本を貰う 言葉を受ける

本を貰った。


二年前
自分のクラス
一人でいることが多い転校生の男の子

いつも本を読んでいて
少し強くいじられていたりしたけれど
賢くて自己を持っているから
嫌われてはいなかった

たまたま隣で友達と話していた日
彼は太宰治の人間失格を読んでいた

わたしは文豪ストレイドッグスが好きで
彼が読んでいたのは
角川のキャラクターカバーver.だった

「あ、文ストカバーの読んでるじゃん!いいね」
と口に出すと
「あげる」
と返された
「僕は二冊持っているから」
ということらしい

初めて友達に本を貰った
そこまで仲良くなかったのに
その優しさが嬉しくて
心が嬉しくて
なんとなく恥ずかしかった


ミスiDが終わったあと
小林さんとカフェで話をした

なんで選ばれたのかとか
今後どうしていくかとか
思ったよりわたしを知っていて
凄いなあと思った

帰り道
新宿の紀伊國屋書店に寄った
「読んで欲しい本があるから」
ということだった

受け取ったその本を
私は帰りの電車で
のめり込むように読んだ
窓の雨粒が
大切なそれを濡らすのを苦しく思った

何週間か経ち
期末テストが終わったあと
保健室で読み終えた

わたしらしい物語だった
ミスiDで見せたわたしという像と
合致するような
そんな本だと思った


何故 こんなことを思い出したかと言えば
『人間失格』をくれた彼と
『蛇行する川のほとりで』をくれた小林さんが
どこが似ていたからで

そして
意識せずとも
その二冊を同じ日に読み終えたからだった


人から本を貰うのは嬉しい

何故かはわからないけれど
言葉を交換して
気持ちを共有したような
そんな感覚に、勝手になる

言葉を 受けとる

物理的になると
こんなに尊いものなのかと
実感した


そんなお話。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?