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ストーリーの構成は「起・承・転・大転、結」

ストーリーづくりで非常に重要な要素が「構成」である。

構成とは、ページ数の中でストーリーをどのように収めるか、出来事をどのような順番で、どのような分量で展開させるかである。

構成は物語にとっては生命線であり、いくらキャラクターが魅力的でストーリーの題材が面白くても、構成の面でしくじるとせっかくの面白さが台無しになってしまうこともある。
人物やストーリーを活かすも殺すも、すべてはこの構成次第なのである。

今回はこの構成について、考えていきたいと思う。

ストーリーの基本構造「ヒーローズ・ジャーニー」

ストーリーをどのように組み立てるかを考えるには、まずストーリーの基本構造、ストーリーでは何が描かれているかを知る必要がある。
そのストーリーの内容、基本構造を端的に表したのが「ヒーローズ・ジャーニー」である。「ヒーローズ・ジャーニー」とは、世界各地の神話を研究分析して発見された共通のパターンであり、ほとんどすべての物語が持つ、以下のような基本的な内容、構造となる。

(1)出立……主人公は住み慣れた故郷、平穏な日常を離れ、自分の目的を達するために「冒険の旅」へと旅立つ。
(2)通過儀礼、試練……冒険の旅の中で、主人公は「通過儀礼」として何らかの試みに遭う。そこで自分の力を試し、目的を達するために努力し、その試練を乗り越え、成長する。
(3)帰還……成長した主人公はついに旅の目的を達し、故郷、日常に帰ってくる。

まとめると、「主人公が事件や問題が起こり、それを解決するために何らかの行動をし、その行動の過程で何かを学ぶことで成長し、成長した主人公が事件や問題を解決する」というものになる。
これがほぼすべての物語に共通するパターンである。
つまり、人物、行動、成長の3つの要素を描いたものが物語なのである。

構成には3つの段階がある

主人公、行動、成長をどのようにストーリーの形に組み立てていくか、そんな物語の構成(プロット)には、次の記事で述べた通り、その「構成の細かさ」によって大きく3つの段階がある。

構成にはおもに、

①ストーリー全体の流れを大まかに構成した「大バコ」
②大バコの各パートをさらに細かく区切り、内容を具体的に構成した「中バコ」
③中バコをさらに細かく「シーン(場所ごとのドラマ)」に区切って構成した「小バコ」

……がある。

物語づくりというのは、多くの場合「最初どう始まるか」と「最後どうなるか、物語の結末」が先に思い浮かぶ、決まるものである。ストーリーをつくるというのは、その物語の発端から結末までにどのような過程を経ていくか、その中間のプロセスを構想していくことに他ならない。
そんなストーリーの中間の構想を練る場合、いきなり細かく考えていくと全体の流れやバランスが崩れやすくなるため、まずは先に述べた次の3つを「大まかに」設計することが重要である。

・どんな出来事(内容、数)を
・どのような順番で
・どのくらいの分量で描いていくか

これらをまず構想するのは「大バコ」の段階である。ここでストーリーの全体像が定まれば、あとはそれを細かく具体的にしていくだけである。
本記事では、ストーリーづくりの基礎部分、最初の構想段階である「大バコ」における構成方法について考えていく。

古今東西の「大バコ」における物語構成法

さて、先に述べた人物、行動、成長のストーリーの全体像をどのように組み立てて描くか、その「大バコ」段階での物語の構成方法を考えていこう。
「大バコ」の構成法として広く知られている方法は、次の3つである。

①「起承転結」
②「三幕構成」
③「序破急」

①「起承転結」は、日本ではもっとも有名な構成方法である。
元々は漢詩の基本構成としてつくられたもので、それをストーリーづくりに応用したものだ。その構成は全体を4つのパートに分けて描いていくやり方であり、各パートの内容は以下の通りである。

……問題、事件の起こり。きっかけ。
……出来事の進行、進展。
……意外な出来事により、物語の流れが変わる。
……出来事の結末。問題、事件の解決、収束。

②「三幕構成」は、古代ギリシャに起源を持つ演劇などの構成であり、ストーリー全体を3つの内容のパートに分けて描いていく、おもにハリウッド映画において用いられる構成方法である。その内容は、以下の通り。

第一幕……発端:セットアップ(世界観や人物紹介、状況設定)
第二幕……中盤:ストーリーの主要部分
第三幕……結末:クライマックス

③「序破急」は舞楽・能楽の構成形式であり、曲のテンポ、緩急の流れを示したものである。これは物語の構成、とくに物語全体の盛り上げ方、勢いを出していくうえで役に立つ。その構成は、次のとおりである。

……導入。はじまり。
……物語が大きく動き、一気に盛り上がり、勢いがつく。展開のスピードがアップする。
……クライマックス部分。最大、最高調の盛り上がり。勢いがもっとも大きく、展開のスピードは最高となる。

これらの構成方法は、それぞれに異なるパート数や特徴があるように思えるが、じつはこれらは同じ構成手法になっている。
基本的には「ストーリー全体が4つのパートに区切られて構成される」ということである。
これら3つの構成方法を4つのパートに当てはめると、次のようになる。

【パート1】:「起」=「第一幕:発端」=「序」
【パート2】:「承の〈前半部分〉」=「第二幕:中盤の〈前半部分〉」=「破の〈前半部分〉」
【パート3】:「承の〈後半部分〉」=「第二幕:中盤の〈後半部分〉」=「破の〈後半部分〉」
【パート4】:「転、結」=「第三幕:結末」=「急」

ポイントは起承転結における「承」部分、三幕構成の第二幕「中盤」、序破急の「破」の部分である。ここはストーリーの主要部分であり、前半と後半の2つに分けて構成されるところである。
また、最後の第4パートであるクライマックスは起承転結では転と結の両方がここに含まれるということも大きな特徴である。
これを見ておわかりのように、いずれの構成法もストーリー全体を4つに分けて構成していく点においては共通しているのだ。

つまり、大バコ段階の構成を考える場合はこの、

パート1「セットアップ(発端)」
パート2「ストーリーの前半」
パート3「ストーリーの後半」
パート4「クライマックス」

このような4つのパートで「どんな出来事、ドラマが起きるか」を構想していけばいいのである。

ストーリーは「起・承・転・大転、結」 で構成するとわかりやすい!

物語の構成で難しいのは、ストーリーの主要部分である「中盤部」である。
ここは物語全体の約8割の分量を占める中心部分である。

この長い中盤部を構成するコツは、中盤部をちょうど2つに分割して構成していくことである。つまり、1つのストーリーを「前半と後半で2つの内容、2つの段階の内容」に分けて描いていくのだ。

さて、この中盤部はシナリオ指南本などでは以下のような形で、起承転結では「承」に該当すると書かれている。

(1)セットアップ……「起」
(2)中盤前半……「承」
(3)中盤後半……「承」
(4)クライマックス……「転、結」

しかし、これではストーリーの主要部分、肝心のもっとも長い中盤の展開が「承」だけで表されているため、あまりにも漠然としすぎていて正直どう構成していいかわからない。

そこで筆者は、ストーリーにおいて起承転結は次のように構成されると考えている。

(1)セットアップ……「起」
(2)中盤前半……「承」
(3)中盤後半……「転」
(4)クライマックス……「大転」&「結」

始めは「起」として世界観や人物、状況の紹介のセットアップが描かれる。

次にストーリーの前半部は「承」、紹介された舞台、登場人物を受けて、そこに何らかの事件や問題が発生し、紹介された主人公がそれを解決するために行動していく。その過程と結果が前半のストーリーとなる。

その後、「転」として物語のそれまでの流れを大きく変える出来事や新たな事件、問題が発生したり、意外な情報がもたらされるなどして、物語は意外な方向に展開していく。つまり、後半のストーリーこそが「転」なのである。

そして物語のクライマックスでは、転よりも大きな転、すなわち「大転」である絶体絶命の最大のピンチが主人公に襲いかかるが、さらに「転」の一発逆転で事件や問題が解決して物語のラストシーンへと続く「結」となる。

または、次のように考えてもいいだろう。

(1)セットアップ……「起」&「承」
(2)中盤前半……「転1」
(3)中盤後半……「転2」
(4)クライマックス……「大転」&「結」

まず始めの「起」はそのまま、ストーリーの起こり、始まりが描かれる。
次に「起」を受けた「承」のストーリーが進む。ここでは世界観や人物、状況の紹介、主人公を読者に印象づける出来事などが描かれる。
つまり、セットアップ部は「起」と「承」が当てはまる。

その後、ストーリーは「それまでの主人公の日常を大きく変える出来事」である「転1」によって本格的に始まる。その多くは「何らかの事件や問題、トラブルなどが発生すること」となる。ストーリーの前半は、そんな事件や問題に対処するための主人公の行動とその奮闘の経過と結果が描かれる。

ポイントは、次の物語後半である。後半のストーリーは2回目の「転2」、すなわち流れを大きくけるような展開、出来事が描かれる。
このストーリーが後半戦に差し掛かる物語の中間地点では、それまでの前半のストーリーの進行、展開が大きく変わるような意外な出来事が発生し、それによって物語後半の新たな展開が生じる。後半のストーリーはその新たに生じた展開によって始まり、進行していく。そして主人公は、この後半で事件や問題の「核心」に近づいていくのである。
この2回目の「転」は、危険度、重大さ、意外性において前半の1回目の「転」を上回るものになる。ストーリーが進むごとに、主人公の行動と同時に主人公の危険度もエスカレートしていかなければならない。

そして物語のクライマックスである結末では、さらに物語の流れがさらに大きく、とんでもない方向に変転する3回目の転である「大転」の出来事、展開によって突入する。「大転」では主人公は事件や問題の核心に到達した後、絶体絶命の最大のピンチに陥るが、「結」によって一発逆転でピンチを乗り越え事件や問題を解決し、物語が決していく。

つまり、ストーリー部分はすべて「転」でできているといえるのである。

この2つの起承転結に関する考え方に共通しているのは「ストーリーの後半部分を『転』と考える」ことである。
後半の出来事を考える際に、「転」として「新事実が判明する」とか「新たなトラブル、問題が発生する」、または「反転攻勢をかける」といった「意外性」「ストーリーの流れが変わる」展開を持ってくるようにすると、後半のストーリーの内容を掴みやすくなるだろう。

ストーリーの全体像を構成する際には、従来の起承転結ではいまいち考えづらいという場合は、物語後半は「承」ではなく「転」で考え、クライマックスはさらに大きな「大転」がきて、「結」で終わるようにしてみよう。

物語づくりでは、後半ではストーリーの流れが変わるということを覚えておこう。

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ストーリーの4つのパート、物語前半と後半の考え方、構成方法については、以下のテキストでもくわしく解説しています。

ご興味がある方は、ぜひ合わせてご一読ください。



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