墨家と生存戦略

哲学と心理学の雑学を集めていたら、「生き残る」ことについての面白い共通点を見つけたのでまとめてみます。
墨家思想の衰退と親族愛の話。

墨家

墨家は2500年前くらいの中国の思想集団で「兼愛」などを重視していた思想集団。

思想集団と書くとかなり怪しく感じるけど、当時のそういう思想への感覚を最近に例えると
コロナ騒ぎで小学校を休みにすべきかどうか、イベントを中止・延期にすべきかどうかということについて
意見が近いくらいな気がする。あとはヴィーガンだとか。

とくに当時はたくさんの思想集団があり、諸子百家と呼ばれていたらしいです。
その中で一番有名なのは、日本の”しつけ”の中にも残っていると言える儒教。
墨家はその次と考えられていた時期もあるらしいので、
当時ではだいぶメジャーだったみたいです。

墨家の「兼愛」とは言ってしまえば博愛主義に近く、つまりは
「(家族や友達でなくても)みんな大事にしましょう」ということ。
食べ物が当たり前にあり、世界平和だけでなく、人類・男女平等や環境を守ろう!
みたいな考え(参考)がある今とは違い、なんと当時は戦乱の時代。
そんな時代に博愛主義を掲げてしかも
ある程度広まったのはすごいですね。

この墨家は戦いにも強かったようですが、
いつの間にか滅びて現代まで伝わってはいないそうです。
(墨家について詳しく)

親族愛

心理学実験で証明されたらしき親族愛について説明します。
親族愛はトロッコ問題のようなものでもあることがわかるそうです。

[トロッコ問題]
ボタンを押さないと電車が10人の人をはねてしまうが、
ボタンを押すと電車が1人の人をはねてしまう。このボタンを押すべきか押さないべきか、
その判断のどちらが正しいのかという話。
詳しく

親族愛を試す実験では両親やおじいさん・おじ・いとこなどと、
友達や有名人や赤の他人を比べて「どちらを生き残らせたいか」「どちらを助けたいか」などを質問。
その結果、「血筋が近い」「将来有望」な人を選びがちになることがわかったそうです。
人は自然と子供を大事にしますが、子供は自分に血筋が近いし自分より
長生きするから将来有望という点で同じですね。
また、似たような趣味や考え方を持つ人と仲良くなるのも同じかもしれません。

なんでこのように「血筋が近い」「将来有望」な人を選びがちになるのでしょうか。
この実験をした研究者たちはそういう考え方をする人の子供たちが
昔から生き残ってきたから、自然とそういう考え方をする人たちが増えた
というふうに考えているようです。

墨家の消滅と家族愛

人は生き残るために自然と家族愛を身につけてきたこと、
墨家は誰でも大事にしようとしたことを説明してきました。
私はここに墨家がなくなってしまっている理由があると思っています。
つまり、自分に近い人を大事にしたりすることが生き残りやすいのに、
自分に近くない人も大事にしようとしたからこそ、墨家はなくなってしまったのではないでしょうか。
さらに当時は戦争が多かった時代なので、食べ物をはじめとした
いろんなものが常に十分あるわけでもない過酷な時代です。
そんな中で墨家の考えが生き残るのは難しかったのではないかと思います。

確かにみんなを平等に大事にするという考え方は大事ですが、
結局その考え方が人々に根付いていかないのはこういう背景があるのかもしれません。
また、この話は人、思想だけでなく、生物、国、政治、会社、学校、趣味にもつながると
私は考えています。

だからと言って完全に自分に似た人だけを大事にしているだけでは、
この先の世界がつながっていくようには思えません。
だからこそ今世界では平等や環境を守ろうという動きになってきているのだと思います。
どんどん社会は便利になってきています。
死を日常で感じることが少なくなってきていると思います。
これは生物としてあまり起こりえないことだと思っていて、
現代に生きている私たちはとても幸運だと感じています。
このように自分の子供を残すことに不安のない時代になってきているからこそ
(もちろん自分の安心を確保することは大事なので、極端過ぎてはいけませんが)
墨家のような考え方を社会にもう一度少しづつ取り入れてみようとしても
いいかもしれません。
手始めにこのコロナ騒ぎで困っている人達をどうやったら少しでも助けになるかなどを
考えてみませんか。
例えば売り上げが下がって潰れそうなお店や団体にお金を使うだけでもいいと思います。

なんかガラにもなく聖人チックなことを書いてしまいましたが、「家族愛が自分という存在を残すことにつながる」「みんなを大事にするという考え方は残りにくいが、これからの社会で重視されそう」の二点でした。





※関連ワード : SDGs、進化心理学 利他行動
※筆者は哲学、心理学を勉強中のレベルで専門家テではありません。何か気になる点がありましたらご指摘ください。


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