1学期の総まとめ|2022壱岐商業高校×とびゼミコラボ授業⑪
昨日に引き続き,今日も高校生へのアントレプレナーシップの授業日。
今日は壱岐商業高校のオンライン講義,1学期の最終回。当初は来週が最終回の予定でしたが,高校側が三者面談ということで予定授業回数が短縮し,今日で一区切りとなります。
そこで,8月末の勝本浦での出店に向けて正規授業で話ができるのは今回が最後ということで,最終回はこれまでの総復習,イベントの名称決定,そして今回出店にご協力頂くパンプラス大久保さんとSPINNS宮崎さんをお招きしての打ち合わせに。そして,夏休みにやることを確認するという内容になりました。
これまでの授業内容についてはこちらのマガジンをご参照ください。
果たしてどんな授業になったのでしょうか。
1コマ目|これまでの総復習とイベント名を決めよう
ということで,1学期最後の今回の授業ではこれまでの総復習を行うことに。反転学習のために導入している事前動画も結構余裕を持って作れるようになってきた。
授業はどの学校でもほとんど同じカリキュラムで形成されている。
以上の5つ。対象とする生徒の学年,学習状況に応じてこれをベースに可変的に内容を変えていく。今年であれば,組織を学習するのに伝統的なバーナードによる「組織の3要素」を説明するだけでなく,エドモンドソンによるチーミングについて講義をすることもある。まさに現代的なリーダーシップやフォローシップをアントレプレナーシップという言葉に乗せて説明しようとしている。
ということもあって,さまざまな高校で授業をしているが,くり返し同じ話をしているので練度がどんどん上がっていく。壱岐商業高校の場合,秋ごろにやろうと思っていた出店が前倒しになり,そこで急遽協力してくださる皆様との調整をしながらの授業カリキュラムとなったのもあって,バタバタ感が出てしまった。それでも(寝食を惜しんで)準備をしてくれているに違いない。
さて,余談が過ぎたが,今日の授業は総復習ということで,まずは経営理念のふりかえりから。今回,高校生10人を2チームに分け,彼・彼女らがやってみたいことをもとに,事業内容を選択した。
1つは某有名Youtuberに激賞されていた島で空き家を使ったゲストハウスを運営したいと言っていたチーム。さすがにゲストハウスはすぐに運営できないので,今回はゼミの資源を活用しようとカフェを運営してもらうことになった。日田や島原で活動をしているゼミのポップアップカフェBESIDE COFFEE STANDをベースに活動を行うことにした。
彼・彼女らの視点は,島民こそが島を守る主体となり,人もお金も循環できる島づくりをしたいというもの。そこでやや強引だが,カフェという人と人が出会う場所を創出することで,その目的に一歩近づく取り組みにしようという理念を定めた。
もう1つは,離島で若者がファッションを楽しみたくてもオンラインで購入するしか無いという不便を解消するために洋服屋を作りたいという希望をもとにできた「アパレルチーム」。こちらもゼミ生が深く関わり,福岡県飯塚市や佐賀県武雄市,宮崎県延岡市などで活動をしているTANEMAKI by SPINNSの協力を得ることにした。
こちらのチームは経営理念のひねりが効いていて面白いものに。こうやって高校生の個性が見えてくることで,できることも広がりそう。
こうして各チームの理念を振り返ったところで,今回の1コマ目のワークはイベントそのものの理念をもとにイベントに名前をつけようということに。
本イベントの主たる実行部隊はあくまでもわたしたち大学生側にあり,高校生たちは今回そのお手伝いをする中で企業経営について学ぶという体裁を採っている。そのため,大学生側で今回のイベントの理念を設定し,それに沿うようなイベント名を高校生につけてもらおうというワークになった。
また,2店舗には授業で気づいたそれぞれ視点が導入されている。カフェチームは島内の資源を活用,アパレルチームは島外の資源を活用することで島内の人々にワクワクを届けることを主眼とすることにした。これを通じて,島に住む若い人たちに自分たちの住む島の魅力を再発見してもらい,他地域での活動と同様に壱岐にアントレプレナーシップを持った人が一歩踏み出す勇気を持ってチャレンジできる機会を創出することを実現したいという想いが込められている。
そして,今回のイベント理念は次のように定められた。
素晴らしい。彼・彼女たちでここまで考えて実行できるようになったことにおじさんは涙が出そう。が,これを社会実装までにやり切らなければならない。すぐに切り替えて,授業の続きを聞いていた。
そして,この理念を実現するためにいかなる戦略,マーケティング策を講じるか。続いては戦略とSTPの話に移った。
今回のイベント開催にあたり,最も難しいのはターゲットの設定。もちろn高校生が主たるターゲットなのだが,これまでの授業でも確認してきたように,高校生同士で遊びに行く場所はないし,どこか出かけるときに足がない。だから,自動的に親と一緒に出ることになる。
となれば,服を買うにしても,カフェで時間を過ごすにしても,高校生たちは親子連れで来ることになるかもしれない。また,今回イベントを開催する勝本浦に住む皆さんを対象としなければ商売として成り立たないかもしれない。果たしてどうやって顧客をお招きするのか。高校生の知恵が必要になる。
最後にポジショニングについて。特に差別化か,コストリーダーシップかという話になるが,大学生の分析によれば差別化戦略を取ることになりそう。
ここらの分析をもう少し細かに,精緻に設定するとともに,壱岐にどのような店舗があるのかについて調べ尽くして戦略を練ってみても良かろう。とにもかくにも,今まで誰もやってこなかったことに挑戦をするのだから,うまく行けばラッキーだし,うまくいかなくても次をどうすればよいかを考えるヒントが得られる。授業は一貫してポジティブな空気が流れている。
そして,最後は損益分岐点分析。固定費が仮置の時給だけで計算されているが,実際にこのビジネスから学生たちの交通費やバイト代を払おうと思うとそれなりの固定費がかかる。では,どうやってそれを回収するのか。大学生も高校生もまだそこには至っていない。
が,こうして眺めてみると,創業体験プログラムよろしく,高校生の力を借りながら大学生が事業計画を創ろうとしている。現実を拾い上げながら,自分たちにできることを積み上げて企画にしている。立派に頑張っている。
以上のような話から,残り時間は高校生に課した課題である「イベント名称」を決める議論に。なかなか気の利いた言葉は出てこないが,彼・彼女たちがイベントを告知することになるので,少しでも良いもの,自分たちで口にしても恥ずかしくないもの,人に覚えられやすいものにしようと努力を感じられる。今回の限られた時間では決めることができなかったが,次回木曜日の授業で前進が見られることであろう。
こうして1コマ目が無事に終わった。
2コマ目|出店準備に向けた打ち合わせ
続いて2コマ目は出店準備に向けた打ち合わせ時間に。お忙しい中,アパレルチームからはSPINNSの宮崎さん,カフェチームからは地元でパン屋を営むパンプラスの大久保さんにご参加頂いた。
アパレルチームのミーティング
アパレルチームからはハイテンションの宮崎さんから「3分でわかるSPINNS」の動画で今回やりたいことが説明される。宮崎さんが歩んできたキャリア,アパレルという仕事の特徴,若い人といかに交わり,新たなアイデアを生み出していくか。
そして,楽しく仕事をすることの重要な要素の1つである「来店客数を増やす」ことをどう仕掛けるか。これまで多数の地方で出店してきた経験をもとに,今回壱岐において企業目線で取り組みたいことについて赤裸々にお話頂いた。
そこで,まずは高校生も十分に知らない需要調査を念入りに行うことが示された。ネットで検索しても昔ながらの洋服店が出てくるが,そこに高校生が近寄ることはない。それを高校生自身の手で創ることができるのだから,ジブンゴトとして調査してくれるのではないかと期待。
また,ネットベースで良いので,SPINNSが持つ商材の中から何が壱岐の高校生に受け入れられるのか,高校生目線で仮説検証を行おうという提案もなされた。
そして,最後に多くの来店をして頂くために告知をしっかりと行うこと。ポスターや回覧板のようなアナログ戦法もあれば,島内のケーブルテレビへの出演,InstagramやLINEのようなSNSの活用というのもある。ここも島に住む高校生だから取り組める,高校生目線のマーケティング戦略の構築を期待していることが伺える。
こうして具体的な出店に向けた準備内容が提示された。果たして高校生はどこまで準備できるのでしょうか。
カフェチームのミーティング
続いて,カフェチームのミーティング。こちらは先日大久保さんご自身が高校生に向けて50分間の授業を担当されていることもあり,商品企画のポイントについてはレクチャーを受けていた。その上で高校生には壱岐の食材を活用した新製品開発を課題として与えられ,各自が調査し,検討してくることになっていた。
そうした土台となる課題があった上で,高校生から提案された商品案は2つ。それは当日までのお楽しみだけれども,プロである大久保さんのアレンジを付け加えながら,商品化に向けて動き出しそう。今回の出店が11:00-16:00という時間であることも踏まえて,食事・惣菜系が良いのか,デザート系が良いのかという議論もあったけれども,今はアイデアをベースにして議論を進め,やがてプロトタイプ(試作品)の製造に当たることになりそう。
問題はカフェと合わせてどれくらいの顧客が見込めるかだ。コーヒー1杯とデザートであれば客単価1,000円を目指さないと成り立たないかもしれない。しかも,親子連れで来るとなるとどうなるのだろう。果たして顧客はどういった行動をするのだろうか。ここは七隈祭などとは異なる人の動きが見られそうで,単にイベントだからといって購買につながるわけではない。もう少しストーリーを固めないといけないのだろうなと話を聞いていた。
そして固まった夏休みの課題が以上のものに。まずは,今日の話し合いをもとに商品開発のたたき台,コンセプトとなるものを創ること。それをもとに大学生と大久保さんとの間で調整を進めて,具体的な商品を創ること。夏休み中はこまめに連絡を取りながら,商品開発を進めていくことを確認した。
こうして今回の授業は終わり。最後に学生からこれまでの授業内容と今日のミーティングについてのふりかえり,今後のスケジュールについて確認が行われ,時間を少しオーバーして授業が終了した。
今日のふりかえりと今後の準備に向けて
こうして壱岐商業における1学期の授業が終了した。当初は11週間に及ぶハードなスケジュールが想定されていたが,行事等で9週間に短縮された。それでも他の高校と比較すると倍近い時間を費やしている。しかも遠隔という難しい中で,高校生の心をしっかりと掴んで授業ができた。本当に素晴らしい。
学生からすれば授業を創るという経験を通じて,これまで学習してきた内容を体系的に理解することにつながっただろうし,人に伝えることでわからないことを曖昧にせず,相手が分かる言葉で説明することを学んだのでしょう。そして,恐らく学生の人生にはこれまで関わることがなかった新たな島を舞台に,高校生とともに学ぶ場所を創れたことは大きな自信を得たことでしょう。
そう,自信は試行錯誤を繰り返し,時に失敗し,時に踏ん張ることで得られるもの。彼・彼女たちの時間を奪ってしまったことは心苦しいが,ここまで成果を得られたのは努力の成果。
加えて,この期間に壱岐の皆様との信頼関係も築けたのではないか。まだ実は何も得られていないのだけれども,ただ「大学生が高校生に授業をし,ともに商売を営む」というだけなのに,大きな期待が掛けられている。だから,絶対に成功したいし,面白くて楽しい,ワクワクする機会にしたい。
学生と高校生の関わりは今学期は終了。出店に向けた準備という視点では,商品開発と告知という大きな仕事が残っているので,夏休み中も高校生と連絡を取り合うことになっている。高校生は進路を決める夏。それぞれ不安と希望があるだろう。今回のこの取り組みが彼・彼女たちの未来に向けた一歩に対して良い方向に影響するのだとした本望。私は宮崎さんと一緒に7/14に壱岐へ伺い,現地の視察と新たな協力をお願いすることに。
学びの場を創る仕事は楽しい。そこで若い人が成長する姿を見つめるのが楽しい。ほんと若い人のおかげで素晴らしい時間を過ごすことができていることに,改めて感謝したい。