緑の光線

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いろんなことに夢中になったり飽きたり

少年の頃から人間は、愚かにもある一つのことに夢中になり、そのとき、おかしなものの感じ方をし、おかしな法則を作り出してもっともらしい顔をしたりするということで、それが何かしらリアリティをかんじさせる、ということのほかは、大して信ずるに価するものはない。(小島信夫『返信』より)

    • 忘れられない小説ー『村上龍映画小説集』

      二十三歳の頃だった。私は美術大学に通っていた。今、考えるとなぜ美大を選んだのかよくわからない。確かに父親が美術の教師で油絵を描くのをながら育ったのだが、自分も画家になろうなどと思ったことはなかった。たぶん仕送りが欲しかったのだと思う。どこか大学に入らなければ仕送りは貰えなかった。私は、世間的に言うと、二年浪人をしたということになっていたが、「浪人」というイメージからひどく遠い生活を、米軍の横田基地の傍で送っていた。年上の女と同棲し、GIと付き合い、ありとあらゆる麻薬をやり、い

      • デボラ・ソロモン『ジョゼフ・コーネル 箱の中のユートピア』書評

        『ジョゼフ・コーネル 箱の中のユートピア』を読み終えた。500ページ近くの分厚い本だったので読み終えるのに一週間以上かかった。 ジョゼフ・コーネル(Joseph Cornell、1903年12月24日 - 1972年12月29日)は アメリカのアーティストで、アッサンブラージュの先駆者の一人。シュルレアリスムに影響を受けた。前衛的な実験映画の制作者でもある。(wikipediaより) コーネルは彼の憧れた女優やバレリーナの写真の切り抜き、ビーズ、貝殻、玩具など自分が蒐

        • 「ただ書くだけ、プロセスだけを続ける」乗代雄介×保坂和志の対談を読む

          群像(2019.1)の野間文芸新人賞受賞記念対談「書かないもののまなざしを忘れて書くことはできない」を読んだ。選評も読んだ。読み終わったらなぜかブログみたいなものを書きたくなったのでnoteを開設して書くことにした。 この年の野間文芸新人賞の候補者は金子薫、町屋良平、古谷田奈月、木村紅美、乗代雄介。受賞者は金子薫、乗代雄介。 選考委員が小川洋子、島田雅彦、高橋源一郎、長嶋有、保坂和志、星野智幸。 選評を読む限り、小川洋子、島田雅彦、高橋源一郎、保坂和志が乗代雄介を推して

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