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コンテクストの共有が大事|2023スプラウト 古賀竟成館高校①

前回記事でも書いたように,高大連携アントレプレナーシップ教育プログラム「スプラウト」が九州各地へと展開しようとしています。昨年までの福岡,大分(今年度実施未定),長崎に加えて,先日の宮崎・日南での授業が始まり、さらに新たな県での実施が検討されています。

そして,足元の福岡県でも那珂川市(福岡女子商業高校),飯塚市(飯塚高校)と2つの私立高校でプログラムを提供していますが,今回は新たに古賀市でのプログラムが始まりました。今回は福岡県公立古賀竟成館高校(こがきょうせいかんこうこう)での実施。ここには普通科と商業科があり,今回は双方の学科から参加者がいるという状況。

「福岡県公立」というのは古賀市,福津市,新宮町とかつて糟屋郡北部の町で共同設立された「組合立」を意味します。ちなみに「組合立」は全国に3校しかなく,うち2校が福岡県内にあるのだそうです。

今回は古賀駅西口でのハロウィンイベントに向けた授業

さて,なぜ古賀でスプラウトなのか。それは古賀市の中心駅であるJR古賀駅西口の商店街活性化事業に古賀竟成館高校が取り組んでいることが大きな理由です。さらに,ここを拠点に活動している株式会社ヨンダブルディーと古賀市役所も加わって共同でプログラムを立ち上げ,10月22日を予定日としてハロウィンイベントを実施することを目標に諸々の授業を行うことになりました。

このプログラムの中で1回だけの授業提供ではありますが,この機会を通じて何を高校生に学んで欲しいのかを明確にするために「アントレプレナーシップとコレクティブ・ジーニアス」をテーマに学生が授業します。今回はその授業の様子と,改めて感じ取ったことを記録しておきます。

各地域でのプログラムの展開については下記のマガジンをご覧ください。

パッと授業はできるだけでも素晴らしいけれども

13:30授業開始。あらかじめ事務局からは「事前動画,プリントを配布できてません!」という連絡を受けていたこともあり,90分の授業のうち,まずは今回の授業の事前動画を見るところから。例の昔話『桃太郎』を使ってアントレプレナーシップとコレクティブ・ジーニアスを学習する内容のもの。

夏休み中ということもあってお休みの生徒さんもチラホラ

スケジュール変更については昨日伝えていたこともあり,担当した学生は難なく授業を進めていく。参加している高校生もVTRを見てレジュメに必要事項を記入しつつ,学校生活の中でのアントレプレナーシップ=「一歩踏み出す勇気」やコレクティブ・ジーニアス=「組織的に目標を実現する」を書いていく。順調なスタート。

今回の授業担当は3年生のIくん

ただ,すでに作成している授業資料は事前動画を見てからのワークショップという構成になっているし,極めて抽象的な概念を扱う内容でもあるから,繰り返し,概念と生徒の日常生活を結びつける「同じような」ワークが繰り返される。どうしてもここは冗長になってしまい,同じ話を高校生がしているような印象だったかもしれない。

2年生のKさんもサポートで参加

そうした中で大学生の適切なサポートもあって,高校生たちは自分の生活を振り返りながら,ワークシートに記入をしていく。まだピンと来ていないだろうけれども,実はアントレプレナーシップとは特別なものではなく,学校生活の中でも身につくものだということを理解できると良いのかもしれない。

学生が生徒の考えや意見を引き出す

ただ,授業を行う大学生にリクエストを出すとすれば、女子商での授業をすでに行っているという安心感もあったからなのだろうか,もう少し言葉が必要だったり,間を置いたり,相手のペースに合わせたりとできることはあったように思う。これを学生に求めることは酷かもしれないし,まだまだこれから改善の余地はあるのだけれども,高校生にとっては一度きりの授業だからこそ,もっとできることはあるかもしれないねというコメントを後でした。

アントレプレナーシップとビジネスが結びついて理解できたか?

さて,授業は後半戦。90分ぶっ通しのため,高校生は疲れているかもしれない。が,こちらも時間がない(笑)。授業は進む。

ここではアントレプレナーシップが実際にどうビジネス(事業)とつながっているのかを学ぶフェーズ。身近にある企業を例に出しながら,そうした企業がどのようにして事業を行っているのか,わたしたちが日常的に消費している製品やサービスは企業が作り出しているということ,それによってさまざまな人の生活が成り立っていることを知る。

それに加えて,そうした企業があるアントレプレナーによって設立されていることを学ぶ。アントレプレナーが事業機会を見出し,事業化することによって,わたしたちの生活がより良くなっている。単に儲ける、儲けないだけでなく、他者に幸せをもたらす事業を行いながら、自分もそれで生きていく糧を得る。時にそれは自分自身の価値を示すものである場合もある。高校生にも身近なコンビニエンスストアなども,当時は当たり前からかけ離れた「あなただけが知っている真実」をもとに作られたものだ。

タブレットを使った調べ学習で理解を深める

また,ゼミでもお世話になっている経営者に(Youtubeで)ご登場頂き,地域にある資源を活用してどのように事業を成立させているのかを通じて,アントレプレナーの思考を学習してもらった。記事を共有してワークを行い,何を目的に,何を事業機会として事業を営んでいるのかを理解するように促す。

明るい生徒さんのおかげで授業は盛り上がりました

ここで面白かったのは,高校生自身よりも周りで授業を聞いている大人たち(4WDや古賀市役所の皆さん)が感心して動画を見たり、記事を読まれていることだった。こうした地域を基盤に付加価値を生み出すアプローチには学ぶべき点が多々あるのだろう。加えて,今回の授業が単に学生がやっているからということではなく,誰にとってもある程度普遍的な内容であるから興味を持ってくださってもいたかもしれない。

こうして授業は90分,担当してくれたIくんの真面目な中にあるゆるさもあって,和やかな雰囲気で進められた。これは本人の力量もあるけれども,授業を聞いてくれた高校生の傾聴力のようなもののおかげでもあろう。皆さん,とても優秀で助かりました…。本当にありがとう。

ふりかえり:コンテクストをどう共有するか

授業としては及第点。パッと与えられた資料で授業をできるだけのスキルはあることは素晴らしいけれども,「もっとできたかもしれないよね」ということで,授業担当したIくんには「65-70点くらいだね」と伝えた。

その理由はレジュメに書いてあることを読むだけであれば高校生でもできてしまう。その行間に書いてあるコンテクストをどう伝えるかが先生役の学生が授業を行う価値になる。そういう意味では今回の授業はすでに1度行っている内容だとは言え,十分に伝わっていなかった=理解がまだまだ不十分な部分があるということ。ここを埋めていく準備をしっかりやること。これが課題だねと伝えた。

もちろん学生はよくやってくれているけれども,決められた教材に基づいて授業をやるとしたら,こうなってしまう可能性はいくらでもある。本人も授業をやってみて気づいたことが多々あったようで,真摯に私からのコメントを聞いていた。こういう学生はまだまだ成長する。頼もしい。

加えてコンテクストという点で言えば,もう少しこの授業が何を目指しているのか,なぜここで大学生が授業するのかを私からもう少し説明するべきだったかもしれない。ここは昨年度もさまざまな高校で授業することがあったにも関わらず,十分に配慮するべきだった。

ということで,授業としては及第点ではあったけれども,「授業の手引き」を作成したり,第1回授業の内容をもう一度精査する必要があったり,課題が出てきた貴重な体験になった。本当にありがたい。

今日学習した内容は高校生にとってすぐにパッと理解できるようなものではないだろう。それでも,これから10月中旬まで続くイベントに向けた企画立案,準備の中で「あ,あの時の話だ!」となるような内容ではあったはずだ。

場面,場面で高校生が思い出して,(自信はないけど)ここで自分が「一歩踏み出す勇気」でチャレンジしてみようとか,(同じグループのあの子が持っている力は)「ここで活かして欲しい!」と目標達成のために仲間の能力を引き出すなど,ぜひ今回の学びをこれからのプログラムの中で腑に落として頂きたい。

スポット参戦は1回きりの寂しさがあるけれども,改めて貴重な機会を頂いたことに感謝します。関係者の皆さん,ありがとうございました。

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