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満足感と悔しさとの狭間の中で|2022飯塚高校×とびゼミコラボ授業⑨

今回もまた11/26-27で開催された飯塚高校の文化祭「学園祭 in 本町・東町商店街」にまつわるエピソードを紹介したい。

前回記事にも記したように,学園祭2日目は校務のために視察することはできなかった。

しかし,私たちが授業を実施しているトータルライセンスコース1年生のワッフルチームの売上が前日の6倍を超え,同2年生の6店舗合計の売上が前回10月のそれを上回るなど,着実な成果を残した。部分的に見れば課題は多々あるものの,それは環境,商材,顧客の志向性などの影響があるし,売れなかったからと言って「失敗」と結論づけることもできない。

2日目に売上を6倍に増加させたワッフル店

あくまでも高校生への実践的な教育プログラムの提供という観点から言えば,高校生にとっても,大学生にとっても,そして彼・彼女たちに学びの場を提供する教員という立場からも多くの学びを得ることができた。

今回は先生方とのメッセージのやり取りも含めながら,高校生のイベント直後の反応を記録として残しておきたい。

1年生:自発的な改善を進められたチームとモチベーションを下げてしまったチームと

今回,1年生からは3チームが出店。女子生徒で構成されたワッフル,男子生徒はストラックアウトと射的。1年生の売上の大半を稼いだのはワッフルだった。

1日目,私が訪問した頃にはすでに営業がほとんど終わっていたけれども,混乱のあとがよく見えた。生地が入っていたはずのボウルが受付にそのままになっていたり,何を売っているかもよくわからないお店だったり。とにもかくにも準備不足だった。商店街内に出店している他の店舗(主に進学クラス)と比較しても店としての出来栄えが(厳しい言い方になるが)何ランクも落ちる感じ。

が,それを受けての2日目。各チームの挽回が始まる。

生徒自身の発案で作られたマニュアル

ワッフルチームはマニュアルを作成して店舗に持参。ワッフルの製造コーナーの見えるところに貼って提供する商品の作り方を共有した。すると,(ある意味当然のことながら)商品のクオリティが上がる。

品質が上がった商品。当然,お客様の目にとまるようになる。

すると,やがてカバー写真のような行列ができ始める。せっかくのお祭りだから遊ぶだけでなく,美味しいものも食べたい。高校生を中心に甘い香りに誘われたお客様に多くお買い求め頂いた。

射的もかっこいいPOPを作ってお客様の来店に備える。

今回の出店は空き店舗を使って行っており,店先ではワッフルを,店内では敷居で区切って射的とストラックアウトが行われていた。しかし,片方のチームの売上が伸びない。やがてモチベーションも下がってシフト時間に勤務に現れなかったり,楽しそうにしているワッフルチームのお手伝いを始めてしまう有り様。

大学生もこれには手を焼いていたようだ。どこまで注意してよいのかどうか。ただし,持ち場にシフト時間に現れないのは業務放棄だし,(難しい人間関係があるにせよそれを理由にして)チームをマネジメントできないというのも考えもの。当日に何が起きていたのかについては,サポート役の学生がついて確認をしつつ,じっくりふりかえりで検証することに。

2年生:前回と異なる人の波に押されてしまうが売上はUP

10月同様,本町商店街にある広場「ヲソラホンマチ」での出店となった2年生。今回はメイン会場となっている駐車場に設えられたステージを囲むように出店した。しかし,初日の様子を見ていると人の流れをうまく捉えることができずに「他クラスの行列に圧倒されて、自分たちの商品が全然売れていないと強く感じてしまったのではないかという印象を受けました」とは担任の先生の弁。

前日の販売状況を受けて店舗を若干移動

実際にその間に起きていたのは修学旅行で調達する予定だった商材も調達できなかったり,商品を販売使用にも商材によってはほとんど売れない時間帯が続くといったハードな状況。安定的に売上をあげた店舗もあれば,ターゲットを見誤って売上が伸びない店舗もある。悲喜こもごも。

地元のご家族がお買い物に。

しかし,それはある種の錯覚。2日間の売上合計をよく見ると,前回の売上を若干超えることができていた。店舗ごとの売上を見ると凸凹があるものの,それこそ商材,単価,店員役の生徒の声掛け,POPなど,取り上げれば論点はいくらでもある。

が,高校生にとって大事なことは実際に販売するという体験を通じて仮説検証を行い,自分たちの意思でやったことに対して他者がどんな反応をしたのかを知ること。そして,そこから学びを得ること。

サポート役の大学生も売れなければガックリくる。が,大学生もどこまで高校生とともに目の前にある課題に対してgeneraterとしてサポートできていたのか。ヒトゴトにしてはいなかったか。こちら側の振り返るべきポイントはたくさんある。

先生方から伝わる高校生の反応

そうこうして終えた学園祭。先生方とのチャットのやり取りの中で高校生の反応が漏れ伝わってくる。

担任の先生からは次のようなコメントが。

今回コラボさせていただいた各店舗様からは、感謝の言葉ばかりでした。 最終的な売上金額を本日生徒に伝達したところ、驚きと、先月からの売上と合算する生徒がいたりと、「各店舗の宣伝になったのではないか」「地域経済に少し貢献できたのではないか」といった反応が見られました。(中略)大変自信になったような反応でした。

2年生担任の先生からのコメント

自分たちの活動の成果が社会とどう結びついているかを少しは意識してもらえたようだ。

あるいはこんなコメントも。

今回、生徒はこれまでに学んだ事のないことを学習し、実践させていただきました。この学園祭の終了後に「◎◎(店舗名)の商品をXXXXX円売ったってすごくない?」という一人の生徒の言葉があり、嬉しい気持ちになりました。他チームの商品が売れていく中で、彼らは先月から大苦戦していましたが、彼らなりに頑張ったのではないかと思います。「先生、次は扱う商品を変えてもらえればもっといけます!なんだったらいけますか?自分たちで商材を選べませんか?」と前向きなコメントが同じ生徒から出てきました。アントレ教育の賜物だと実感させられました。

2年生担任の先生からのコメント

2年生の6チームのうち,10月,11月とずっと苦戦しているチームがありました。商材的にも縁日的なイベントで売るには難しいもの。きっとモチベーションをマネジメントするのが相当難しかっただろうが,本当によく頑張っていた。その高校生の頑張りに売上という形で十分に応えてあげられなかったのが申し訳なく思っていたが,こういう言葉に救われたような気持ちになる。

この発言をした生徒は次の目標に向けて努力すると宣言したそうだ。販売実習としては成果につながらなかったかもしれないが,「一歩踏み出す勇気」を持ってなにかにチャレンジしてみようという生徒のアクションが作れたことは今回のプログラムの成果と言えるだろう。

ふりかえり

こうして幕を閉じて終わった学園祭。正直,高校生がどう感じているかはわからない部分がまだまだあるが,こちら側(教員側)には手応えが感じられた機会だったと言えるかもしれない。

先月のトータル(ライセンスコース)の出店の成功が学校としての大きな自信となり、学園祭全体の成功に繋がったと思います。大袈裟な言い方になるかもしれませんが、この取り組みの効果が、教育上のものにとどまらず、飯塚の街を直接的な意味で浮揚させるところまで波及する可能性を感じました。

主任的ポジションの先生のコメント

確かにあの商店街に溢れる人,人,人を見てしまっていては何かができると思うだろうし,実際何かができた。局所的には課題がたくさんあるし,誰もがハッピーなイベントだったとは言えないかもしれない。

が,高校と商店街がタッグを組んでイベントができるなんてことはそうそうない。この先生が言われているように,商店街に発祥地を置く飯塚高校のような高校なんて全国的にもほとんどなくて,こうやって商店街と連携してイベントを開催できるのは貴重。2日間開催するのは学校側の負担も大きいが,1日だったら来年以降もありじゃないかというような声も聞こえているとか,聞こえていないとか…。

とは言え,各地で取り組んできた高大連携アントレ教育プログラムがこうした形で成果として残ったことは喜ばしく思う。今後,この1年間の取り組みを受けてのアンケート調査もあるし,今週末の福岡女子商業高校での女子商マルシェ,来週末の壱岐での「壱岐イヴェールマルシェ〜壱岐商出張文化祭 in 勝本」の開催を控えている。

2022年度の取り組みの成果が一気にここで回収される。ここまで仕込んだ取り組みが実を結ぶのだろうか。楽しみでもあるし,怖くもある。

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