高校生と大学生が共創して学び合う環境づくり|2022壱岐商業高校×とびゼミコラボ授業㉒
ついに2022年度の高大連携アントレ教育が終わります。
今日は壱岐商業高校とのオンライン授業最終回。あとは年明け1月19日に課題研究発表会が開催されますが,この時期は学生にとって重要な期末試験の時期でもあります。よって,高校生と大学生がそれぞれの立場で会うのも最後。別れのときが迫ります。
今日の授業は2コマのうち1コマを高校生側の発表会準備に活用するため,1コマだけを使って1年間のふりかえりと高校生・大学生のそれぞれのコメントを交わす機会としました。あっという間の50分。涙なくしては語れない(!)最終回の授業の様子をお伝えします。
なお,これまでの壱岐商業高校での授業の様子は下記のマガジンをご参照ください。
たくさんのマスコミが取り上げてくださいました!
と前フリしておいて,ここでイヴェールマルシェの模様が多くのマスコミに取り上げて頂いたので,その記事を紹介します。
新聞記事を見ると地域性,各社のスタンスがよく出るなと思います(笑)
西日本新聞は,模擬店出店にフォーカスし,この取り組みが高大連携で行われていることも記してくださっています。大学名まで出してくださり,ありがたや。短い文章にたくさんの情報を詰め込んでくださいました。
これが地元紙になると,高校の課題研究活動がメインの表記になり,私たち大学との関わりは一切表現されません(笑)。むしろ,まちづくり協議会と連携して開催されたイベントというテイストが強めになります。事実,まち協のSさんの協力なしにこのイベントはなかったので,これはこれで喜ばしいことでもあります。
壱岐のメディアは3つ。まずは一番熱心に取材してくださった壱岐新報さん。
8月末に開催したエテマルシェも取材して下った記者さんが来られて,高校生,大学生,そして私にインタビューしてくださった。このマルシェがどのような経緯で開催されたのか,壱岐商業高校でどんな授業が行われているのかを含めて書いてくださり,当事者としては最も詳しく,こちらの考えているストーリーを書いてくださっている印象。
また,壱岐ケーブルテレビでも3分間ほどの番組として紹介してくださった。こちらには高校生と大学生へのインタビューもあって,マルシェの空気感がよく出ている構成。本当にありがとうございます。
あと,こんな記事も発見。壱岐商業高校の「壱州荒海太鼓部」メインの記事。なるほど,こういう視点もあるのかとある意味驚いた(笑:ゼミ名出してくださってありがとうございます!)
なにはともあれ,これほどまで多くのマスコミにマルシェを取り上げて頂いて本当に感謝です。夏は長崎県内のローカルテレビ局でもニュースになったりしましたが,今回は数多くのメディアに取材して頂くことができました。この記事が少しでも多くの方の目に止まり,来年度以降も同校の取り組みとして継続されることを願ってやみません。
1年間の授業のふりかえりと高校生・大学生のコメント:今日の授業
さて,当の授業はというと,最終回独特の雰囲気を醸し出しながら,リーダーの発声によりスタート。まずは大学生からこの1年間の学習内容を一通りふりかえるようなお話を。
金曜日に福岡女子商業高校での最終回を終えたばかりで,その資料をもとに講義する。
各校で何度も繰り返し話をしてきた「一歩踏み出す勇気」としてのアントレプレナーシップと「組織的に成果を実現する」コレクティブ・ジーニアスをベースに,個々人がジブンゴトとしてリーダーシップとフォロワーシップを組み合わせて活動することで,創造的な成果をもたらす活動こそ企業活動の基礎になるものだというメッセージを改めて伝える。
そして,ひとしきり話を終えると,続いては高校生からのふりかえりコメント。今回の課題研究「起業体験プロジェクト」を受講した10人の生徒それぞれからコメントがあった。
ある生徒は,当初は別の課題研究に参加するつもりだったけれども,先生に誘われて何となく参加した。けれども,授業は大学生が行うし,島のことを考える機会もあったし,大学の進学も経済・商系を考えていたこともあるので,とても楽しく,興味深く授業を受けられたと。
また,ある生徒は,将来起業したいと思ってこの授業を受講した。引っ込み思案であまり自分から話をしないけれども,2回のマルシェを進めていく中で同級生と話す機会も増えたし,自分で考えて意見を言えるようにもなったと思うと。
なによりこの言葉が嬉しかった。
「この授業を通して壱岐のことをいっぱい勉強して、知れて、今まで以上に壱岐のことは好きになりました!」
最高やないかい!
それぞれがそれぞれの見方で自分たちの感じたこと,考えたことを話してくれるようになった。おじさんは涙出そうでした。
最初は大学生の緊張が伝染する形で高校生もぎこちない様子が見られた。が、やがて大学生が現地を訪問して高校生と交流し,夏のマルシェに向けての準備,出店という共同作業をしていく中で仲が深まり,2学期,そして冬のマルシェと進んでいく過程で同じような目線で高校生が話できるようになった。そういう過程を改めてふりかえると,この8ヶ月間で高校生が多くのことを学び,実践し,考え,発言し,行動してきた成果が見事に表れているのではないかと感じている。もちろんこれは私の主観的見解なので,どこまで適当かという問題はあるけれども,きっと見るからに成長していると思う(もちろんプログラムの授業を受けなくても,きっと彼・彼女たちは相応に成長していたに違いない)。
続いて大学生からのコメント。今回担当した学生がそれぞれの見え方で話をしてくれた。
マルシェという実践機会を通じて机上の学びと日々の生活がどう繋がっているかを理解してもらえたのではないか。またこの機会が自分とふるさとである島との関係性を形作ったり、将来どのような道を歩むにしても,ここで学んだことを活かして欲しいと。
また、ある学生は自分の半生を振り返りながら、高校までの自分は一歩踏み出す勇気を持てなかったけど、大学でさまざまな人と出会い、交流していく中で自分の視野が広がっていくことに実感を持てるようになったり、「やらないで後悔する自分」から脱却できたように思う。優れた経営者だって、一流ストライカーだってたくさん失敗しているんだから、自分たちもいくらでもチャレンジして失敗する中で学べばいいし、成功するまでチャレンジすれば良いのだという話をしてくれた。
そうこうしてあっという間に50分が経過。私からは一言だけ、DeNA創業者の南場智子さんがいつも仰るあの言葉を送った。
ついに授業が終了
こうして4月から8ヶ月に及んだ壱岐商業高校課題研究「起業体験プロジェクト」は終了を迎えた。
4月当初を考えれば、学生たちにはとんでもない負担を課して、きっと七転八倒しながら毎週の授業準備、実践機会の創出に努力してくれたに違いない。投げ出しても良さそうなものを投げ出さずに最後まで成し遂げたメンバーには本当に感謝している。改めてありがとう。
ただでさえ授業をすることに不慣れな上に、オンラインで毎週2コマの授業をしていくというのは、今冷静に考えてもムチャクチャだし、あの時の自分に向かって「アホか」と言いたくなる。
が、授業を重ねるごとに要領を得て、少しにヒントを提示するだけで、あるいは他の高校で行っている授業を参考にしたり、時には先輩たちから学ぶことで、さまざまな状況下で授業を行えるだけの力量を身につけてきた。
学術的な研究とは全く異なるアプローチだけれども、大学生が高校生に授業するという取り組みをすることで、大学生と高校生が互いに学び合う共創関係を創り出すことができた。それは4年前にこの取り組みを始めた時から狙っていたことだけれども、福岡を飛び出して、大学生が想像もつかない地域に行ったことによってさらにそうした関係性が強化されたとも言えそうだ。
高校生からすれば大学生という未知の存在、アントレプレナーシップという聞いたこともないような言葉と出会い、大学生からすれば過去の自分も経験した立場ではあるけれども、全く知らない場所に暮らす高校生へ授業を行うという体験をすることが、何かに作用しているということなのだろうか(適当)。
いずれにせよ、毎回の授業が自分の学びを深め、高校生の反応が自分に自信を持たせてくれたのではなかろうか。またじっくり学生から話を聞きたい。
そして、ここからが私にとって重要なフェーズに入る。4つの高校で実施した「高大連携アントレプレナーシップ教育プログラム」の成果を測定するフェーズだ。今のところ2校の生徒から取得したデータで仮分析をしたが、起業家的な自己効力感が高まるという成果に繋がっているようだ。特に創造性を喚起するような結果になっていて、今回のプログラムが販売体験という実践機会を設けることによって高校生の創意工夫を促す可能性を示唆している。
先日終わった福岡女子商業高校と今日終わった壱岐商業高校での調査はこれから実施するが、果たしてどのような結果が得られるだろうか。また機会があれば、ここで報告することにしたい。
追記
ここに来て新展開が始まりそう。どこの高校も課題研究・探究学習はお悩みの模様。負担を下げつつ、より効果的な学習を進めていくか。一見相対立する課題にどうアプローチしていくか。高大連携だけでなく、若年世代の地方におけるアントレプレナーシップ教育の先頭を走る気概で望みたいと決意したのでした。
果たしてどうなることやら。
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