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『ザ・ボーイズ Season2』共和党も民主党も最悪

 なんだか『アベンジャーズ』がいたら本当にこうなるんじゃないか、と思わせる大企業スーパーヒーロー風刺なブラックコメディ #TheBoys シーズン2ですが、米国政治ネタのバランスもある意味絶妙なバランスに。

【以下ネタバレ】

 まず目を惹くのがどんどん排外主義的になる悪の白人スーパーヒーローたち。前シーズンだと共和党&トランプ政権の票田であるキリスト教福音派っぽい集会がでてきましたが、「TikTok女」ことストームフロントが参入した今回もトランプ陣営よろしく?インターネットミームを使って支持を集めていきます。不法移民(ヴィラン)反対を唱えて「国家侵略」の恐怖を煽ったり、過激な陰謀説によってピザゲートのような殺人事件が発生したり、そのあいだに「不当に殺害されても警察に訴えられない黒人市民」問題を入れたり、現実では銃乱射の恐怖に晒されている子どもたちの学校を武装させたり、現実の共和党サイドの問題点とされるトピックを大企業スーパーヒーローとリンクさせております。オチとしては、軽い「ぶっちゃけキャラ」とメディア、インターネット工作により支持者を過激化させていったストームフロントが本物のナチスの白人至上主義者だったこと。「アメリカ人はナチスの思想が大好き、ナチスという言葉を使われるのが嫌いなだけ」って感じのセリフもパンチが効いてるし、黒人の同僚に裏切られて失脚する展開も説得力あります。あと、シーズン初め、彼女がフェミニズムへの嫌悪感をほのめかしていたのも伏線っぽいですよね。

 一方、いわゆる民主党的リベラルも風刺されてるところが"The Boys"の面白さでありブラックコメディとしてのバランスかなと。大企業やマスメディアによる「強い女性たち」のフェミニズムブランディングのしつこさ、軽薄さがまず一つ。クイーンメイヴがやられる「レインボープライド」売りも同列で、業界人の「アメリカ人はセクシャリティをハッキリさせるのが好きだから!」みたいな態度も、取ってつけたようなダイバーシティビジネスで儲けようとするハリウッドやメディア業界を彷彿とさせます。ただ、シーズン2のキーワードになっている「強い女性たち」、いろいろ皮肉った挙げ句に最終話ではストームフロント&キミコ&メイヴの共闘でカタルシスにつながります。それでも、これは"The Boys"なので、最後の最後にひねり……。

  高潔な下院議員ヴィクトリア・ニューマンも汚職や工作をする凶悪人物だったのだ!……というのがプロットツイストなのですが。このヴィクトリア、面白いのは、原作ではジョージ・W・ブッシュ元大統領をモデルにした男性キャラだったことなんですよね。つまり共和党南部の大物政治家だったわけですが。今回、ドラマ版ではかなり民主党っぽいキャラクター、それも同党左派の若きホープ、AOCことアレクサンドリア・オカシオ=コルテスっぽくなっております。上記のSlate記事に類似点が挙げられているのですが。まず、カリスマ的かつ既得権益に抗うPOC(有色人種)若手女性議員で、演説に長けており草の根運動から熱い支持を受けている。トレードマークが赤い口紅踊る動画がインターネットで人気を博した"CUNT"と性差別的な罵倒を浴びまくっている。AOCを重要なモデルの一人にしたことは演者のクローディア・ドゥーミットも認めるところです

 ということで、共和党も民主党も最悪、「未来の希望」と持て囃されてる若手カリスマ女性議員も最悪、っていう、大統領選挙を前に毒々しい皮肉を喰らわせる"The Boys"Season2なのでした。あと、ラストバトルなんですが、お約束のように『ドラゴンボール』悟飯覚醒……!

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