「馬鹿になれ」 馬鹿になれ とことん馬鹿になれ 恥をかけ とことん恥をかけ かいてかいて恥かいて 裸になったら 見えてくる 本当の自分が 見えてくる 本当の自分も 笑ってた…… そのくらい 馬鹿になれ *** 「道」 この道を行けば どうなるものか 危ぶむなかれ 危ぶめば道はなし 踏み出せば その一足が道となり その一足が道となる 迷わず行けよ 行けば分かるさ *** 「謝」 運は 勇気の無い者には めぐってこない
聡子の目にはまだ放恣な火の名残があったが、髪は一筋の乱れもなく整えられていた。 本多が黙っているので、聡子はやがてうつむいて声をかげらせた。 「でも本多さんは私のことを、さぞふしだらな女だと思召すでしょうね。」 「そんなことをおっしゃってはいけません。」 と本多は思わず強い語調で遮った。そう言う聡子の言葉が、そんな蔑むような意味はなくとも、たまたま本多の心に浮かんでいた情景を見事に射当てていたからである。 本多は夜を徹した送り迎えの役目を忠実に果たし、鎌倉へ着いて清顕
トスカーナの自然と主人公の美しさに見とれた。 大きなぶどう畑があって、石造りの家があって、敷地の奥の方にあるお洒落な石版のあるプールで泳いで、広いテラスでたくさんの人と食事をする様子だけ見ても、こちらまで息抜きさせてもらえた。 主人公が同年代の他の子とは少し違っていて、内向的で、詩を書いたりしている所も素敵だと感じた。 田舎には作家・詩人・彫刻家もいて、彼らと主人公が心を通わせる流れが、本当に自然に描かれていた。 若者の気持ちと気持ちが交わる高ぶりを描く一方で、老いて
「土地が狭いから困るだろう。」 「もうみんな知ってるわよ。」 「そりゃいかんね。」 「そうね。ちょっと悪い評判が立てば、狭い土地はおしまいね。」と言ったが、直ぐ顔を上げて微笑むと、 「ううん、いいのよ。私達はどこへ行ったって働けるから。」 その素直な実感の籠った調子は、親譲りの財産で徒食する島村にはひどく意外だった。 「ほんとうよ。どこで稼ぐのもおんなじよ。くよくよすることない。」 なにげない口振りなのだが、島村は女の響きを聞いた。 「それでいいのよ。ほん
もっともあたし達だって自分たちの商売が良いもんだとは思ってないし、 店じまいする分には何の苦情もありませんけどねっ。 だいたい今までが間違っていたのよぉ。 そうでしょ。 うちの中でも世間でもみんなこうしたまえもうしたまえをちぎって食べたような堅苦しい顔をしている。 ところが生身の人間はそんなことでは収まらないから 男の人は時たま私たちのところに来て憂さを晴らす。 でも女は台所や子供たちに縛りつけられてるもんだから、 何にも憂さを晴らすことがないんで、だんだんヒステ
金銭もまたシンボルにすぎん。 物質的価値なんてものは全然ない。 君自身はだよ、金自体のために金をほしがってるつもりかもしらんが、 それはウソさ。 ただそれがもたらしてくれる精神的満足感のために求めているにすぎん。 だから、それが失望に終われば、その価値もまた消えたことに気がつく。 ある男のこれは話だが、実にあわれな話がある。 その男ってのはな、たえず不満で落着きがなく、奴隷のように汗水流して働いたってんだ。 そしてとうとう大した産をなした。 大いに幸福だったな
静かな喜びをもって妻子を慈しみ、 己の部族に対しても己の生に対してもただ控えめに働く、 そういう野蛮人の方が人類愛に興奮する人々よりも 一層真実な人間だと思う。 人類愛などと言っても、 単なる名に過ぎない人類の影に有頂天になっているのであり、 そういう愛に生きる人は現実の人ではなくて 教養ある影なのである。
われわれは敵よりかなりいろいろな長所をもっているが、 いずれも借りものの長所ばかりで、われわれみずからのものは一つもない。 強い腕やすねをもつことは人足の特質であって徳のなかには数えられない。 またすばしこさにしたって、命のない・肉体的な・特質である。 敵をつまずかせたり日の光でかれらの目をくらませたりするのは、 これは運命の働きである。 剣術にたけているということも、それはただの技術であり曲芸であって、 いくじなしの・とるにたらない・人間にさえ、ひょっとすると見いだ
世間の人はまちがえている。 はじっこを歩くことはやさしいのだ。 へりはささえともなれば手びきともなる。 かえって大きな広い道のまんなかをゆくほうがむずかしいのである。 また学術にしたがってゆくのは自然に従ってゆくのよりやさしいが、 それだけ尊くもなく賞賛にも値しないのである。 偉大な霊魂をもった人とは、高くあがり前に進む人のことではなくて、 むしろ自分を整え自分を制する人のことである。 そういう人物は、すべて相当な程度のものを偉大とし、 みずからの高さを、高尚なも
美しい音楽 美しい風景 美しい衣装 美しい少年 美しい思い出 美しい死 物語を見ながら、自分の過去の思い出に浸りました。 もっと年を重ねて観た時には涙が止まらなくなるでしょう。 素晴らしい映画に出会えたことに感謝。
「これから長生きすりゃ、運も変わりますからね。この十五年ってもの、おれは悪運にとりつかれてきた。でも、いつか風向きが変わって幸運をつかめば、金持ちになれるんです」 ニヤッと笑って、「俺は腕のいいギャンブラーなんだ。金持ちになったら存分に楽しみますよ」 「どんなゲームをしても、ツキが無いのかい?」 「何をやってもね。それから、女にも」 またニヤッと笑って汚れた歯を覗かせた。 「本当かい」 「本当でさ」 「で、どんな対策があるんだ?」 「つづけるんですよ、のんびりと
男たちの中にはいつまでも子供のままでいる者がいる。 ときには生涯子供のままでいる者もいる。 五十になっても容姿は子供っぽいまま。 偉大なるアメリカの子供おとな。 いや、変わった連中だよ。彼らは。 だが、マカンバーという男に、 彼はいま、好感を抱きはじめていた。 とにかく、変わったやつだ、この男は。 たぶん、この先、もう妻を寝とられることもないだろう。 まあ、それは何よりのことにちがいない。 何よりのことだ。 あいつはたぶん、物心ついて以来、ずっと何かを恐
あることはみんな天の書に記されて、 人の所業を書き入れる筆もくたびれて、 さだめは太初からすっかりさだまっているのに、 何になるかよ、悲しんだとてつとめたとて! *** 一滴の水だったものは海に注ぐ。 一握の塵だったものは土にかえる。 この世に来てまた立ち去るお前の姿は 一匹の蠅 風とともに来て風とともに去る。 *** 愛しい友よ、いつかまた相会うことがあってくれ、 酌み交わす酒にはおれを偲んでくれ。 おれのいた座にもし盃がめぐって来たら、 地に
ぼくは自分自身に誓った、 もしもいつかぼくの住む帝国の支配から逃れることができたなら、 もしもいつかバルト海からこのウナギがなんとか抜け出すことができたなら、 なにはさておき、 まずヴェネツィアへ赴き、 ボートが通る度に波しぶきが窓にかかるような館の一階に部屋を借りて、 しめった石の床でたばこを揉み消し揉み消し、 書くのは哀歌二、三篇。 咳をし、酒を飲む。 そしていよいよ軍資金が残り少なくなってきたら、 汽車には乗らず、 代わりに小さなブラウニング式ピス
美しく、気が強く、商才があるが、恋愛には不器用な女性が 周りの人と助け合いながら、南北戦争の困難を生き抜く。 物語の最後でようやく自分の気持ちに気付くが、時既に遅し。 愛している人には駆け引きせず、空気も読まず、自分の気持ちを素直に伝えること。 でも、彼女には「故郷の赤土がある。」 タラに帰った後には、厳しくも明るい未来が待っているはず。 豪華なドレスもとても印象的だった。
アヌーク・エーメの顔が好き。