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【月刊 ポップ・カルチャーの未来から/23年6月号】 僕が音楽ライターになった2つ目のきっかけについて。

4月から、「自分のこと」について綴る月次の連載を始めました。これから定期的に、自分が日々のライター生活の中で考えていること、思っていること、悩んでいること、目指していることなどを、少しずつ書き記していこうと思っていますが、まずは前回に続き、いろいろな方から特によくご質問を頂くことが多い「音楽ライターになったきっかけ」について書いていきます。ライターを目指す(もしくは、ライターという仕事に興味を持つ)次の世代の方たちにとって、何かしらの思考のきっかけを提供できたら嬉しいです。

先月の第2回目の記事では、僕の約10年前の就職活動について振り返りながら、新卒でロッキング・オンに入社して「ROCKIN'ON JAPAN」編集部に配属されるまでの経緯について書きました。ただそれは、僕が音楽ライターになった最初のきっかけに過ぎません。今回は、4年間勤めたロッキング・オンを退職した後、改めてゼロから音楽ライターになった2つ目のきっかけについて書こうと思います。


本題に入る前に、今回の文脈におけるライターの定義について。国家資格などが必要な職種ではないですし、現在は、誰もがnoteなどのプラットフォームを通して自分が書いた文章を全世界に発信することができる時代です。その意味で言えば、誰もが(広義の)ライターを名乗ることができるのだと思います。そうした前提を踏まえつつ、今回は、「原稿料などのお金をもらって文章を書く人=ライター」という定義で話を進めたいと思います。(すごくざっくりとした表現ですが、「プロのライター」のようなイメージです。)

たまに「ロッキング・オン出身者だから、『ROCKIN'ON JAPAN』で書くことができているんですか?」と聞かれることがあります。半分は正しいかもしれませんが、半分は「そうではない」という返答になります。というのも、僕は2018年3月にロッキング・オンを退職した時点では、同社とライターの業務委託契約を結んでいたわけではなかったからです。ですので、退職した当時は、そしてしばらくは、先ほどの定義でいうところのプロのライターではありませんでした。

それでも自分の中に、音楽や映画をはじめとしたポップ・カルチャーについて書きたいという欲求が強くありました。僕は2018年4月からIT企業に転職して働いているため、言ってしまえば書かなくても生活していける状態でした。なので、メディアから原稿料をもらいながら記事を書くことに対するこだわりが強くあったわけではなく、ただただ、書き続けたいという情熱だけがありました。


当時は、自分が書きたいテーマについて自分が書きたいように書いた記事を発信する方法を模索していました。はじめは、「今、音楽ファンや映画ファンが、最も集まっている場所はどこだろう」と考えた結果として、Instagram上で音楽や映画のレビューの発信を始めました。ただ、やはりInstagramと長いテキストの相性はよくないという実感がありました。夏頃から他のプラットフォームを探し始め、その時に出会ったのがnoteでした。そして、2018年11月から、発信活動の拠点をnoteに移しました。

はじめは、Instagramにアップしたコラムをnoteへ一つずつ転載しつつ、その後もとにかく記事を書き続けました。今から思うと自分でも狂気的だと思うのですが、500日連続でnoteに記事を投稿し続けたこともありました。その過程で、読者の方からサポート(投げ銭)を頂いたり、数本出した有料記事を購入して頂いたりして、多少の収入が発生していたのですが、いずれにせよ、損得勘定だけでは続けられなかったと思います。(なぜ僕が、これほどまでに執念的にポップ・カルチャーについて書き続けているのか、については、また追ってこの連載で書きたいと思います。)


noteに発信活動の拠点を移行した1年後の2019年11月、一つの大きな転機がありました。当時、ロッキング・オンのウェブメディア「rockin'on. com」の編集長を務めていた方から、「唐突にメールしたのは、松本くんと改めて、何か一緒に仕事できることがないかなと思ったからです。」というメールが届きました。僕がnoteにアップした2019年11月のBUMP OF CHICKENのライブレポートの記事を読み、その流れで他のnoteの記事にも目を通した上で、久々に連絡してくださったとのことでした。

当時、noteで継続的に発信を続ける中で、自分の次の可能性を模索し始めていたタイミングだったので、連絡をもらった時は心から嬉しかったです。2019年の末から2020年にかけて、少しずつ「rockin'on. com」で記事を書き始め、2021年からは、雑誌「ROCKIN'ON JAPAN」でも書き始めました。新卒入社してから4年間お世話になった会社と、こうして退職後も繋がることができているのは、とても嬉しく光栄なことであると思っています。


これが、僕が、いわゆるプロの音楽ライターになった2つ目のきっかけです。ただ僕は、2020年以降も、noteの継続的な発信を止めませんでした。そして、継続的に発信を続けていたからこそ、その後も数々のメディアの方から「noteの記事を読みました。」というご連絡を頂くことができたのだと思います。

今回のこの記事を通して最もお伝えしたいことは、「各メディアの編集者は、いろいろな人が書いたブログ記事などをよく読んでいる」ということです。その大きな目的は、ライターのリクルートです。僕自身の経験として、メディアの方から「松本さんが〜に寄稿した記事を読み、ご連絡しました。」とお仕事のご依頼を頂いたこともなくはないのですが、多かったのは「noteの記事を読みました。」というご連絡でした。やはり、書き手の人となりや力量が最も色濃く表れるのは、その人のブログなのだと思います。だからこそ僕は、メディアに寄稿した記事はポートフォリオとしてまとめつつ、2020年以降も(そして現在も)、noteの記事を並行して書き続けています。

と言っても、書き続けることは大変です。数ヶ月や1年に1本、渾身の記事を書くことはできたとしても、定期的に書き続けるとなると話は全く変わってきます。最初の話にも繋がりますが、改めて、損得勘定だけでは続けられないことだと思います。それでも、何か好きなものや情熱を注ぐことができるテーマや領域がある方なら、もしかしたら自然と書き続けているのではないかと思います。

その中には、プロのライターになるかどうかなんて関係ないと思いながら、ひたすら書き続けている人もいるはずです。そういう方は、きっと、大変ながらも書くことを楽しんでいるはずですし、いつか誰かがあなたの情熱が込められた記事を見つける日が来ると思います。そのように書き続ける人を僕は陰ながら応援したいですし、自分も負けないように頑張りたいと思います。

それでは、また次回!



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