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終わり良ければ総て良し その4

失業対策と介護士不足を結び付けたのは、あまりにも短絡的で愚策中の愚策だった。

政治家も国民も誰も気づかない。
業界も国に感謝していたくらいだから駄目だな。

本来は抗議すべきだった。

僕は、厚労大臣宛に、意見書を出したけどね。


どのように問題だったか、簡単に説明すると、あれはリーマンショックの時だったかな。

日本中に失業者があふれた。

政府は対応に追われた。

一方で、東京都及び周辺部、名古屋周辺などをはじめ、全国で介護士不足が始まった。

ハローワークに求人を出しても、高いコストをかけて求人広告を出しても応募0の状態が続く。

介護業界は悲鳴を上げた。

医療業界も、看護師不足が始まり、無資格でも許される看護助手の応募者が無くなって行った。

医師会や、全国老人社会福祉施設協議会などの関係団体から国へ陳情が続いた。

それに呼応して、厚労者が出した策が、失業者を介護士に育て上げ、不足を補うという「基金訓練」である。

つまりは、失業者は失業保険をもらいながら、無料で「訪問介護員2級(のちの初任者研修)」や「介護職員基礎研修(のちの実務者研修)」などの資格を取得できるというもので、基本的に「就労支援がセットになっている。

だから、他業界の離職者が、にわか仕込みで介護士の勉強をして、介護業界へ参入したわけだ。

それも短期間で大量に。

介護業界は、求人広告に高いコストを掛けなくても、採用できるから大喜びで採用したわけだ。

が、昔から「ただほど高いものはない」という格言が日本にはあるんだな。

リーマンショックで失業した人たちは、いわゆる「会社都合による解雇」で痛い目に遭っているわけで、労働争議や、組合活動などで会社と戦った経験を持った人も多かったんだよ。

それに、一流企業の(大手メーカーなどの)離職者が多かったから、福利厚生や給料大系や諸々が整ったところから、新分野でもあった介護業界へ参入してきたわけだよ。

それならショックを受けるよね。

失業のショックや怒りと、介護業界の体質と今までの業界とのギャップで不満を爆発させて辞めていくものが多発したんだ。

もう、介護業界は、どうにもならないくらいの退職の連鎖。

ネットではネガティブキャンペーンの嵐だったし、純粋な本来の介護士まで毒されてしまって、崩壊したと言っても過言ではなかった。

これって、介護業界を「生産性」なんて言葉で片づける、知性の低い政治家や官僚の愚かさの責任なんだよ。

単純に介護士不足を失業者で埋めれば「一石二鳥でしょ?」「いいアイデアでしょ?」って考えたおバカさんたちが、日本の介護や医療の現場を滅茶苦茶にしたんだよ。

だけど、メディアも勉強しないからこういうことについて書けないんだ。

僕はね、2004年に、当時は厚生省だったのかな?今のようにセキュリティが厳重ではなく、省内を自由に歩けた時代だったんだけど、「ゴールドプラン21」という国家的なプロジェクトを行って、数値目標まで打ち出したくせに結果を発表しない厚生省に何度問い合わせをしても明確な答えがなかったので、新聞記者時代のノリで、押しかけて、省内を「結果を求めてないはおかしいだろ?」と聞いて回った。

そうしたら、たらいまわしの挙句、労働局で、いやいや1枚のレポートを出してきた。本当に「出したくない」という感じで。

僕は奪い取った(笑)

見て愕然としたね。

「介護士不足は将来にわたってもあり得ない」と明文化されていた。

まだその文書は持っているし、知り合いの記者にはプレゼントしたけど、誰も追いかけなかったね。

その場で、その担当官に聞いたんだ。

「いやいや、どう考えても、介護士不足だと思うんだけど、どう思う?」って。

執拗に聞いたら、「あくまでも個人的な見解ですが・・・不足していると承知してますぅ」と。蚊の鳴くような声で。

そうだよね!
官僚は国民に対して瀬実に職務に励めと国家公務員法に書いてあるよね?
と、嫌味を言って帰ってきたけど。

2004年の時点で「不足はあり得ない、なんて見解を正式に出していたら、まともな政策なんかできるわけがない。政治家にレクチャーするのは官僚なんだから。

まあ、日本の厚生労働行政はこんなレベルですよ。
<続く>

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