Football Life vol.62
この日も調子乗りたちはノリにノッていた。
それもそのはずだ。前半22分、槙野のヘディングで先制。後半開始早々、デカモリシがPKで追加点。この時点で勝ちを予感した人は多かったと思う。僕は日本が勝ち上がった場合の旅程を考え始めていた。次の目的地はエドモントンだった。
しかし、そんなに簡単には勝たせてくれなかった。よく分からない判定もあって、気がついたら2本のPKを連続で取られて同点にされてしまったのだ。その後、一人退場して10人になったチェコを崩し切ることができず、PK戦に突入。そして、敗れた。
今となってはデジャブみたいな試合だ。「勝てるかも?」と思った瞬間、ポポポーンと失点して悔しい思いをしてきた、何度も。それを初めて生でみたのがこの日の試合だった。試合後、写真を送り終えた僕が真っ先にしたのは、エドモントンへのフライトを抑えることではなく、帰国便を変更することだった。
それまでは会場から宿まで歩いて帰っていたけれど、この日は落胆と疲れが大きすぎて初めてタクシーを使った。運転手は中東訛りの英語をしゃべる出稼ぎの男だった。彼はサッカーが好きで、この日の試合もテレビかラジオで確認しているようだった。会場近くで乗せた客が日本人だとわかった運転手が話しかけてきた。
たいしてしゃべれない英語で僕は「2本も連続でPKを取られるなんて、こんな不運はない」ということを落胆とともに伝えた。運転手は僕を慰めてくれた。
「それがフットボールさ」
部屋に戻って飲んだチェコ産のビールはほろ苦い味がした。
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