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青山美智子さんの作品に出てくる「スウィーツ」を“お探し”してみた

椎葉村図書館「ぶん文Bun」のクリエイティブ司書・小宮山剛です。

今回の記事では作家・青山美智子さんの作品をすべて再読したうえで、作中に出てくる「スウィーツ」の記述を追いかけてみました。『お探し物は図書室まで』の「呉宮堂のハニードーム」がその代表格ですが、探してみるともっとたくさんの美味しそうなスウィーツが・・・!?

🍯青山美智子さんの作品発! オリジナル「ハニースウィーツ」レシピの募集

今回この記事を書いているのは、クリエイティブ司書が勤務している椎葉村図書館「ぶん文Bun」にて「青山美智子さんの作品発! オリジナル「ハニースウィーツ」レシピの募集」というイベントを開催するからです。

テーマは「青山美智子さんの作品に出てくる(出てきそうな)ハニースウィーツ」!作中に登場するいろんなスウィーツ+ハニー(はちみつ)を考えてみたら、ただでさえ優しい青山美智子さんの作品がもっとやさしくうるおいのある世界になるんじゃないか・・・と想像しています!

先に書いた通り、青山美智子さん×スウィーツというと呉宮堂のハニードームを思い浮かべるのですが、他にも美味しそうなスウィーツがでてきたよな・・・。全部探しちゃおうかな・・・。と、そんな気になり自宅の青山美智子さんコーナーの本を再読しています。

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さてこの記事を書いている2月26日の二日後は(結局作品をイチからしっかり読み込んでしまい、書き終わるまでに三日かかりました・・・笑)さてこの記事をアップする2月28日は、青山美智子さんもノミネートされている「本屋大賞」の二次投票締め切り日!そしてさらに、2月27日からは『お探し物は図書室まで』のラジオドラマが始まりました!絶対毎週聴きます!!

連日話題に事欠かない大人気作家さんの青山美智子さん。5月28日の椎葉村ご来村まで、お忙しいなかでもお健やかにお過ごしいただければな・・・と願っています。

そんなわけで、青山美智子さんの作品に出てくる「スウィーツ」探し。いってみましょう!!

🍯お探し物は図書室まで(ポプラ社)

青山美智子さんの作品で「スウィーツ」と言って最初に思い浮かべるのは、やっぱり小町さんが大好きな「呉宮堂のハニードーム」でしょう。今回椎葉村で開催する青山さんとのイベントも「ハニードームをつくろう!」にしても良いかな・・・?と当初思っていたのですが「ハニースウィーツをつくろう!」のほうが、より広く小説世界を楽しんでいただけるような気がしています。

では、さっそく『お探し物は図書室まで』を読んでいきましょう。

・呉宮堂のハニードーム

小町さんはすぐそばにあった濃いオレンジ色の小箱を引き寄せた。六角形の飾り枠と白い花が描かれたパッケージは、ハニードームというお菓子の箱だ。洋菓子メーカー呉宮堂のロングセラーで、私も大好きなドーム型のソフトクッキー。そんなに高級品じゃないけどコンビニでひょいと買えるものでもなく、ほんのちょっとの贅沢という感じがまたいい。

『お探し物は図書室まで』、p.23

「美味しいですよね、ハニードーム」
すると小町さんは、突然頬を赤く染め、歓喜の表情を見せた。
「これ大好きなの。いいよねえ。みんなが幸せになれるお菓子って」
私は大きく大きく、うなずいた。

『お探し物は図書室まで』、p.56

・・・(前略)小町さんはハニードームの箱に人差し指をあてる。
箱の蓋には、白い花が描かれている。そうなのか、これ、アカシアだったんだ。昔からよく目にするパッケージだったけど、花の名前まで意識したことがなかった。
「ハニードームの蜂蜜は、アカシアなんだよね」

『お探し物は図書室まで』、p.78

すぐ脇に、ダークオレンジの箱がある。老舗の洋菓子メーカー、呉宮堂のハニードームのパッケージだ。半球形のソフトクッキーで、中にじゅわっとハチミツがしみていて美味しい。年齢を問わず広く人気商品なので、作家さんへの差し入れにすることもあった。司書さんも好きなのかなと思ったら、急に親近感がわいた。

『お探し物は図書室まで』、p.135

小町さんは手元にあったオレンジ色の箱をひらいた。呉宮堂という洋菓子メーカーの、六角形の模様と白い花が描かれたそのパッケージは、誰でも知ってるハニードーム。親戚の集まりなんかでよく目にするやわらかいクッキーだ。昔、ばあちゃんが「食べやすくておいしいんだよ」と絶賛していたっけ。

『お探し物は図書室まで』、p.193

「呉宮堂のハニードーム。実はわたし、去年までそこに勤めてたんです」
すると小町さんは突然、細い目をカッと開き、フゴォーッと音をさせながら息を吸った。そして何かに憑依されたかのような笑顔になり、焦点の定まらない目で歌い出す。
♪どうどう どうどう♪(後略)・・・

『お探し物は図書室まで』、p.253

さすが『お探し物は図書室まで』の主役級とあって、たくさんの描写が出てくる「呉宮堂のハニードーム」。呉宮堂の社員だった正雄の章が大団円を取り結ぶのですが、そこでの記述はぜひ作品を読んでのおたのしみということで・・・。

それにしても、ハニードームの描写は追いかければ追いかけるほど美味しそうですね。あぁ、現実のものになったハニードームを食べてみたい・・・。

・ぐりとぐらの、黄色いカステラ

上着のポケットに手を入れたら、やわらかなものが当たる。フライパンの羊毛フェルト。小町さんにもらったまま、入れっぱなしにしていた。
そうだ、あれ、作れないかな。
ぐりとぐらの、黄色いカステラ。

『お探し物は図書室まで』、pp.45-46

朋香ちゃんの転機がおとずれる瞬間ですね。色んなサイトを開いてレシピを調べて「そうだ、今の自分にできることを今やる。それでいい」と納得するところも凄くグッときました。「絵本に忠実な」ぐりとぐらの、黄色いカステラ。果たして出来栄えは・・・?

・マシュマロマン

はちきれそうな体の上に、顎のない頭が載っている。ベージュのエプロンに、目の粗いアイボリーのカーディガン。肌も白く服も白く、「ゴーストバスターズ」に出てくるマシュマロマンみたいだ。

『お探し物は図書室まで』、p.74

「スウィーツ」ではなく小町さんを見た諒が抱いた印象ですが・・・。美味しそうだなと思いピックアップしました笑。

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「呉宮堂のハニードーム」と「ぐりとぐらの、黄色いカステラ」という二大スウィーツが登場する『お探し物は図書室まで』。意外と他のスウィーツは少なかったように思います。

そのほか「こんなスウィーツがあったらいいな」と思うものに、僕は「『はだしのゲロブ』の形をしたスウィーツ・・・」を思い浮かべました。ムカデだそうなので、ちょっと難しいかもしれませんが・・・笑。

椎葉村で開催する「ハニースウィーツ」のイベントでも、おそらく「ハニードームを再現しました」というレシピが多く寄せられるのではないかな・・・?と思います。

小町さんがおすすめした本だって誰もが同じ読み方をすることなんて無い。それと同じで、お一人お一人それぞれの「ハニードーム」があって、色んな種類の全然違うハニードームが出てくるのも素敵だと思います。それこそが、小説の楽しみ方というものですよね。

ぜひ、あなただけの「ハニードーム」を見せてください。青山美智子さんにも「この手があったかー!」と思ってもらえると嬉しいですね笑。

🍯木曜日にはココアを(宝島社)

・ホットココア

こちらはのっけから、というか題名がスウィーツですね。

木曜日には、とびきりおいしいココアを彼女に捧げる。それがすべてだ。

『木曜日にはココアを』(文庫版)、p.15

私は落ち込んで、あなたのココアが飲みたくて店に来たけれど、お気に入りの席は空いていませんでした。仕方なく他のテーブルにつき、しばらくぼんやり考え事をしていたら、あなたが突然、声をかけてくれたのです。

『木曜日にはココアを』(文庫版)、p.207

この物語の鍵を握るホットココア。そこにはどんな秘密が隠されているのでしょう・・・?

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粗読みではありますが、作中明確にスウィーツが出てくるのはココアだけかな・・・?と思います(他にも登場していたらぜひ教えてください)。しかしちょっと想像してみたら、他にも『木曜日にはココアを』に「出てきそうだな」というスウィーツがもくもくと浮かんでくるようです・・・。

  • 「マーブル・カフェ」にスウィーツがあったら?

  • 優がつくる緑のスウィーツがあったら?

  • Ralph's Kitchenのスウィーツ・メニューがあったら?

  • 「魔女」グレイスさんがスウィーツをつくったら?

  • 「一人前の魔女」になったシンディがつくる魔法のスウィーツ・・・?

・・・などなど、物語を読みこむと楽しい予感がむくむく湧いてくる気がします!ぜひ『木曜日にはココアを』を読んで、あなただけのスウィーツレシピを考えてみてくださいね。

🍯月曜日の抹茶カフェ(宝島社)

こちらは『木曜日にはココアを』の続編です!「抹茶」というとけっこうスウィーツのイメージが強いですが、果たしてどうでしょうか・・・?作品を読んでいくと、お抹茶にあわせる和菓子がたくさん出てくるように思います。

・寒牡丹

寒牡丹と名付けられた和菓子は、きれいなピンク色の練り切りだった。フリルみたいなひだの中央に、黄色いおしべがのぞいている。
「いいねぇ。厳しい寒さをこらえながら、力強くつぼみを開かせようとしているのが実にいい」

『月曜日の抹茶カフェ』、p.15

「抹茶カフェ」と聞いて抹茶ラテやプリン・アイスを想像していた美保が出会う寒牡丹。大事な大事な出会いでしたね。

・雪うさぎ

若旦那は一度カウンターに行き、和菓子を載せた皿を運んできた。「雪うさぎです」と盆の上に置く。雪山を飛び跳ねていそうな、かわいらしい白い餅菓子。

『月曜日の抹茶カフェ』、p.22

こちらは寒牡丹に続いて若旦那が出してくれた和菓子でした。

・「どっちでもいい」ブラウニーとトリュフ

昨日、歩きながら、バレンタインデーの話になった。理沙はいつもチョコレートを手作りしてくれる。今年はブラウニーとトリュフのどちらがいいかと訊かれたので「どっちでもいいよ」と答えたら、少し沈黙ができた。

『月曜日の抹茶カフェ』、p.30

「それはあかんで!」な回答の代表のような、ひろゆきさんの回答に出てきた。「どっちでもいい」ブラウニーとトリュフ・・・。理沙とひろゆきさんのバレンタインデーはどうなったのでしょうか?

・柏餅

「明日、十時に町内会長さんが来はるから、おうす用意してな」
「はい。柏餅のお土産も、包んでおきましょうか」

『月曜日の抹茶カフェ』、p.84

橋野屋のおばあちゃんと雪乃さんとの会話に出てくるのがこちら。この柏餅は橋野屋さんの和菓子なんでしょうか?

・枇杷

私は枇杷を受け取る。みずみずしいその果肉は、口に含むと優しくて甘くて、さっぱりした酸味も感じられた。雪乃さんみたいだな、とぼんやり思う。

『月曜日の抹茶カフェ』、p.96

「スウィーツ」かと言われると「?」かもしれませんが、優しくて甘くて・・・ということでピックアップしてみました。

・水無月

私は今日、これを求めに来たのだ。
六月三十日、夏越の祓の日に食べる特別な生菓子。白いういろうの上に小豆の甘煮がのった、もっちりとしたこれは……。

『月曜日の抹茶カフェ』、p.110

・たくさんある名前のうちのひとつ

あたしは猫。名前はたくさんある。
ニンゲンはみんな、あたしのこと好き勝手に呼ぶから。タマとかシロとかニャーとか。食べ物の名前もけっこう多い。あたしの体が全身真っ白だからって、白いものばっかり。ミルクとかマシュマロとか、お餅とかね。

『月曜日の抹茶カフェ』、p.122

文月の章に登場する真っ白な猫さん。猫さん自身はスウィーツではないですが「猫さんみたいな」スウィーツがありそうだな・・・と思いピックアップしています。

・抹茶シェイク

マグボトルに抹茶と水を入れ、シャカシャカとよく振るだけの簡単な楽しみ方だ。お湯でホットにしてもいい。朝美さんは財布を取り出しながら言う。
「あれなら面倒くさがりの私でもできて、美容にもいいし最高。吉平さん、はちみつ入れてもおいしいって言ってたでしょう。・・・(後略)」

『月曜日の抹茶カフェ』、p.199

「甘い」イメージはなかった抹茶ですが、ここにきて「はちみつ」とまさかのコラボレーションです。もしかすると、スウィーツとしてのアレンジ方法があるかも・・・?

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さすが『月曜日の抹茶カフェ』。たくさんの和菓子が登場しました。アレンジのしようによっては立派なハニースウィーツになりそうなものもありますね。他にも、こんな想像をしてみました・・・。

  • ピー・バードの尋子さんは器用だし素敵なスウィーツをつくりそう

  • 橋野屋さん、福居堂にはどんなお菓子があるんだろう

  • 「月曜日の抹茶カフェ」では、他にも和菓子が出されたのだろうか

・・・などなど、和・洋の範疇にとらわれない「ハニースウィーツ」のアイディアが湧いてきそうです。ぜひ『月曜日の抹茶カフェ』を読んで、はちみつが活躍しそうなポイントがあるかどうか探してみてください!

🍯ただいま神様当番(宝島社)

愛らしい神様をめぐる物語。のっけから強烈なスウィーツが登場します。

・居酒屋の「プリンセス・パラダイス」

女子会狙いなのか、居酒屋にしてはデザートが豊富だ。手描きのメニューには、「プリンセス・パラダイス」とタイトルされた囲みの中にスイーツの写真が載っている。
白雪姫のリンゴジェラート。シンデレラのかぼちゃプリン。人魚姫のクリームソーダ。

『ただいま神様当番』、p.8

「どんな店やねん」と突っ込みたくなるようなスウィーツたちです。もはや「青山美智子さんの作品発! オリジナル『ハニースウィーツ』レシピの募集」のことを忘れて、この居酒屋のメニューを再現したいくらいです。

・ワークショップのシフォンケーキ

ワークショップが終わると、シフォンケーキとお茶がでた。
私は紅茶、白馬さんはコーヒーを飲みながら、ケーキをいただく。白馬さんは頬を好調させながら言った。

『ただいま神様当番』、pp.34-35

十三世紀のヴェネチアンガラスがルーツだという「チェコビーズ」のワークショップが終わったときにお茶菓子として出てくるシフォンケーキ。なんの変哲もない描写のようですが、どんなシフォンケーキを思い浮かべますか?

・チョコレートドーナツ

チョコレートを練りこんだ生地に、さらにチョコレートソースがかかっていて、追い打ちをかけるようにスライスナッツがトッピングされている恐怖のハイカロリー・スイーツ。

『ただいま神様当番』、p.40

これに関してはもう、単純に私が食べたいです。
お腹が、すきました・・・。

・苺サンデーと桃のムース

・・・(前略)私たちは二階にあるフルーツパーラーに移動した。美しいスイーツたちは私が普段夕ご飯にしているスーパーのお弁当よりも値が張ったけど、大好きな友達と一緒に食べるのならぜんぜん高いと思わなかった。
喜多川さんは苺サンデー、私は桃のムースを頼む。

『ただいま神様当番』、p.52

序盤に大量のスウィーツが登場する『ただいま神様当番』。読み返してみると、端々にスウィーツがあったんだと思い出されて面白いです。このフルーツパーラーでも、大切な会話が交わされましたね・・・。

・手をつけられなかったクッキー

先生は冷たい口調でそう言い、わたしも耀真くんも、目の前のクッキーに手をつけることもできずに押し黙っていた。

『ただいま神様当番』、p.104

これは胸が狭くなるような、辛い場面でした。そんな空気に似つかわしくなく出されて、手もつけられなかったクッキー・・・。どんなクッキーだったのでしょうか。

・水羊羹

麦茶を飲んでいる俺たちのところに、水羊羹が運ばれてくる。喜多川が言った。
「私、やりましょうか?」

『ただいま神様当番』、p.285

サラリと登場する水羊羹。ストーリーとはあまり関係ないようですが、この場面で「お菓子が出てくる」ということに意味があったように思います。どういう場面かは、ぜひ作品をお読みくださいね。

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思わずたくさんのスウィーツが登場した『ただいま神様当番』。やっぱり「プリンセス・パラダイス」が最大のインパクトです。

他にも、ネネさんがいるバーでもしスウィーツが登場したならどんなものかな・・・とか、気になるシチュエーションがありました。「正直に生きる」ってどんなことかを見つめなおすことができるような、素敵な作品だと思います。ぜひ読んでみてくださいね。

🍯鎌倉うずまき案内所(宝島社)

実は小宮山がとっても好きだったりするこちらの作品。どんなスウィーツが登場するのでしょうか?「うずまき模様」のアレは当然出てくるとして・・・。

・うずまきキャンディ

扉の脇に小さなチェストがあり、その上に籠が置かれている。中にはセロファンに包まれた青いうずまき模様のキャンディが積んであった。

『鎌倉うずまき案内所』(文庫版)、p.35

そう訊ねながら扉のそばに行くと、台の上に置かれた籐の籠が目に留まった。透明のセロファンに包まれた青いうずまき模様のキャンディが積んである。

『鎌倉うずまき案内所』(文庫版)、p.100

「困ったときのうずまきキャンディ」。添えられたカードにはそう書かれていた。外巻さんが仰々しく言う。

『鎌倉うずまき案内所』(文庫版)、p.149

・・・など、など。毎章登場する「うずまきキャンディ」。これもスウィーツと言っていいんでしょうか?青いらしいのでさわやかなミント味を想像しましたが「ただ砂糖みたいに甘ったるい」味、「レモンみたいな甘酸っぱい味」味、塩味、そして「水を飲んだみたい」・・・などなど様々のようです。

味が様々なら、はちみつ味があってもいいかも・・・?うずまき形のキャンディを作ったら可愛く仕上がりそうですね!

・琥珀のペンダントトップ

「ああ、あんたに合うのはね、これ」
はちみつ色をしたドロップ形のペンダントトップを私に差し出し、彼女は呪文を唱えるように言った。
「琥珀」

『鎌倉うずまき案内所』(文庫版)、p.125

スウィーツではないのですが「はちみつ」と出たからにはピックアップしてしまいます。「梢が受け取った琥珀のペンダントトップみたいなハニースウィーツ」・・・なんて、作れないでしょうか?

・かりんとう

ジェシカは子どもみたいに畳の上に寝そべって、かりんとうを食べていた。お行儀がわるい。

『鎌倉うずまき案内所』(文庫版)、p.154

ほんとうになんとなく出てきただけなのかもしれませんが・・・。かりんとうもスウィーツですね。

・ソフトクリーム

「どうして、ソフトクリームを……」
「うずまきはエネルギーって六郎が言ってたから。きっとパワーが出るよ、食べて」

『鎌倉うずまき案内所』(文庫版)、p.369

うずまきスウィーツの代表とも言えるソフトクリーム。ちなみに「一九八九年 ソフトクリームの巻」はとても好きな章です・・・。

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「うずまきキャンディ」をはじめとしたいくつかのスウィーツが登場する『鎌倉うずまき案内所』。ほかにも、こんなスウィーツが登場したら面白いな・・・と思いました。

  • 「メルティング・ポット」でスウィーツが出てくるならどんなものだろう?

  • 「所長」が何かスウィーツにならないだろうか?

  • 「甕覗」色のスウィーツがあったらすてきじゃないだろうか?

  • 「青山美智子さんの作品に登場する黒祖ロイドの作品に登場しそうなハニースウィーツ」なんて、SFチックで面白いかも?

・・・アンモナイト形のスウィーツ・・・。ちょっと僕には想像できないのですが、パッと思いつく人もいるかもしれません。「化石チョコレート」とかですね笑。読む人によって受け止め方や想像するものが違うのも、小説の醍醐味ですね。

🍯猫のお告げは樹の下で(宝島社)

猫のミクジが愛らしく活躍する不思議な小説です。みんなの悩みが痛切で、だからこそミクジとの出会いの後おとずれる展開にこころあたたまります。

・アンジェリカのレモンタルト

こだわりの西向きって、そういうことか。私は脱力しながらお土産のケーキの箱を差し出した。
「わ、アンジェリカのレモンタルト。これ好きなんだ、ありがとう」

『猫のお告げは樹の下で』(文庫版)、p.26

ばっちりとお店を指定のうえ、レモンタルトが登場しています。しかしスウィーツに疎い私には「アンジェリカ」がわかりませんでした・・・。岡山県や愛知・豊橋にそうした名前のケーキ屋さんがあるようですが・・・。単にフィクション上の名称なのでしょうか。

・最中(もなか)

「……難しいな」
でも難しいなりに、胸に響いていた。ヨシ坊は最中をぱくりと食べた。

『猫のお告げは樹の下で』(文庫版)、p.167

ミクジがいる神社の宮司さんが出してくれる最中です。大切なお話のお供でしたね。

・スガキヤのクリームぜんざい

「他に何か、欲しいものある?」
「スガキヤのクリームぜんざいが、食いてえなあ」
私は吹き出した。

『猫のお告げは樹の下で』(文庫版)、p.297

またもはばっちり指定型のスウィーツです。こちらは、ご存じSugakiyaさんのクリームぜんざいですね。関東にはないんですねぇ・・・。

この後、ぜんざいが登場する章「タマタマ」の主役であるニコが作る「ニコちゃんクリームぜんざい」も食べてみたいものです。

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青山美智子さんの作品を呼んでいると「たまたま」「何とはなしに」みたいな感覚の尊さを感じます。とくに『猫のお告げは樹の下で』では強く感じるように思います。

上に挙げたスウィーツのほかに、こんなものもあったらおもしろいな・・・と思いました。

  • タラヨウの葉は何かスウィーツにならないだろうか?「書ける」スウィーツ・・・?

  • ミクジをかたどったスウィーツなんてあったら可愛い。

  • 苔みたいなスウィーツがあってもいいかも?抹茶・・・?

・・・他の作品とも共通する登場人物のストーリーが楽しい『猫のお告げは樹の下で』。自分の日常にもこんな物語が隠れているのでは?という気にさせてくれる一冊です。

🍯赤と青とエスキース(PHP研究所)

この記事を書いている2022年2月28日時点で青山美智子さんの最新作にあたる『赤と青とエスキース』。2022年の本屋大賞にもノミネート中です。

あまりスウィーツの印象は強くありませんでしたが・・・。読んでいきましょう!

・期間限定のデザート

「期間限定ねえ。季節のメニューみたい。桃とかメロンとか、栗のデザート。いいんじゃない?限定品って思うとありがたみが増して、いっそう甘く感じるわよ」

『赤と青とエスキース』、p.38

「ユリさん」が期間限定の恋の譬えに挙げたスウィーツたちは、実際に食べ物として登場こそしませんが・・・美味しそうです笑。

・ホット・ジンジャー・ティー

食欲もなく、風邪の引き始めかもしれないと、蜂蜜を落としたホット・ジンジャー・ティーだけ飲んで出勤した。

『赤と青とエスキース』、p.163

スウィーツというわけではありませんが「茜」の飲み物として登場する蜂蜜入りのホット・ジンジャー・ティーをピックアップです。

・生八つ橋と豆

彼はぱっと私のほうを見て、イヤホンを外す。そして「お土産」と言って、生八つ橋の箱を掲げた。
「ありがとう、おかえり」
私はどさくさ紛れに、ささっとそう言った。
ローテーブルの上には他に、菓子袋と赤い鬼のお面があった。私の視線に気づいた彼が、訊いてもいないのに説明してくる。

『赤と青とエスキース』、pp.201-202

「蒼」が京都から買ってきた生八つ橋と節分の豆も、一応のところピックアップしています。この引用だけではなかなか伝わりづらいところですが、この「赤鬼と青鬼」の章が大団円に向けた大事な一章になっている気がします。

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  • ジャックが手にもっていた赤と青のパレットみたいなスウィーツなんかがあれば綺麗でよさそう。

  • 「完璧な結婚」(詳しくは作品にて)みたいなスウィーツが作れないだろうか?

  • 「カドル」にスウィーツがあったらどんなものだろうか?

・・・などなど、あまりたくさんのスウィーツが登場することはないものの「つくる」ことのドラマを魅せてくれる『赤と青とエスキース』には多くの創作ヒントが隠されていそうです。

それにしても、何度も何度も読み返したくなる作品ですね・・・

🍯誰がつくるハニースウィーツ?

ここまで、青山美智子さんの作品に出てくるたくさんのスウィーツを取り上げてきました。目的は椎葉村で開催する「ハニースウィーツ」イベントのヒントを得るためだったのですが・・・やっぱり青山さんの御本は楽しいです。想定の3倍の時間をかけて、じっくり読みこんでしまいました!

いろいろと「スウィーツ」(らしきもの)をピックアップしながら、僕だったらどんなレシピをつくるかと考えてみたのですが・・・。やっぱり、自分の一番好きなキャラクターが「どんなハニースウィーツをつくりそうか」を考えてみたいなと思いました。

たとえば僕の場合一番好きなキャラクターが「黒祖ロイド」さんなので「黒祖ロイドの小説に出てくる奇怪な……けれど愛すべきハニースウィーツ」みたいな想像をしています。やっぱり、青色でしょうか・・・笑。

そしてもちろん、皆さんの想像する「呉宮堂のハニードーム」も観てみたいです!おそらく、同じ文章を読んでいるはずなのに全然違うものが出てきたりして、それが面白い!ということになる気がしています。文章だけでなく、お一人お一人のお料理スキルや他の情報などによっても出来上がりが変わってきますよね。(そして「それがいい」んだと思います!)

・・・今回のイベントの主旨は「青山美智子さんの作品をたくさん読んで、自分の理解をお菓子というかたちにしちゃおう!」というようなものです。

「順位を決定するためのレシピコンテスト!」というわけではなく、皆さんに楽しんでいただきたい・・・そしてこのイベントを通じて青山さんを応援したい!と思っていますので、どうぞお気軽に楽しみながら青山さんの作品にふれて、レシピづくりをしてみてくださいね。

レシピの締め切りは、畏れ入りますが3月14日までとなっております。ぜひ、椎葉村交流拠点施設Katerieのイベントページをご覧いただきご応募をお願いいたします。

※ご質問などあれば、お気軽に小宮山剛のTwitterなどへもお寄せください。

皆さまから多くのご応募をお待ちしております!!

◆参考文献(掲載順)◆
・青山美智子『お探し物は図書室まで』(東京:ポプラ社、2020)
・青山美智子『木曜日にはココアを』(東京:宝島社、2019)
・青山美智子『月曜日の抹茶カフェ』(東京:宝島社、2021)
・青山美智子『ただいま神様当番』(東京:宝島社、2020)
・青山美智子『鎌倉うずまき案内所』(東京:宝島社、2021)
・青山美智子『猫のお告げは樹の下で』(東京:宝島社、2020)
・青山美智子『赤と青とエスキース』(東京:PHP研究所、2021)