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いよいよスプラウトが宮崎・日南へ|2023スプラウト にちなん起業体験プログラム①

気づけば2023年も8月。夏休み真っ盛り。今年はとても暑くて身体が追いつかない。そうした中で,2023年の新しい取り組みとして宮崎県日南市での『にちなん起業体験プログラム』にスプラウトとして参加することになりました。

にちなん起業体験プログラムのチラシ(私たちも共催してます!)

こういう展開ができるのも,1つは以前からこのプログラムを展開しておられた実践者がおられたこと(その中にゼミOGを含む),もう1つは九州の国立大学を中心に設立されたアントレプレナーシップ教育を行うためのコンソーシアム'PARKS(Platform for All Regions of Kyushu & Okinawa for Startup-ecosystem)」から一定の予算がついて,このプログラムを九州全域に展開するメドがたったから。

これまで福岡から日南に学生を連れて行くとなると相当の予算確保が必要であったが,今年度に限ってはそれが実施可能に。そこで,「スプラウト」がそもそも狙いの1つとしていた,斜め上のお兄さん・お姉さんである大学生が現地に行き,地元の中高生と交流することで少し先の未来を見せつつ,難解に感じてしまう「起業」を少しでも身近に感じてもらえるようなことができるようになりました。

ゼミ2年生とOBとともに久しぶりの日南へ

そこで,今回は前日に3年生3名,当日に私に同行する形で2年生2名と大分・日田でキャリア教育に取り組みOBとともに,記念すべき第1回の授業に参加することになった。今回の記事ではその第1回授業の様子をお伝えすします。

なお、他地域での取り組みについては下記のマガジンにまとめているので、こちらも合わせてお読みください。

新天地は宮崎・日南!

2019年に福岡女子商業高校(女子商)で始まった高大連携アントレプレナーシップ教育プログラム「スプラウト」。2022年までに福岡で2校、長崎、大分それぞれ1校の合計4校への展開が進んでいるが、ここに今年は初めて地域との連携で宮崎県・日南市の「にちなん起業体験プログラム」に授業を提供することになった。

その第1回は、参加する中高生とメンター役の大学生の交流を進めるために大学生5人を連れて日南にやってきた。例年よりも少ない参加者なのは残念だったが、その分中高生は大学生としっかり話ができるし、大学生も中高生と向き合いながら支援ができるということもあってポジティブに状況を捉えている。

アイスブレイク

現地のコーディネートは宮崎県でキャリア教育に携わってこられてきたHさんと、ゼミOGがお世話になっている株式会社ことろどの面々。2回目以降と出店までのオーソライズは日南の皆様にお願いをしつつ、こちらから授業を提供するという立て付けになっている。

9:00から授業がスタート。自己紹介に始まり、さっそくアイスブレイクからスタート。

コミュニケーションを取るポイント、わかりやすくそれを示すこと、チームで課題を解決することなど、さまざまなワークが進められていく。

毎度お馴染みペーパータワー

中には組織マネジメントと目標の共有の重要性を伝えるためのワークとして長らく愛用されてきた「ペーパータワー」があったりして、年の離れたメンバーがそれぞれ議論を交わしながら楽しそうにしている様子を微笑ましく見ていた。

こうして宮崎・日南でのスプラウト/「にちなん起業体験プログラム」はスタートした。

地元商店街のアントレプレナーから話を聞く

今回の「起業体験プログラム」では、11月中旬に行われるマルシェイベントにおいて自分たちで企画した日南にちなんだ商品を販売する。まさに中高生がアントレプレナーとして機会を見出し、商品を企画して販売する、マーケットを見つけるというプロセスを踏む。

しかし,そもそも中高生が何かビジネスをやってみようと言ってもわからないことだらけ。しかも,普段見ている景色の中で大人たちが何を考えて日々「事業」を営んでいるかは見えてこない。

そこで今回の授業ではマルシェが開催される油津周辺のアントレプレナーとして、10年前に油津商店街で豆腐販売と飲食店経営を始められた「2代目湯浅豆腐店」のご主人と奥様に話を伺うことに。お手製のランチを食べながら。

ランチは油津商店街の2代目湯浅豆腐店へ

食事をしながら大学生と中高生の話が弾む。親子ほど離れた教員と学生の関係に比べれば中高生との話は会うはず。今回参加してくれている中高生はとても大人びていて、こちらが難しいかなと思っている内容でもしっかりとついてきてくれている。

湯浅の親父からアントレプレナーの心得を聞く

そういう若い人たちを前にして、湯浅の親父さんもだんだんヒートアップ。

豆腐屋になろうとは思っていなかった若者が東京に出て何を思い、日南に戻って家業を継いで見えたことは何か。

訥々と語る姿を見て、話を聞いている私たちがどんどん話に吸い込まれていく。こういう気骨ある経営者がこの商店街にはいる。そのことを中高生が知るだけでも、このプログラムをやっている価値があるかもしれない。

私も湯浅の親父さんとは日南に行くたびに話をするが、こういう人だから信頼できるし、お客様のことを思ってモノを作れるし、たとえ波があろうともブレることなく自分が採るべき道を選べるのだと思う。本当に格好いいアントレプレナーとして改めて尊敬した。

地域で事業を行う意義を語る

ランチ後は私から1時間講義することに。テーマはいつも話している企業活動の目的は付加価値の創造にある。最近は高校の模擬授業でも話をしているテーマだ。ここでは一般名詞としての「付加価値」ではなく、会計用語としての付加価値、つまりはインプット(材料費)とアウトプット(売上)の差額として考えている。

私も1時間授業をしました

そうすると、「自分たちが買い物した時に支払ったお金はどこに行ってしまうのだろうか?」という疑問が湧く。会計の専門用語をできるだけ使わずに、それが取引先や働く人の給料、税金として私たちの生活を豊かにするために使われることを学びつつ、地元にどれだけ還元されるのかを考えてみる。

そこで手掛かりにしたのがこちらの記事。チェーン店が地域にできることによってどんな影響があるのか。そして、たとえ規模は小さかろうと、地域にお店があり、そこで経済活動が営まれる意義を知ろうと。

湯浅ご夫婦とことろどメンバー

地元には何もないのではない。目に見えていないからこそ価値を削り出して見えるようにする。それをどこの誰に対して示すのか。価値を理解してお金を払ってくれる顧客はどこにいるのか。

コンビニでは?チェーンレストランでは?地元の飲食店では?

こうして他地域でも話をしてきた地元で自分たちが商売をする意義を中高生と大学生がともに考える時間ができた。

ご協力頂く地元商店の皆様のもとへ

続いては、今回の出店にご協力頂く地元商店・企業を訪ねることに。

まずは4年ほど前に日南にIターンした女性による洋菓子店へ。

地元ケーキ店CoCoでミーティング

開店当初からこのお店の評判は聞いていたが、私も今回初めて訪ねた。オーナー自ら「自分が食べたいと思うお菓子を作っている」というこだわりのある小さなお店にはひっきりなしにお客様が来られる。

桃を丸々1つ使った贅沢スイーツ

大々的に宣伝をしているわけではないが、開店と同時に電話問い合わせで売り切れてしまい、なかなか買うことができないのが桃を丸ごと1つ使ったスイーツ。運良く今日は購入することができ、参加したメンバー全員で試食した。

うまい。

評判があるのも納得した。オーナーにも少しだけインタビューをして、もし販売するとしたらどんなスイーツや洋菓子を展開できるか、イメージを膨らませながらお店を後にした。

続いては作業者が着る服やアイテムを販売する山田商事 ワーカーズさんへ。

作業用品販売店「ワーカーズ」での視察

こちらは自前でプリンターを持っていてTシャツやポロシャツにプリントをしたり、日南の特産品である飫肥杉などの木材にプリントができるサービスを行っている。これまでもこのプログラムでは中高生がオリジナル商品としてチャレンジした製品はこうしてできていたのだと納得。

ここには中学生向けの制服や体操服などの学校用品も販売されていて、参加している中学生も店員さんと話していたりもした。こうして自分たちが普段使っているものがどう作られ売られているのかを知るのも良い機会。

商品アイデアを練る時間と今日の授業のふりかえり

視察を終えて再び会場でワークショップ。土日の1日かけて行うプログラム。かなりハードなプログラムだ(笑)。もうおじさんは最後ぐったり…。

それでも,中高生と大学生は最後の力を振り絞る。見てきた商材をもとに中高生と大学生がアイデアを出し合う。さまざまな視点から意見が飛び交う。少し疲れた様子の中高生たちも、積極的に発言。

どんなモノを作ったらいいか。どんな企画をしたら良いのか。ターゲットは?誰に買って欲しい?

最後は今日の授業のふりかえり

具体的に日南の特産物からアイデアを出したり、それをゆるキャラ的にアレンジしてみようとしたり、はたまた洋菓子を売るとしたらどんなお客さんが来るかを相談してみたり。短い時間だけれども、たくさんの意見が出てきた。

みんなで考えた商品案。個人的にはゆるカワカツオのステッカー欲しい。

次回はこれをベースに大学生がオンラインで行う授業に繋げていく。どんな授業になるだろうか。

また、最後には授業にふりかえりとして、今日の目標からできたこと、できなかったことをコメント。発言を聞いている限り、中高生にも大学生にも濃い時間になったよう。

とりわけさまざまな地域の高校生に対して授業をしてきた大学生にとっても、他地域との比較をしながら現地でその空気を感じ取ることで自分たちが果たすべき役割がどんなものなのかをだんだん理解できてきたようだった。

それは単にふりかえりをしたからではなく、その後に油津商店街を長らく見つめてきた洋服店のオーナーの話であったり、それまでたびたび耳にしてきた木藤亮太さんの油津での軌跡と付け合わせることで点が線に、線が面になっていく感覚に近いのではないかと。

若い人が日頃と異なる環境に身を置くことの大切さを改めて感じる時間になった。

ふりかえり:展開の新たな方法を模索しつつ

こうして日南でのスプラウト、「にちなん起業体験プログラム」の第1回授業が終了した。

わたしたちにとっても初めて地域との連携の中で実施したプログラムであり、既存のプログラムをベースに授業を織り込んでいくという新しい取り組みでもあった。

今回参加してくれた中高生は、知識的にどうしても理解できないことがあることはわかりながら、大学生の力を借りて自分の言葉で喋ろうとしてくれていた。まず、このことが助けになったし、授業を円滑に進めることができた大きな要因。ま、そもそもこんな無茶苦茶な(失礼!)プログラムに参加しようというのだから、興味や見えている目線が高いのだろう。

大学生も日南という話には聞いていた場所に初めて足を運んだことで、ちょっとした高揚感と緊張感と疲れの中で、できることを目一杯してくれたように感じた。先に書いたように他地域で培った経験もあるけれども、今ここにいる中高生とどんな対話ができるか。その中で自分たちにどんな気づきが得られたのかを噛み締めながら授業をしていたように見えた。現地に足を運び、この目で見て、耳で聞いたことを言葉にするという学びの基本の重要性を改めて感じた。

アローラの姿ではなかった(涙)

さて、今回のここでの学びをこのあと始まるであろう新しい場所での取り組みにどう活かしていくか。

9月には熊本で1つ、佐賀・長崎を跨いだ形で1つのプログラムが始まるかもしれない。また8月には1回だけ90分でアントレプレナーシップを授業するプログラムも始まる。ここで2023年度は日南を含めて4地域に新たな展開が進みそうだ。

これまで5回講義+1回の実践にこだわってプログラムの展開を図ってきたし、やるならそれだけの時間をかけてやりたいという意思がある。が、忙しい高校のカリキュラムの中で10コマ(1回授業あたり2時限)の時間を割くことは難しい。

加えて、課題研究に地域のプログラム運営者が入ってる状況を踏まえれば、そうした運営者と連携しながらスポット的にプログラムを提供するというやり方もあり得るのかもしれない。教育効果とプログラム実施の狭間で悩みは尽きない。ショートプログラムの開発を考えても良いのかも…。

この夏休みに展開する状況でいろいろと考えていくことにしよう。

最終便で無事福岡に!

今回の日南訪問は、いろいろな人に久しぶりに会い、新たな出会いがあり、あの油津商店街の今を現状を確認して、多くの気づきを得ることができた。

関わって頂いた皆さん、本当にありがとうございました。学生の皆さん、引き続き頑張りましょう!

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