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次の研究テーマに向けて

先日、今度出版される予定の研究書の序文を載せてみた。自己評価するのが難しいので。どんなふうに皆さんには読んで頂けたのだろうか。

それはさておき、今回のテーマは「次の研究はこんなことをやりたいな」というメモ書きである。頭の中では考えていることだけれども、こうやって書き留めておかないと忘れてしまう。自分のための記事。

中小企業経営者の企業家精神(Entrepreneurship)発揚の例としての戦略策定から実行プロセスの解明

今回出す予定の著書の最後、今後の研究課題の1つとして挙げているのはこれ。マネジメント・コントロール・システム(Management Control System;以下、MCSと略記)デザインのポイントの1つとして、経営者と組織成員の間にある認知ギャップあるいは編集構造のズレの補正を挙げているが、加えて事業を中長期的なスパンで進めていく中で自社の状況に合わせたMCSのデザイン変更をいかに行うかについても指摘している。

これは、奄美大島開運酒造の事例において、イエとカイシャのバランスをいかに整えながら、主としてMCSの整備に焦点を当てつつ、経営者が持つ企業家精神が発揚される場面として、現会社の創業者である父親の夢の実現と、それを引き継ぎつつ実質的に事業立ち上げを担ってきた長男(現社長)の勘定(計算)がどう調整されてきたのかについて触れた研究からヒントを着想したものである。

ここ数年、お世話になっている経営者の何人かが多額の設備投資を行い、事業規模の拡大を図ろうとしている。その金額もかなりの大規模で、場合によっては1年間の売上に相当するようなこともある。そうした一世一代になるであろう多額の投資をどのようにして意思決定していくのか。

ファミリービジネスだから、創業者であればある程度自由に投資意思決定ができるのかと言われればそういうものではないだろう。雇用している従業員などのことを考えれば、そんな容易いものではない。

そこで、投資に至るまでの事業の見通し、意思決定、戦略の策定、実行に至る一連のプロセスまでを明らかにしたい。もう少し言えば、いかにして事業リスクを見極め、投資の実行に至るのかということであろうか。経営資源が限られている中でリスクといかに向き合っているのかについて知りたい。

会計専門家による経営者支援における目付け:会計専門家は企業や経営者の何を見ているのか

これは某科研費のプロジェクトで行っている研究であるが、内容としては「会計専門家が経営不振に陥っている企業に対して適切な処置を行うために、企業や経営者の何を見ているのか」というものである。

経営コンサルタントよろしく、経営不振に陥る企業の特徴というのは神話的に語られているように思う。もちろん、そうやって実際に倒産する企業が多数あるから立派な「知識」として蓄積されてきているものではあるのだが、その因果関係は十分に明らかになっているとは言えなさそう。もう少し言えば、これまでも多数の倒産研究が行われているが、それは財務数値として顕在化し、実際に処置が必要になることで倒産手続きが行われた企業を対象としたものが大半を占める。

私たちのレベルで言えば、健康診断等で血圧が高い、尿酸値が高いなどの症状があるから気をつけましょうねとはできるけれども、そもそも改善しなければならないのは食生活などの日々の習慣の方であって、それでも気をつけたから改善する、病気になりづらくなる程度のことでしかない。精神的な疾患のように、表面的にはなんともないし、数値も異常はないけど、精神的には問題を抱えているというようなわかりにくい病もある。

それと同じように企業が病にかかっているという状況を診断するのは簡単なことではない。

これを企業経営に当てはめるとなるといくつか方法があり得る。パッと考えつくのは次の2つ。つまり、1つは倒産研究などから過去の症例を集めて、倒産に陥る直接的でかつ会計的な原因を分析し、病名をつけること。もう1つは、企業や経営者を支援する立場にある会計専門家が、当該企業が病気の状況である、あるいはこのままいくと病気になるという判断をいかに下しているのかを研究すること。

で、これからやろうとしているのは後者である。つまり、会計専門家が「このままいくとこの会社はヤバい。病気になる」という判断をいかにして下しているのかを知りたい。

会計数値に症状が現れる前に適切な処置を提案するコンサルテーションができるのであれば良いのだろうが、これは実際のところなかなか難しい。自分のことを振り返っても、実際に病にならなければわからないことというのはあるわけで、事前に気をつけるというのは相当に自分を律することができる人なのだから。

MCSを機能させるためのミドルマネジャーの役割

先日とあるところで講演会をした。その研究会は、企業経営の実践でクレドを組織成員に浸透させることを通じてより良いパフォーマンスを出したいと考えておられる関係者の集まり。その場で、これまでやってきた研究成果の1つとして、中小企業におけるMCSの事例を話した。

そして、そこでわかっていることとして、次の3つについて触れた。

①確かに良いMCSが整備されている。素晴らしい。

②が、それは経営者にとってそうなだけで、従業員にとっては必ずしもそうとは限らない。

③実際に調査したら、(平均差の検定ではありますが、有意に)管理者の認識と従業員の認識との間には差がありますよ。

そして、インタビュー調査の結果と合わせると、ミドルマネジャーへの負担が相当ですねと。特にこの中小企業は製造業で、現経営者になってから30年ほどで企業規模が3倍に成長し、ほとんどが現場で作業を行っている方々で、その中から現場マネジャーを選び、教育していくという仕組みになっていることも影響しているだろう。とりわけ技術を磨きたい工員からすると、主任になることすら嫌だという人もいそう。

これは2019年度まで指導していた修士院生の論文テーマに触発されたこともあって得た気づき。彼の修士論文は、中国の地方都市にあるスーパーマーケットにおいて、戦略的な不確実性が高まる中で店長はいかに成果を達成しようとしているかについての研究だった。経営者目線ではなくて、システムに組み込まれ、そのシステムによって管理される対象となる中間管理職の視点でのMCS研究。

私の指導力不足もあってもっと深い研究ができたのではないかと反省しているのだけれども、(調べてみると)先行研究の層の薄さもありながら、恐らく実務に対するインパクトもそれなりにありそうに思うので、今後も続けていきたいと思っているテーマではある。

この項目は少しずつ書き足します

と取り留めもなく書き記しましたが、これはあくまでもメモなので、これから書き足していくつもりです。

例えば、福岡女子商業高校とのコラボを通じて学生が何を得ているのか、高校生がどうなっていくのかというような研究もしてみたいと思っているので、これをどう進めていけるのかとかをもう少し考えてみたい。

頭のモヤモヤをこれで少しずつ解消していけると良いのですが。

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