児相12日目。「こうかい」
さよなら。じゃあね。バイバイ。
先日入所した子どもたちが賑やかに走り回る横で、彼女は一人、静かに別れの挨拶をした。
寂しさや不安が入り混じるような、喜びが混ざっているかのような、複雑な色の表情だった。
後悔。
彼女はずっと、生きてきた中の出来事に対して後悔の言葉を並べていた。
短いのに濃すぎるその生き方はとても“普通”ではないけれど、でも、その経験はきっと彼女の心の厚みを増してくれていて、どこか言葉に説得力のようなものを感じることができる。
“普通”なんて別にいらないよね。
その経験は武器になるんだ。
薄っぺらい大人の説法よりも、不思議な説得力を感じた。
彼女と出会ってからいろんな話をしてきたけど、最後だった今日、僕にこんな質問をしてくれた。
「人生、どうやったらうまく生きることができる?」
質問に対する答えなんかどこにもない。
人生うまくいく方法なんかどこにもなくて、それを見つけにいくことこそが人生なんだと思うけど、
ダサい自分でもいいよ、できないことがあってもいいんだよ、うまくいかなくても大丈夫って自分を受け止めてあげればうまくいくよ。絶対に。
最終的に自分が自分のことを受け止めてあげさえすれば、なにも怖いものはない。
一番辛いのは、自分で自分を認めることができないことだから。
十分なんだ。
こうやって生きてるだけですごいことなんだ。
なにも分からず今日も隣で可愛い寝息が聴こえる。眠る前にいなくなった彼女の名前を言った。
「〇〇ちゃんは〜?」
今日ももう少しで終わり、明日がまたやってくる。
「〇〇ちゃんは帰ったんだよ。バイバイした」
航海。
不安と未知の世界への航海が始まった。
社会という荒波だろうが、大人という障害物だろうが、自分さえしっかりしていれば大丈夫。
ハンドルは彼女自身が握ってる。
いつでも自由への方向へと舵を切れる。
すべてはその手に託されてるんだ。
いってらっしゃい。
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