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【月刊ポップ・カルチャーの未来から/23年9月号】 原稿料0円のnoteを書き続ける理由について。

お読み頂きありがとうございます、音楽&映画ライターの松本侃士です。

7月末から8月にかけての怒涛のライブ/フェスシーズンが、やっと終わりを迎えました。振り返ると、各週の週末には、UVERworldの日産スタジアム公演(2日間)→「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2023」(1週目)→「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2023」(2週目)→「SUMMER SONIC 2023」→EveのぴあアリーナMM公演、というビッグイベントがあり、加えて、その狭間を縫うように数日おきにライブがありました。中には、サマソニのように仕事とは全く関係のないものも含まれていますが、記録的な酷暑もあいまって非常にハードな夏でした。ただ同時に、2023年夏の音楽シーンのリアルをしっかりと肌で感じ取ることができましたし、仕事ある/なし関係なく、たくさんの素晴らしい思い出をつくることができました。本当にライター冥利に尽きます。

9月に入ってからはライブ/フェスが落ち着いていたのですが、しっかりと書き残しておきたいことを書き終えるまでは、この夏が終わった実感をずっと持てずにいました。メディアからの依頼を受けた〆切が迫っている原稿を優先しなければいけないため、すっかり遅くなってしまいましたが、今月に入ってから、「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2023」、ELLEGARDENのZOZOマリンスタジアム公演、「SUMMER SONIC 2023」、EveのぴあアリーナMM公演のレポートをnoteに書きました。メディアから依頼を受けて(原稿料を頂いて)書く寄稿記事の合間を縫いながら、原稿料0円のnoteを書き続けることは、自分で言うのもあれですがけっこうタフです。この記事をお読み頂いている方の中には、「なぜ(ほとんど)お金にならないnoteを書き続けるのか」と疑問に思う人もいると思います。僕自身、この連載の中で過去にも書いてきましたが、稼ぐことだけを見据えるとしたらむちゃくちゃ非効率な時間の使い方をしていると思います。ただ、僕の中で、自分のnote(=ブログ)を書き続ける理由は明確にあって、むしろ、その気持ちは日を重ねるごとに深まっています。


理由はいくつかありますが、まずは、一つひとつの記事をストックしていくことが、ライターとしての自己紹介に繋がるからです。特に駆け出しの時期は、まずは自分の執筆実績を示さなければメディアから仕事の依頼を頂くことはできません。はじめはお金にならなくても、一つひとつの記事を書きためていくことを通して、自分は「どのような領域を得意とするか」「どのように書くか」を示すことで、それが各メディアの編集者の目に止まり、仕事の依頼に繋がることがあります。実際に僕は、そのようにして一つずつ各メディアとの繋がりを作ってきました。

大前提として付け加えておかなければいけないのは、noteに記事を書く目的は人それぞれで、仕事の依頼を受けることだけが全てでは決してない、ということです。仕事の依頼など関係なく、自分が書きたいから/書きたいことを/書きたいように書くのが一番だと思います。その上で、ライターとしての仕事を得たい方に向けてこの話を続けるとしたら、この連載の過去回でも書きましたが、新しいライターのリクルーティングに努める各メディアの担当者は、noteをはじめとした個人ブログ記事をよくチェックしています。個人のブログ記事は、基本的に編集者の手を介さず、執筆者が書いたものをそのまま公開するため、その書き手のライティングのレベルやスキルが如実に表れます。それだけでなく、「書き続ける継続力はあるか」という観点も含め、世の中の編集者は日々いろいろなブログ記事をチェックしていて、自分の渾身の記事を書き続けていけば、たとえすぐに実ることはなくても、いつか仕事に繋がる可能性はあります。(それはもちろん、メディアが求める条件と合致した場合に限りますが。)


と、ここまで書いておきながら、ここからは全くベクトルの異なる話をしますが、僕自身、現在は、新しい仕事を得たいからnoteを書き続けているわけではありません。もちろん、2018年にnoteを始めた当初はそうした気持ちはありましたし、今も全くないとは言いませんが、どちらかと言えば現在は、自分が書きたいと思ったこと/書くべきだと思ったことを、自分の意志で書き続けられる個人のメディアを持っていたい、という気持ちが強いです。

メディアから依頼を受けて執筆業を引き受けることで得られる経験は非常に大きいですし、僕自身、今もいくつかのメディアの方と継続的に繋がりを持たせてもらっています。ただ、当たり前ですが、各メディアの運営や記事の編集の方針を決めるのは各社であり、基本的にライターの役割は、メディアの依頼に沿う原稿を納品することです。(その中で、どのように自分の持ち味を出し、当初の依頼時の期待を超えていくか、こそがライターの頑張りどころだと思います。)もちろん、場合によっては、ライターがメディアに対して企画を提案して記事を書くケースもあると思いますが、いずれにせよ、その記事の主導権(および、責任)はメディアが持ちます。

そうした環境の中で、自分が書きたいと思ったこと/書くべきだと思ったことを、自分の意志で書き続けるのは難しい。それであれば、(依頼を受けて原稿料を頂く執筆業と並行して)自分のnoteを書き続けていきたい。僕はそう考えながら、(ほとんど)お金にならないnoteを書き続けています。この記事を読む方にとっては、とても非効率で、狂気じみているように思うかもしれません。何より、僕自身もそう思っています。ただ、自分の軸を持って書き続けていく拠点を持つことこそが、長い目で見た時に重要になるような気がしています。

今年に入ってからは、こうした考えを、いつもお世話になっているレコード会社や事務所の方たちに話していて、少しずつではありますが、僕のnoteの執筆のために協力してくださる方が増え始めています。僕のnoteのライブレポートの記事の中には、そうしたご協力があってこそ執筆できているものも多いです。本当に頭が上がりません。感謝の気持ちでいっぱいです。

これからも、メディアからお声がけ頂ける限りはしっかりとその期待に応えつつ、それと並行して、自分のnoteにおいては、自分が書きたいと思ったこと/書くべきだと思ったことを、しっかりと書き続けようと思っています。ぜひ、たまに覗いて頂けたらとても嬉しいです。



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