やはりここでも動画を見ながらメモを取ることに苦戦する生徒が続出。12分の動画に集中し,メモを取りながら話をまとめるのはなかなか難しい。しかも,このあとこの話からアントレプレナーシップとコレクティブ・ジーニアスにつなげて整理するというワークも機能しない可能性が高い緊急事態。

それでも学生たちは頼もしく,冷静に対応していく。さすがです。

一方で,すでに何度も説明を受けている3-1の生徒たちはだんだんもういいよぉという顔をしてしまう生徒もいたらしく(笑)。2コマ目のそれぞれのクラスの雰囲気を動画にまとめてみました。こんな雰囲気で授業しています。伝わるでしょうか?

ちょっと動きが早いので目がチカチカするかもしれません

ということで,1回目は和やかな雰囲気で進めることができました。一部のクラスでは2コマ続けてのグループワークでぐったりしてしまう生徒もいたようでしたが…。

ふりかえり:クラスごとの課題が浮き彫りに

さあ,授業を終えてのふりかえり。今年も昨年の例に倣い,各クラスのリーダーはミーティングにおいて達成度をあらかじめ設定して講義に臨んだ。

2021女子商コラボ授業タイムテーブル(第1回)

1回目の到達点と及第点/授業のタイムテーブル

今回の仮説的な課題設定においては次の通りであった。

まず,3年目を迎える3-1は昨年までの復習をした上で「組織とはなにか?」を意識づけすること。特に,バーナードによる組織の成立要件である①コミュニケーション,②協同意欲,③共通の目標の話をアントレプレナーシップとコレクティブ・ジーニアスのまとめとして入れた。その狙いは,この要件の①と②については今回の授業と結びつけた上で,③共通の目標を経営理念と結びつける狙いだ。

女子商マルシェで出店する店舗でも昨年から各店舗に経営理念を作るということを行っており,単なる販売実習から脱却して組織として何ができるかを生徒に考えてもらう取り組みを始めている。コラボの授業では3年前から経営理念を設定してもらい,それをマルシェ後のふりかえりで達成度を確認するという作業をしてきた。

そうした経緯もあるので,3-1では次回授業の1コマ目には経営理念を設定して,2コマ目にはマネジメント・コントロール・システム(MCS)の解説を入れたいとリーダーは考えていたようだ。

これに対して,同じ3年生でも2組と3組では状況が異なり,初めて授業を通じて知ることが多々あり,情報過多で整理がつかない印象だった。加えて,学生から報告があったのは「ワークシートに記入するときに,しきりに生徒が『これであってるの?』『ここには何て書けば良いの?』と聞いてくる」ということであり,抽象度の高い概念を操作すること,それを2コマ100分に渡って議論していくことが難しいことを痛感した。この点は学部1年生の基礎ゼミでも同じようなことがあるだろうから,単純にできないと決めつけてはいけない。残り4回の講義を通じて身につけていくことを考えれば良い。

2年生は2回目だけれども,やはり3年生同様の状況に。学生がかなりフォローを入れつつ,伴走型で授業を進めた1年生は雰囲気も良かったそうだ。

それでも課題は山積。授業を受けている生徒さんの助けもあって,学生は眼前の状況がどうであれ,前向きな課題をもらって1回目の授業を終えた安堵感を得たようだった。

画像6

次回授業の設計に向けて

そうした中で,ふりかえりの終わりに次回授業に向けた設計をどうするかについて話をした。このあたりのイメージを伝えるためにざっと書いた図が上記の写真だ(よくわからん)。

今年は5クラスを担当しているが,毎年ベンチマークは2-1に置いている。2回目のコラボである程度(顕在的にも潜在的にも)全体的な流れを把握している2年生を軸に授業を設計することで,3-1は進度を早めに,深度を深く,1-1は進度は同じにしつつ,深度を少し浅めに設定するという調整を行う。

なので,2-1は今回3-1が進んだ組織の定義を,2回目の授業で事前課題で説明して1コマ目で確認し,2コマ目に経営理念を設定するというイメージになる。あるいは経営戦略の違いを実際の企業で確認してきつつ,経営理念と経営戦略がどう一致しているのかを事前課題として取り組んでもらうことになる。

1ヶ月後に控えた第2回授業に向けたヒントを授けて解散した。

続・ふりかえり

さて,ふりかえりはまだ続く。

今回同行してくれた2部会計ゼミナールの4年生が帰りに「S君があれだけ頭が回るようになったのはこういうゼミをずっとやってるからですね」と言っていた。それは,1回の授業を生徒向けにして,その印象を即座にふりかえり,共有して課題を発見して,教員からの指示を受けて修正するということをずっと繰り返しているからだと。

創Pでも,プロジェクトでも,そしてこのコラボの授業でもだ。そこではずっと抽象と具体の行き来をしながら,自分たちが経験したことを言語化して伝え,生徒とのコミュニケーションの中で感じたことを即座にまた言語化して共有する。今回,「高校生が答えを当てに来る」というのはある種仕方がないことだが,それに対する違和感を3年生が持ち始めたことは今回の授業の私にとっての収穫だった。

それは高校生が授業で学ぶ知識と,大学生が講義で学ぶ理論で説明できる範囲の違いだという説明をした。必ずしも正しいとは思わないが,小さな的を狙い,その正確さを学ぶ高校までの授業と,比較的大きな的でその範囲に入るか入らないか,どこまで説明できる理論かを考える大学での講義との違いだ。

これまで少し頼りなかった3年生が春休みのゼミ補講,毎月の読書課題(講義の準備をしながら今日までのレポート課題を頑張ったのはほんとに偉い!),社会課題を解決するプロジェクト,創業体験プログラム,ゼミ募集,そしてこの女子商とのコラボと立て続けに来る課題に取り組んでいるうちに逞しさを増してきた。優秀な後輩たちが入ってきたのを見て,お尻に火がついたというか,彼らが持っていたポテンシャルがようやく発揮されつつあるということだろうか。

そうした3年生の姿を見て,2人だけ同行してくれた2年生も「来年までにああなってるのかなぁ」なんてつぶやいていたけど,今日は立派に役割を果たした3年生も1年前まではそんなに大きく変わらなかった。きっと大丈夫。

次回に期待を持てた第1回の女子商コラボ授業でした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?