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北欧旅の話②〜サウナ、蚊、トナカイとの遭遇〜

旅の話を続ける前に、今回私が歩いたクングスレーデンというロングトレイルの全体像をお伝えしておきます。
簡単な地図がこちらです。

この道のりを私は南から北へ向かって歩きました。
家のマークが山小屋で、15-20km程度の一定区間ごとに配置されていますが、見ての通りしばらく小屋のないエリアもあります。
そのほとんどがSTFというスウェーデンの観光協会的なものが運営する小屋ですが、それ以外の個人経営の宿泊施設もいくつかありました。
キッチンはどの小屋にもあって、売店やサウナは小屋によっては無いところもあります。
よっぽどの悪天候なら小屋に泊まることも視野に入れつつ、心意気としては(節約ためにも)私は山小屋には泊まらずにテント泊のみで行くつもりでいました。

所々、トレイルが途切れている箇所がありますが、そこはボートで湖を渡ったり、バスに乗ったりします。

ざっとこんな感じでしょうか。

あと、私には「ロングトレイル中にやりたいこと」がいくつかありました。
目標というほど堅いものではなく、やれたらいいな〜と思っていたこと。

  • ブルーベリーを摘んで食べる

  • キノコを収穫して食べる

  • トナカイを見る

  • ヘラジカを見る

  • かっこいい角を拾う

  • サウナに入る

  • 友達をつくる


この7つです。
「友達をつくる」が一番ハードルが高いんじゃないかと思っていましたが、幸運にも行きの寝台列車ですでに達成したと言ってもいいでしょう。


さて、今回はHemavanからAmmarnasまでのことを書きます。よろしくどうぞ。

ノートに書いたトレイルの概要メモ




気温はおそらく22度くらい。暑くも寒くもない、適温。
天気は雲の割合が9割くらいではあるが隙間から青空も見える。


最高の条件でロングトレイルをスタートできたことに感謝しつつ歩いていると、前から大きなザックを担いだ二人組のおじさんが歩いてきたので「ハロー!」と挨拶をした。
するとおじさんたちは「ヘイ!」と言った。

そうだったそうだった。
現地語では「ヘイ」が「こんにちは」的な意味で、登山中にすれ違うときによく言われる言葉だ。これは事前にクングスレーデンについて調べた時に見た、誰かのブログに書かれていたんだった。

「ヘイ!」と言い直し、「どこから歩いて来たの?」と聞いてみる。

「Abiskoから来たよ!」

なんと、私が目指すゴールとなる場所から来たのだと言う。
つまりすでに450km弱を歩いてきてゴール目前のウィニングランといったところか。
すごいな〜いいな〜
今日が25日目らしい。
50代くらいであろうおじさんが2人ともニッコニコで微笑ましい。
「どうだった?」という私の簡単な質問にいろいろ話してくれたが、英語がほとんど聞き取れなかった。
マッディーと言ってたので泥んこの道があったんだろうなーと思った。

「もう少しですね!おめでとう!気をつけて」
といって2人と別れた。

その後も何人かとすれ違ったが、どうやら犬を連れている人が多い。
日本だったら国立公園内は基本的に犬を連れて入っちゃいけないのでこの光景は珍しいが、こっちではよくあることなんだろう。山小屋のウェブサイトを見ても犬連れ用の料金プランが記載されている。
たまに犬も犬用リュクッサックみたいなものに荷物を詰めて持たされており、「何を持たせているんだろう」と純粋な疑問を抱いたが、なんとなく聞いたりはしなかった。

雄大な山に囲まれた大きな川沿いをずっと歩いていく。
途中に川のそばの広く平らな場所にテントが2張ほどあるのが見えた。

いいね〜
こうやって、どこにでも、好きな場所に、好きな時間にテントを張っていいんだ。
今日の私のキャンプ地も最高な場所にしたいな。
とってもワクワクする。

2時間ほど歩くと、遠くの方に小屋が見えてきた。

ひとつめの山小屋だ!

山小屋のそばでテントを張るとテント場利用料として4000円ほどかかるが、小屋内のキッチンは使わせてくれるし、サウナが備わっている小屋ではサウナも利用させてもらえる。
ただ、今日は天気もいいしまだ時間もあるのでもう少し先まで歩きたい気分だ。

スタッフらしき女性に「ヘイ!」と話しかけられ、
「泊まるの?」
と聞かれた。
「いいえ、もう少し先でキャンプする」と伝えると、私のケータイの画面の地図を指さして
「この辺りが最高の場所だよ!トイレもあるよ!」と教えてくれた。

なんと親切な、、

「本当!?そこにいくよ!ありがとう!」と言い、感謝の固い握手を交わした。

しばらく歩くと、ザックのボトルホルダーに入れているペットボトルの水があと少ししかないことに気づいた。
よしきた。クングスレーデン、初めての水分調達だ。

前情報によると、氷河の水は綺麗なのでそのまま飲んでも大丈夫とのこと。
ここに来るまでにも何人かのハイカーが川で水を汲んでそのまま飲んでいるのを見てきた。
小さな川を発見したので登山道から少し上流の方で水をくむ。
一応、ペットボトルを空に掲げ、透かしてみて変なものが混ざってないかを目視で確認する。
綺麗な水っぽいので飲んでみた。
うまい!
冷たくて変な味もしない、うまい!


綺麗な水に感動しつつ歩いていると、あっという間に目的地のあたりに着いた。
なるほど、こりゃ最高だわ。

川沿いに広大に広がる平らな地形、360度の絶景。

すでに5張ほどのテントがあったが、かなり離れた場所に張ってあり、あくまでもそれぞれがプライベートな空間を楽しんでいる。

私はどこにしようか、と考えながら、ここか?いや、あっちの方がいいか?と、周りを少しうろうろして、良さげなポイントがあったのでそこにザックをおろし、テントを張った。


こんな最高のロケーションが記念すべき初日のキャンプ地であることがもう幸せこの上ない。

ここぞという時に飲むために、私はドリップバックのコーヒーを日本から5つだけ持ってきていたのだが、早速それを淹れた。
コーヒーを飲みながらぼーっと景色を眺める。

月並みな感想だけど「本当に来てよかった」と心から思った。

いつか行きたいな〜だけで済ませず、航空券を取って、たくさんの調べ物をして、装備などたくさんの準備をした過去の自分に「ナイスだ!!」と伝えたい。
地域のサッカークラブの熱血コーチが小学生を褒めるかのように。
少し離れたところから大声で。
「ナイスだ!!!!」と。


私はこの旅に1冊だけ文庫本を持ってきていた。
伊坂幸太郎の「ラッシュライフ」という本。
お気に入りだったからというわけではなく、私は伊坂幸太郎が好きで、彼の作品を全網羅しようと順番にコツコツと読み進めていたところ、次がこの「ラッシュライフ」だっただけで特にこだわりはなかった。

さっそく本を開いたが、内容が全く頭に入ってこない。
伊坂幸太郎の作品はいつもワクワクして読むのが止まらなくなるのに。
そうか、私は、今はこの環境だけで十分なのだ。
きっと、この旅が後半に差しかかり、慣れてきた時にこの本の出番が来るのだろう、とゆっくり本をしまい、寝転がってただぼーっと景色を見ていた。


この時期はちょうど白夜のピークすぎごろだったので、夜になってもずっと明るかった。ど深夜でも夕方のような感じ。
流石に眩しくて寝ずらかったのでアイマスクの要領で手拭いで目を覆って寝た。


翌朝、朝食を済ませ、テントを手早く撤収し、7:00ごろ歩き始めた。
この時驚いたのが、みんなの行動開始の遅さである。
日本の山では「早出早着」という言葉があるくらい、早くに出発して、早く目的地に到着するようにスケジュールを組むことが鉄則だ。
これは仮に事故や怪我、悪天候に見舞われても日没までになんとかできるようにするため、という理由がある。

それが、ここでは私が出発するときに誰も起きてすらないのだ。なんなら今日はゆっくりしちゃお〜と思っての7時出発なのに。
日本の山では4時や5時にテント場を出発することもざらにある。

そっか、もっと自由でいいんだ。
夜に歩いて昼間寝てもいいんだ。
だってずっと明るいんだから。
もちろん、この時期は夜も明るいということを周知の上来たのだが、実際に目の当たりにして、日没を気にしなくていいことが山を歩くことにおいてこんなにも気が楽になるのかと衝撃を受けた。

私も時間にや予定にとらわれずに気の赴くままに歩こうと思った。


この日はふたつ先の山小屋でテント泊をする予定だった。

途中で通った山小屋のおじさんと少しお話しした。
トナカイのツノがたくさん飾ってあったので、
「私もトナカイを見たいし、ツノが欲しいです。まだトナカイにあってません。」
と伝えた。

そう、私はまだ目標のひとつでもあるトナカイに会ってないのだった。
めちゃくちゃ居そうなのに、どこにも居なかった。どこかにいないかな〜と、遠くを見渡したりしたけど、見当たらなかった。
そう言う私に対して、おじいさんは「たくさんいるからきっと会えるよ!」というようなことを言ったと思う。たぶん。
スウェーデンの人たちは英語もはなせるけれど、多少訛りがあるからか、聞き取りにくいこともある。


飾ってあったトナカイの角

次の小屋まで歩く予定だということを伝えると、「7つの橋を渡るよ」と教えてくれた。
え!7つも!?
地図上では大きな橋を3つほど確認していたが、実際はもっとあるんだ。
俄然楽しみになってきた。

先を歩いて行くと、おじさんの言った通りたくさんの橋を渡った。
今まで自分で自覚したことはなかったが、私はかなり橋が好きみたいだ。
橋の大きさや形状、使われている資材もさまざまでとてもわくわくする。
あとでカメラフォルダを見返すと橋の写真がたくさんあった。

こんな橋をたくさん渡った


小雨が降ったり止んだりの天気が続く。
ここで大活躍したのが傘だ。
アウトドア用の軽量かつ丈夫な傘を持ってきてした。さらに傘の持ち手をバックパックのショルダー部分に固定できる便利アイテムを持っていたので、それを使い、ハンズフリーでトレッキングポールをつきながら歩いていく。
すると、前から上下のレインウェアを着た2人組の女性が歩いてきた。
「ヘイ!」と挨拶をすると、私の装いを見て
「それ、めちゃめちゃスマートだね!いいなー!」
と、褒められた。

風の強くない、降ったり止んだりする天気では、ずっとレインウェアを着ていても蒸れるし、着ないと衣服や体が濡れてしまうので、厄介なのである。
傘があることによってわざわざレインウェアを脱いだり着たりしなくても良いので、とても便利だった。

次は、道端で休憩している、おばあさんと青年に会った。
おばあさんが草むらに手を突っ込み何かを拾ってビニール袋に入れようとしていたので、
「それはなんですか?」と聞いたら、
「きのこだよ」
「へえ!食べれるの?」
「うん」
「なんていう名前のきのこ?」
「キャンタレラ」

これだ!
事前リサーチで以前クングスレーデンを歩いた日本人が収穫して食べていたキノコと同じやつだ!
私もこういうことがしたい!
山に生えてるきのこには詳しくないので1人でも選別できるように写真を撮らせてもらった。
これと同じものを見つけたら私も収穫しよう、そして今晩の夕食に食べよう。


おばあちゃんが拾ってたキノコ


その後、道中ずーっとそのきのこを探しながら歩いたが、全く見つからない。
ずっと下ばかり見て歩いていたので首が疲れた。
結局この日はキャンタレラ?を見つけることはできなかった。
悔しい。

27kmほど歩いてやっと、本日の目的地である「Tärnasjö」という山小屋に到着した。
ターナスジョ?
何と読むのかは未だに分からない。

険しい道のりではなかったけれど、2日目にして結構な距離を歩いたので少し疲れた。
予定通り山小屋でテント泊の受付を済ませ、300クローネを支払う。
テント場にささっとテントを張る。

お気に入りの我がテント


私の愛用するテントはトレッキングポールを使って立てるワンポールテントだ。
まず四隅にペグを打って、ポールを設置し、前と後ろにペグを追加して、それぞれにテンションをかけるだけ。慣れればペグの刺さりやすい場所ならものの1分で立てることができる。
軽くてコンパクトになるのも魅力的だが、なんと言っても見た目がかっこよくてとても気に入っている。

そしてここに来て、ある問題が発生する。
蚊がものすごく多い。
今まであまり気にならなかったが、ここの山小屋は森の中の湖のほとりに位置し、標高が低く、比較的あたたかい。なので蚊が多いのだろうか。
少しでも動きを止めようもんなら10匹ほどの蚊が一気にたかってきて、知らない間に足も数箇所噛まれている。
テントの出入りの際も中に蚊が入らないようにファスナーの開閉にどんなに気を使っても、1匹は入ってきてしまう。
持ってきていたハッカ油のスプレーを身体やテントにふりまくるが、あまり効果は感じられない。身体がスースーして爽快になっただけだった。

テントを立てて一息ついたら、小屋の人にタライのようなものを借りて、すぐそばにある湖で着ていた服や靴下を洗濯して干した。

この小屋にはサウナが備わっているので、クングスレーデンでやりたいことの一つでもある「サウナに入る」ができる。早々にやっちゃおう。

小屋の受付に戻って「サウナにも入れますか?」とスタッフの女性に尋ねると、「もちろん!」と予約表のようなものを取り出し、見せてくれた。
19:00の枠を指差し「この時間だと女性のみで、空いてるけど、どうする?」と聞かれた。
そんなのあるんだ、ラッキー!
「そうします!」と元気に答えた。
スウェーデンのサウナは男女Mixであることも少なくない。しかも皆全裸で入るらしい。いくら山の中とはいえ日本ではあり得ない文化でびっくりである。
もちろん気になる人は水着を着用してもいいことにはなっている。

19時の枠に私の名前が書き足された。
「時間になったらここに来て」と言われたので、それまでに夕食を食べてゆっくりしようと小屋内のキッチンスペースに向かった。
キッチンはこんな感じである。

山小屋のキッチン


水道も電気もない。
水は近くの川から自分でバケツで汲んでくるシステムだ。
今は白夜なので必要ないが、夜が暗くなる時期になると使うのであろうキャンドルがいたるところに置いてあった。

せっかくキッチンを使わせてもらうので燃料の節約のためにコンロと小鍋で湯を沸かして夕食を食べた。

サウナを予約していた時間になったので受付に集合すると、女性スタッフがサウナまで案内してくれた。

この小屋は湖のそばにあるので、サウナであったまったあとは外気浴をするもよし、湖にドボンするも良しである。
同じ時間に一緒だったのは、さっきキノコを教えてくれたおばあちゃんだった。
このおばあちゃんはとても優しくて、たくさんお話ししてくれた。クングスレーデンの南80kmほどの区間をセクションハイクするらしい。
体を洗っていると背中を流してくれたり、とても優しくしてくれた。

かなり暑くなってきたところで、私は湖に入ろうと外へ出た。
夏とはいえど冷たい!
でも気持ちいい!
頭まで浸かり、汗を流していると、おばあちゃんもゆっくりと湖にやってきた。

尋常じゃないくらい震えながら湖に入ってきたので、
ちょちょちょ、ちょっと!無理しないで!!
と思った。
しかも胸にペースメーカーらしきものが埋め込まれているであろう膨らみもあったので、
え!こんな激冷えの湖に入って大丈夫なの!!
と思った。

不謹慎ではあるが、脳内で勝手にAED作動と心臓マッサージの予習をしてしまうくらいには焦った。

おばあちゃんは震えながらも元気にサウナに戻って行った。なんともなくてよかった。

念願のサウナ、とてもリフレッシュできしたし、楽しかった。
疲れもかなりとれた気がする。

サウナから小屋に帰る道中に女性スタッフがすぐそばにあった赤い実を摘んで私に差し出し、
「これ知ってる?」
と聞いてきた。
そういや、この小屋の周辺にたくさんあるなーとは思っていたが知らなかったので
「知らない」と言うと、
「クラウドベリーといって食べれるのよ!ビタミンが豊富なの!」
と言って私の手にその実をのせた。


クラウドベリー
※サウナ直後ゆえ手が真っ赤

言われるがまま食べてみると、今まで食べたことないような味だけどまろやかに甘酸っぱい味がした。
美味しい!
ブルーベリーがたくさんあることは知っていた(ここまでの道では見当たらなかった)が、別の食べられるベリーがあることはここで初めて知った。
しかもビタミンが豊富だなんて、ビタミンが不足しがちな山歩きの食事には救世主じゃないか。
今後見かけたらたくさん食べることにした。

そのあと、その女性が食べごろの実の色や特徴も教えてくれた。


翌朝、早めに目が覚めたので7:30ごろに歩き始めた。
早く森を抜けて見晴らしのいい場所へ行きたいな〜とワクワクしながら森の中の一本道を歩いていく。

顔の周りをやけに蚊がぶんぶん飛び回っているので、持ってきていたモスキートネットを顔面に装着した。
少し立ち止まると、信じられない数の蚊が私の周りを飛び交う。
しかも、北欧の蚊は一味違う。
日本の蚊よりタフで服の上からでもお構いなしだ。おまけに痒みも強くて持続する気がする。
あと、殺されることを怯えていない。逃げるという概念がないのか、パチンと手で素早く叩かなくても、トンボを捕まえる要領で普通に手でつまめるのである。
輪廻転生を信じており、殺されても「わー!しんだー!また来世で血吸お〜♪」みたいな感じなのか?

ここの蚊ゾーンがかなり長くて地獄だった。
ずっとまとわりついてくるのでたまに走ったり、本当にもう嫌になって1人で腕をぶん回しながら「もー!」「うわー!」などと言ったりした。
手足は動かしているし、顔はモスキートネットがあるので大体防御できるのだが、肩が盲点だった。
腕を振って歩いてはいるものの、あまり動かないからやられてしまうのである。
後々見たら、肩だけ何箇所もボコボコに噛まれてしまっていた。

この日はとても天気が良くて暑いくらいだった。
通過する小屋の前で休憩がてら朝露で濡れたテントとグランドシートを乾かした。
濡れたものはずっしりと重くなるので、隙あらば何でもかんでも乾かすのだ。

しばらく歩いて、キャンプ適地を発見。
割と標高も高めの池のそばだ。
すでにひとつテントが張ってあったので、そこから見えない程度に離れた場所でキャンプすることにした。


流石にここには蚊はいないんじゃないか、という淡い期待を抱いていたが、奴らはいた。
一番温かい時期ではあるけど、こんなとこにもいるのか、、
しかし、いると言っても数匹程度で昨晩の山小屋や地獄の樹林帯よりは断然マシである。
快適だと思うことにする。

その晩、寝ていると聞きなれない物音で目が覚めた。
時計を確認すると22時ごろだった。
カラン、カラン、、
と小さな鐘の音が遠くから聞こえる。

え?なに?
登山客?熊鈴?
日本じゃあるまいし、、

とぼやぼやした頭で考えながら寝ぼけ眼でテントのファスナーを開けてみると、早朝のような妙な明るさの中、池の向こう側にうごめく物体が、四足歩行の群れが、、トナカイがたくさんいた。


寝ぼけながら見たトナカイ
※22時ごろ


状況もあり、夢か?と思ったけど、確かにトナカイだ。
草を食べている。食事中か。
サーミ人という原住民が放牧しているからリーダー的ポジションのトナカイの首に鐘のようなものが付けられており、歩く度にそれが「カランカラン」と音を立てていた。
放牧と言っているから放牧の主がどこかにいるのでは?とよく見たけれど、超放し飼いなのか、どこにもサーミ人らしき人は見当たらなかった。

私はトナカイを見ることができてとても嬉しかった。
テントの隙間から写真や動画を撮ったりしながらずっと見てた。
しばらくすると、トナカイたちは池をぐるっと回って私のテントのすぐそばまで来た。
とても近くで見ることができた。
まだ角の生えていない子どものトナカイから、立派なでかいツノを持っているトナカイまで、たくさんいた。

一時間ほど寝転がりながら観察していたがキリがないので、テントのファスナーを閉め、再び眠りについた。

翌朝、起床。
さて、今日はトナカイのツノ探しだ!

だって昨日あんなにいたんだから、ツノの1本や2本どこかにあるはずだ!と、テントを撤収し、ザックを置いたままキャンプ地周辺を探す。
ない。
どこにもない。
池の周りの湿地帯にも突入したので靴も濡れてしまった。くそう。
そう簡単には行かないか。
あんまり時間を食っても仕方がないのでザックを背負い次の目的地に向けて出発した。

なにはともあれクングスレーデンでやりたかったことのひとつである「トナカイを見る」を達成できてとっても嬉しい。
動物関連で言うと、あとはヘラジカも見たい、トナカイよりももっと見たい気持ちが強い。
ヘラジカというのは日本には生息していない動物で、魅力はなんと言ってもそのデカさ、と角のかっこよさ。
お皿のような、面の広いツノである。
軽トラくらい大きいらしい。
見たい。なんならツノも欲しい。どんなに重くても頑張って持ってく。

ツノに思いを馳せながら歩いていると、このエリアはトナカイが多いのか、次の目的地までに3回トナカイの群れに遭遇した。
トナカイの群れがトレイルを横切っていくので、それを待っている時間もあった。


トナカイ待ちの時間


流石にツノがあるのでは!と思って、天気も良く、時間にも余裕があるので、本日2回目のツノ探しタイムスタート。

トレイルをかなり外れて夢中になって探す。
さっきまでトナカイがいたところをうろうろ。
20分ほど経った頃、15mほど先に白いものが見えたので、「ツノだ!」と思って駆け寄ると、”骨”だった。




骨かい。
骨は、いいか。


骨も見つけたことだし、そろそろ切り上げるか、と、またトレイルに復帰して歩き始めた。

しばらくするとAmmarnasと言う小さな街に着いた。
まだ3日目だけどかなり久しぶりに街に降りてきた感覚になり、安心する。
ここにはスーパーがあるので食料を補給する。

りんご、うっすいパン、サラミなどを追加購入。
また3日後くらいにもう一度スーパーを通るので、あくまでも少しだけ。
ちょうど昼時だったので、スーパーの横にあったベンチとテーブルで昼ごはんを食べた。

このうっすいパンが嵩張らなくて便利なのでよく購入していた。
しかも美味しい。
サラミやハムをのせてチューブタイプのチーズペーストをつけて食べていた。

モバイルバッテリーでケータイを充電しつつしばらくベンチで休憩していると、スーパーから出てきた子供連れのおじさんが、「ここにコンセントがあるよ」と教えてくれた。
スーパーの外壁にある小箱のようなものの蓋をパカっと開けながら「ほら、ここに」と。
なんとお優しい。
充電できるポイントはある程度リサーチしていたが、こんなところでできるなんて思ってなかったのでラッキーである。

充電できることだし、満タンになるまで休憩するか、と、もう一度スーパーに入ってアイスクリームを買ってきた。
ついでに濡れたテントとグランドシートも乾かすために道端に広げる。
アイスクリームを頬張りながら、まだ3日目か〜としみじみ思う。
3日目にしては、トラブルもなくやりたかったことが結構できて幸先がいい。

まだ見ぬこの先の道のりが楽しみで仕方がない。



次につづく


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