見出し画像

役員への貸付は要注意

小さな会社だと、会社から経営者に対して貸付金が発生する場合があります。例えば、経費になると思って飲みに行ったが、経費にはできないと税理士に言われた場合です。会社のお金で支払を行っていれば、その領収書の金額は経営者への貸付となります。このような小さな取引が積み重なるなどして役員貸付金が多額になるとどんな影響があるのでしょうか?

会社からの無利息融資は存在しない

会社からお金を貸しているとはいえ、相手が経営者なので通常は利息を取ることはないと思います。しかし、税務上は無利息融資は認められません。前回も出てきた法人税法22条2項を見てみましょう。

内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額とする。

このように、無償による役務の提供は益金(収益)にしなければならないと定められているのです。無利息融資は「無償による役務の提供」です。したがって、経営者から支払を受ける、受けないに関わらず、利息相当額について収益を計上しなければなりません。この利息のことを「認定利息」と呼びます。

ちなみに利息としていくら計上すれば良いかについては、所得税法基本通達36-49で定められており、特例基準割合を用いることになります。特例基準割合は毎年告示され、令和元年度は1.6%となっています。なお、銀行等からの借入がある場合には、その利率で良いこととされています。

認定利息を計上したとしても、実際にお金を受け取っていないのであれば、認定利息と同額の経費が発生していることになります。とすると、収益と経費で打ち消されるため、結局税金は増えないのでしょうか?残念ながらそんなことはありません。この経費は役員への給与となります。役員の給与は毎月定額である等、一定の要件を満たさない限り損金(経費)にはなりません。そのため、収益だけが残り、課税されることになります。

役員貸付があると会社の評価が下がる

認定利息によって、税金が増えますが、現在のような低金利であればそれほど影響はないかと思います。それよりも問題は、役員貸付金で会社の評価が下がることです。簡単にいえば、役員貸付があると銀行からの融資が受けづらくなります。

銀行は融資先を格付し、貸出ができるか、金利をいくらにするかを決めています。役員貸付金は、銀行の格付評価において「なかったものとみなされる」ので、その分、資産と自己資本が減ります。下手をすると実質債務超過と判断される可能性もあります。

役員貸付は早めに解消する

このように、役員貸付にはいいことが全くありません。発生させないようにするのが一番良いのですが、もしどうしても発生してしまった場合には、早めに解消できるように対応しましょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?