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秋山の木の葉を見ては黄葉をば取りてそしのふ#70

冬ごもり 春さり来れば 鳴かざりし 鳥も来 鳴きぬ
咲かざりし 花も咲けれど 山を茂み 入りても取らず 草深み 取りても見ず 秋山の 木の葉を見ては 黄葉をば 取りてそ しのふ 青きをば 置きてそ嘆く そこし恨めし 秋山われは

万葉集 巻1、16 額田王

休職10日目。

休み始めてから天気の良い日は3,40分のウォーキングに出ています。
そのため、ところどころの紅葉が深さを増してきたなと日に日に感じます。
特に今朝はぐっと冷え込んだので、赤も黄も昨日より濃くなったようです。

今日は、歩きながら万葉集に残る額田王の春秋競憐歌(冒頭引用)を思い浮かべててくてくしていました。

春を褒めて、突き放し、秋を褒めて、また突き放し、でも結局は「秋の山がいいと思う」と結ぶ、面白い歌です。万葉集の中でも特に好きな歌の一首。


文化や政治の背景はさておき、こうやって季節を並べて感じて、どちらがいいか、なんて考える遊びを普通にできたことが羨ましいなと思う一方、

春には花見をしたくなるし、秋には紅葉を見に行きたくなる人の多いこの国では、まだまだ万葉の頃の感覚が廃れてはいないのかなと考えてちょっとニマニマしてしまいます。


思えば、すごくいい時期に休職できたなと思います。
雪国住まいなので、今月末からはもう冬に備えなければならない頃。
雪が降る前にたいてい嵐になるというか、天候が荒れる日が2,3日続き、それから先は晴れた日はとても少なくなります。

こんなふうに外を歩いて季節に思いを馳せることも出来なかっただろうし、もちろん日光も浴びられなかっただろうし。
休んで快復していってるなぁなんて、とても感じられなかったかも。


ところで私も(?)、春より秋がいいと思います。
光が赤くて、なんだか落ち着きますね。

明日もてくてくして秋を堪能してこよう。



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