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Eve、さらなる覚醒の季節へ。ぴあアリーナMM公演を振り返る。

【8/26(土) Eve @ ぴあアリーナMM】

自身最大規模となる東阪のアリーナツアー「Eve Arena Tour 2023[⻁狼来]」。ぴあアリーナMM公演の1日目を観た。

昨年8月の日本武道館公演のレポート記事の結びとして、僕は、「言うまでもなく、Eveが誇るのは、決して武道館には収まりきらない破格の才能であり、今回の追加公演2daysは一つの通過点にすぎない。きっとすぐに、もっと壮大な、今は想像も及ばないような美しい景色を見せてくれると思う。」と書いた。まさに今回のアリーナツアーは、現行のポップ・ミュージックシーンにおけるEveの存在感の大きさを示すものであり、しかも11月には、立て続ける形で2日間にわたるさいたまスーパーアリーナ公演「Eve Live 2023 [花嵐]」の開催を控えている。ちょうど本日、一般販売開始後すぐにソールドアウトしたことが発表され、改めて、今、彼が背負うシーンからの期待の大きさを感じる。

Eveにとって今回のアリーナツアーは、今年初のライブの機会であり、遡ると、彼が前回ステージに立ったのは、昨年末の「COUNTDOWN JAPAN 22/23」だった。Eveがフェスに出演したのはその時が初めてであり、そのステージを通して彼は、ワンマンライブでは出会うことのなかった多くの人と邂逅を果たした。新しい一歩を踏み出すことで自らの世界を広げた経験は、Eveのポップ・アーティストとしての歩みにおいて非常に大きな意義を持つものだったはずで、だからこそ僕は、その後に行われる今回のツアーは、きっと何かしらの新しい変化や進化を感じさせるものになるだろうと感じていた。そして、その予感は的中した。


会場に入ってまず感じたのは、開場中のBGMだ。これまでは、自身の世界観を伝えるアニメーション映像がループで流れていて、それが観客がEveの世界に深く没入するためのセットアップとしての役割を果たしていたが、今回は、The 1975やNewJeans、ヨルシカなどの楽曲がBGMとして使用されていた。そしてもう一つの驚きは、ステージの中央からアリーナに向けて設置された長い花道と、その先端のサブステージだ。開演前にして、きっとこれまでとは大きく異なるライブになるだろうという確信がよりいっそう深まっていく。

そして、いよいよ幕を開けたライブ本編。これまで一つひとつの作品を通して緻密に構築されてきたEveの世界が、圧巻のダイナミズムを誇るライブパフォーマンスを通して目の前に現出していく。それこそがEveのライブの醍醐味であり、それは昨年までの公演にも通じるものであるが、今回は、観客の声出しが完全に解禁されてからの初ライブということもあり、今までの彼のライブでは味わったことがないような熱い一体感を感じた。今思えば、今回のぴあアリーナMM公演は、コロナ禍でキャンセルとなってしまった「Eve Live Smile」のリベンジ公演でもあり、この2日間の観客の中には、約3年分の想いを抱えて参加した人も多かったと思う。そうした背景もあってか、今回は特にフロアの熱気が凄まじく、随所で熾烈な大歓声や特大コール&レスポンスが起きまくっていた。

また、そうした並々ならぬ観客たちの想いを一身にしてしなやかに受け止めながら、さらなる熱狂へと導いていくEveの堂々たる佇まいには本当に痺れた。花道の使い方も見事で(アンコールのMCでは「柵がないからヒヤヒヤしていた」と語っていたが。)、観客との距離を狭めながら次第にクライマックスへ向けた高揚感を生み出していくその姿は、彼のライブアーティストとしてのさらなる覚醒感を感じさせるものだった。観客への揺るがぬ信頼、そして連帯感が、ステージに立つEveの進化を大きく加速させている。この日のライブを観ながら、何度もそう強く感じた。


次々と新旧の楽曲が披露され続けていく中で、特に際立った存在感を放っていたのが、昨年末から今年にかけて発表された新曲群だった。「いけるか、ぴあアリーナ!」という力強い呼びかけと共に披露されたオープニングナンバー"ファイトソング"は、フィジカルに直接的に訴えかけてくるようなエッジーなバンドアンサンブルが非常に強烈で、また、今回のツアータイトルにもなっている"⻁狼来"は、熱さとクールさが渾然一体となったEve特有の温度感を放つダンスナンバーとして唯一無二の存在感を見せていた。"黄金の日々"や"ぼくらの"では、Eveがマイクをフロアに力強く託し、観客がコーラスを重ねて彼の想いに応えていくコミュニケーションが何度も成立していて、その晴れやかなメロディと相まって、かつてないほどのインタラクティブな開放感を感じさせてくれた。

今回のツアーでライブ初披露となった新曲が多かったが、そのどれもが既に新たなライブアンセムと化している。それは本当に凄いことで、楽曲そのものの力は大前提として、きっと彼の中で、観客と一緒にライブ空間を創り上げるという意識が今まで以上に強くなっているのだと感じた。これまでのライブ(特にコロナ禍の公演)を、Eveが提示する確固たる音楽世界に観客が深く没入していくタイプのものであると位置付けるとしたら、今の彼のライブは、ポスト・コロナ時代の到来に合わせて、その逆のベクトルへ向けてアップデートを重ねている過程にあるのかもしれない。決してMCが多いライブではないが、豊かな音楽的コミュニケーションの数々を通して、彼の実存をグッと近くに感じられる瞬間が何度も訪れ、それは今までのEveのライブでは味わったことのないような新鮮な実感であったように思う。


アンコールでは、Eveいわく「ただの友達」であるキヨが登場して、お互いの親密な関係性が伝わってくるようなカジュアルなやりとりを経た後、Eveが提供した"有頂天猫"を2人で一緒に歌うという嬉しいサプライズも。(27日の公演には、ヨルシカのsuisが登場して、Eveと共に"平行線"と"僕らまだアンダーグラウンド"の2曲を披露したとのこと。)Eveが自らのライブのステージに他のアーティストを迎え入れるのは、今回が初めてである。今年に入ってから、様々なアーティストへの楽曲提供が続いていることも含め、今、Eveの音楽の世界が、他者とのコラボレーションを通して今まで以上に大きな広がりを見せていることを改めて感じた。

Eveの歌声に温かな大合唱が重なった"君に世界"。そして、何度も迎えたはずの熱狂のピークをさらに更新してみせた"お気に召すまま"で、この日のライブは美しい大団円を迎えた。総じて、Eveと観客のコミュニケーションが今まで以上にオープンになっていることを強く感じたライブだった。そうした彼のライブ観の変化は、きっと、自身最大規模のワンマンライブとなる11月のさいたまスーパーアリーナ公演「花嵐」 において、より明確な形で感じ取れるはず。絶え間なく進化し続けるEveの次のステージを楽しみに待ちたい。




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