成長のジャンプアップ

「人は年齢と共に成長する」というのは大きな誤解で、成人以降の人間は、成長をしようとするから成長する。やめてしまえばその時間は成長しない。

成長を求める人でも、もう一つ誤解がある。「成長は時間に比例する」という点。実際の成長は階段的であり、比例ではない。連続的に滑らかに伸びない。

人はあるタイミングで大きな情報量を獲得し、それを消化した瞬間に「飛び抜けた成長」を見せる時がある。私はそれを「ジャンプアップ(Jump up)」と呼んでいる。そういう若手社員を見たことはないだろうか?「こいつ急に伸びたな」っていう社員。彼ら彼女らは何か大きな経験を体験したのかもしれない。

人の成長には内部の成長可能な能力と、それに必要な外部(未知な)情報が必要。情報の獲得手段は本かもしれないし、何か人生の大きな出来事かもしれない。その中でも個人的にお勧めなのは「知らない人と喋ること」。おすすめのポイントは、少なくとも会話先の人間が情報を言語化できているからだ。今まで出会ったことない、とても能力の高い人間と出会って生活を共にすることができた場合、ジャンプアップのチャンスがある。

私にも社会人以降、認識できる範囲でも3回の大きなジャンプアップを経験した。一つは社会人2年目の末に知り合った心臓血管外科医との出会いが大きいだろう。彼は私自身の内に存在していた能力を目覚めさせてくれた。「外科的な映像センス」は、医者でもない私に育まれていたことをその瞬間知ることができた。そこから仕事上で大きな成果を残すことができるようになった。今もそうだけど、この業界の起業家として周りと対等に話せているのは、まさにこのセンスが本物であることの証明だと思う。

次は、階段にしては緩やかな傾斜ではあるが、東京や小倉に引っ越すことで獲得した新しい友人たちとの知識交換だろう。私は2008年に広島から東京へ、2016年に小倉へ引越しし2023年も小倉にいる。私はその間、毎夜毎晩飲食店で食事をし、知らない人たちと会話をする。その中には多種多様な人間がいて、自分の知らない知識の交換を行うことができる。これによって自分の知識も当然影響を受けるが、何よりインプットとアウトプットのインターフェイスが研ぎ澄まされていく。聞く力も尽くし、トークスキルも向上していく。ここが、常日頃から強化できていたのは、次の成長に繋げる良いトレーニングだったと思う。

最後はイスラエルへの出張経験は一つ大きいと思う。その時、ある大手企業の技術よりのマーケティングチームと打ち合わせすることになった。その時に参加したトップがユダヤ人で、その人の頭の良さに度肝を抜かれた。印象としては「私が電卓で計算しているところを、その人はエクセル使って仕事してる」というくらい脳の作りや仕組みの違いを感じた。この経験は「まだまだ上には上がいる」という当たり前ながらも、とんでもない天才を目の当たりにすることで「もっと頑張ろう」とモチベーションをつけさせてくれた人物と言える。

どれもこれも、知らない人との出会いが、自分を大きく底上げしていくということがわかる。何かを教わる必要はない。ある程度自分が出来上がってくれば、生きているだけで人から何かを学べるものである。運命的な出会いは計算できるようなものではないが、とにかく知らない人(自分より優れた能力を持っている人)と出逢いにいく、という姿勢が重要である。

冒頭に二つほど誤解を話したが「何もしなければ成長しないどころか退化する」というのは、事実である。成長したければ何かしよう。成長にコスパなんて考えている暇はない。

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