ep.11 ターミナル。
という映画をご存知だろうか。2004年に公開されたトム・ハンクス主演作で、アメリカに向かう機中でトム演じる主人公の国がクーデターにより無政府状態に陥り、パスポートとVISAが失効。アメリカに入国することも祖国に帰ることもできずに、JFK空港に閉じ込められるというお話だ。
2005年の僕はノッていた。2月のバーレーン取材を皮切りに3月にイラン、6月には再びバーレーンとイランへ行くことになっていた。
逃走しまくったバーレーン取材を終え、無観客の北朝鮮戦のために多くの日本メディアがバンコクへ旅立った。
僕はそのまま中東に残り、テヘランへ向かうことにしていた。もしこの6月シリーズで日本が躓いた場合、8月にホームで迎え撃つイラン戦に予選突破がかかる。もしそうなれば盛り上がることは間違いない。その重要な一戦の対戦相手を撮り貯めておこうという計算があったからだ。
しかし、結果は日本が呆気なく2連勝を飾り、無観客のバンコクで出場が決まった。
その様子をアザディ・スタジアムの映りの悪いジャイアントスクリーンで確認した僕のテンションがだだ下がりになったのは言うまでもない。
捕らぬ狸の皮算用。
それでもイランが予選を突破したことで10万人分のカタルシスを味わうことができたから、一生に一度の経験をすることができたから気分は上々だった。そして、1週間に渡る刺激的な旅を終えて帰国の途につき、中継地のドバイ空港に立ち寄った。
次のフライトまでは時間があった。数日間、アルコールを完全の抜いていた僕は空港のバーに直行した。現地で仲良くなった記者と二人で久しぶりのビールを堪能するためだ。
テヘランでの刺激的な経験と無事に帰国できる安心感、そして、最終予選を無事に乗り切った達成感。色々な感情がアルコールで増幅されたことは否めない。二人とも饒舌だったから、話が途切れない。トイレに立ったときにやっと時計を確認した。
そして、一気に酔いが覚めた。
僕たちはターミナルを走った。息をきらせてゲートにいくとそこに人影はなかった。地上係員にフライトのことを聞いた。念のために。
「gone(行ったわ)」
僕たちが乗る予定だった関空行きのエミレーツ便はすでに飛び立っていた。話し込んでしまったせいで呼び出しのアナウンスさえ耳に入らなかったようだ。
いい感じで最終予選を終えられたと思っていたのに最後の最後で大きなミスをしてしまった。片道10万の航空券は今でも僕史上最高値だ。
好事魔多し。
中東で2つも諺を学んだのでありました。
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