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ep.4 自信。

僕は写真がかなり下手くそだった。写真を学ぶために始めたバイト先の社員さんにも「こんな下手なやつ初めてみた」と言われるほどだ。2002年の夏前に漲っていた根拠のない自信は、夏が終わる頃にはすっかり失われていた。

そんなとき、T羽くんと出会った。各地に散らばったカメラマンは撮影が終わると、代々木にある事務所に戻ってフイルム整理をする。そこでよく見かけていたT羽くんは、背が高く真黒に焼けて目つきも鋭かったから、小心者の僕はまじでビビっていた。あのひと怖い、、と。

夏の終わりに池袋の居酒屋で慰労会という名の飲み会がおこなわれた。その一次会が終わりに差し掛かったころ、T羽くんが僕に声をかけてきた。

T「たかすさん、すよね?」
僕「はい、T羽、、さんですよね。はじめまして(やべ、怖い人きた)」
T「保土ヶ谷の大会撮りました?」

バイト先の会社では見本プリントを各チームに送っていたのだが、発送前の写真は各自が自由にチェックできた。T羽くんは他のカメラマンの写真もチェックしていたようだった。あの夏、最後の仕事として中学生の野球を保土ヶ谷で撮っていた。

僕「あー、はい、中学生の、、撮りました(なんかしたかな、、)」
T「あの写真、良かったすよ」
僕「は、へ?」

(なんだー、怖いヤツかと思ったけど良いヤツじゃん!)
「ありがとうございます! え? (年齢)一個下なの? 二軒目いこー!」

初めて褒められた僕は調子にのった。最終的にゴミ捨て場で寝ちゃうくらい呑んだ。

ちなみにこのバイトで知り合った同年代のカメラマンたちは、僕が写真を続ける上で大切な存在だった。プロカメラマンになるという志を持った仲間であり、ライバルでもあった。撮影終わりに代々木の安居酒屋であーでもない、こーでもないと写真や将来の夢について語らう青い日々。

今でも国内外の一線で活躍する彼らと現場で会うと心の中でニヤニヤしてしまうのは内緒だ。

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