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民主党大会2020:ママ向けセレブ大活躍

 打倒トランプ、ということで4日間にわたる民主党大会が開催。音楽パフォーマーは、ブッシュ政権批判で干されたのち復活したThe Chicks、公民権運動を描いた映画『グローリー/明日への行進』主題歌を担当したジョン・レジェンド、若き環境活動家ビリー・アイリッシュetc、いわゆる妥当で穏当な民主党セレブ布陣(ついでに名前を挙げた3組は新作を出したばかり)。しかし、バーチャル開催となった今回、驚きなのが「司会をつとめた中年TV女優たち」。

 ホストをつとめたのは各日『デスパレートな妻たち』のエヴァ・ロンゴリア(45歳ラテン系)、『ブラッキッシュ』トレイシー・エリス・ロス(47歳アフリカ系)、『スキャンダル 託された秘密』ケリー・ワシントン(43歳アフリカ系)、『Veep/ヴィープ』ジュリア・ルイス=ドレイファス(59歳ユダヤ人)。ジョークなんかも飛ばしていたこれらホストは出演時間も最長級。初日のロンゴリアは予備選セカンドランナー、バーニー・サンダースよりも長く話していたとか。バラク・オバマ、ヒラリー・クリントンと比べて「きらびやかなセレブリティとの交流」をアピールしてこなかったバイデン陣営ですが、だからこそ驚かされる大々的な起用。共和党側に「金持ちセレブとの結託」バッシング材料を与えることになるものの、それでも決行したかたちです(バッシングについては全文公開中の『アメセレ』レディー・ガガ章参照)。

 この4人って、人気や知名度はあるけど民主党のビッグイベントに登場しがちなメガポップスターやハリウッドスターのトップ層とはちょっと異なる、いわば大御所ドラマシリーズでお馴染みのテレビ女優ですよね。アメリカで国民的な人気はあるけど、これまで党大会に出て世界中のヘッドラインを飾ったケイティ・ペリーやメリル・ストリープ、スカーレット・ヨハンソンと比べればちょっと地味。日本においても、今年注目を浴びやすいのはビリーあたりでしょう。しかしながら、それゆえバイデン陣営の狙いは明確になる。NYTも書いてるように、「政治的には中間の郊外の女性」ターゲティングです。「2008年にはフレッシュなオバマを支持して2016年にはイヴァンカに憧れてトランプへ投票」みたいに例えられる浮動票ゾーン。だから「トレンド/グローバル感あるキラキラなスター」より「中高年女性や子育て経験者から好感度が高いベテランTV女優」が強いわけです。もちろん、民主党にとって重要な女性およびマイノリティ人種エンパワメントも満たしている。大統領予備選で若年スターはサンダース支持が多くバイデンは派手さのない年長者人気、みたいな話はCINRAの連載で紹介しましたが、大統領候補となった党大会でも「グローバル/若者受け」より「ママ層狙い」を打ち出してきたのは浮足立たずに上手だなと思ったのでした。

 余談1:ラスト2日をつとめた『スキャンダル』ケリー・ワシントンと『Veep』ジュリア・ルイスは両ともホワイトハウス関連のドラマでお馴染みなのでちょっと面白いですね。

 余談2:バイデンのキラキラ系スター交流戦略としては、同時期ELLEでリリースされたカーディBとの政治談義。今カーディはエロ曲"WAP"で共和党派閥から叩かれてるので、民主党大会に出すより大手媒体で真面目な話たっぷりしたほうがベターですね。

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『マイ・インターン』(2015年)のような絵面

 余談3:バイデン演説に並ぶハイライトとなったミシェル・オバマのスピーチはさらっと共和党のレーガン、アイゼンハワーを挙げるあたりも上手でしたが。「勝つ見込みのない候補者たちと遊んだりしているときではありません」箇所って、共和党まわりの専門家と組んで動いているカニエ・ウェストを念頭に入れてるんですかね(※激戦州でカニエがわずかでも票を吸った場合、民主党敗北につながる可能性がある)。民主党参謀もカニエを注意深く見ているとも報じられてますし、「セレブの無謀なチャレンジ」では既に済まされない領域に……。

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