二部構成で書いてみた|青木野枝「霧と鉄と山と」 in 府中市美術館
|第一部 いい美術館って|
いい美術館って?
・人気がある
・全世代が満足しちゃう
・展示クオリティが高い
・外観がかっこいい
・街になじんでる
・入館料が安い
・エトセトラ
たとえば金沢21世紀美術館。
地元民だけじゃなく多くの観光客で賑わい、「成功した美術館」として有名だ。たぶん5回くらい行っているのだけれど、行くたびにお客さんの数が増えていてびびる(すごいなと思う)。
今年2月におじゃました府中市美術館は、金沢21世紀美術館とはちがった意味で「いい美術館」だった。
最寄りのバス停から美術館へ向かうと、子ども連れが入り口へと向かっていく。
おや?
ちいさな子ども。その親。学生。大人のひとり客。お年寄り。館内に入ると、いろんな年齢層の人が集い、心地よくザワザワしていた。
美術館という空間で、(おそらく)地元の人たちがリラックスしている。
これ、すごくないですか?
私は、すごいなと思いました。
いい意味でもわるい意味でも、ほどよく緊張しちゃうのが美術館。
ちょっとした非日常感を楽しむ役割も確かにある。だから地元の人にとって「無関係」な場所に陥りやすいのも美術館。
府中市美術館は、地元の人とちゃんと「関係」しているように感じた。
企画展とは別に、府中の小中学生による展示やアーティストの公開制作が行われ、併設されたレトロな喫茶店もワイワイ賑わっていた。
決しておおきいとは言えない美術館が、きっと運営している方たちの努力もあり、憩いの場になっている。
はじめておじゃましたのであくまで一回だけの印象だけど、空気がやさしかった。都心の気取った美術館も好きではあるけれど(笑)。
|第二部 いい展覧会って|
いい展覧会って?
自分のなかではハッキリしている。それは、心が動くこと。すごい。かっこいい。かわいい。こわい。きもちわるい。そんな風に。
青木野枝さんの『霧と鉄と山と』展は、きもちよかった。
作品数は決して多くない。8点の彫刻と、数点のドローイング。一つひとつをのんびり観ても疲れない。ありがたい。
ででんッと置かれた彫刻たち。山のなかで生まれたよう。この美術館と同じように、まとっている空気がやさしい。呼吸するように観ていく。良い感覚が自身のなかに取り込まれていく。
ドローイングは、オタク用語で言う「尊い」だった。美しすぎる。存在が罪。青木野枝さんの裸の感性を見せてもらっているようで、震えた。
私はドローイングを観るのが好き。
「こんなものをかたちにしたいなぁ」っていうフワフワとした気持ちの切れ端を観ているようで、面白い。
ここでも見つけてしまった。スケッチブックの端に「私がつくりたいものは?」、そして「万年筆ほしい」といった走り書き。
作家の葛藤とふとしたつぶやきの同居。ものをつくる人の眼差しに、入り込む。
美術館を出ると、空を見上げていた。
5℃くらいの、とてもとても寒い日だった。澄んだ空気のためか、青がきれいだった。絵の具で出せないくらい、きれいな青だった。
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いい美術館って。
いい展覧会って。
こんな気持ちにさせてくれるんだね。
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青木野枝『霧と鉄と山と』展
府中市美術館
2019年12月14日~2020年3月1日【終了】
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