#13 詩を読まなければならなかった
衝動に任せて書き連ねるーー。
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今日諸用で街中に出向いた際、目的地と同じ建物内にある無印良品に立ち寄った。
普段は立ち寄らない場所であり、かつ時間もあったのでゆっくりと探索する。ほどなく、無印良品内に本のコーナーを見つけた。
もしこれが常識だったら恥ずかしい限りだが、ぼくはそれを初めて知った。暮らしの本、インテリアの本、健康の本、食事の本。生活に根付くジャンルの本を多く取り扱っていた。
長い付き合いのある人の新たな一面、隠された性格を知ってしまった。そんな気分だった。
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ぼくは自分の中の興奮に気付いた。静かな興奮。熱した鉄球に冷水をかけたような。内なるざわつきを感じずにはいられなかった。
昨夜、作品を完成させたばかりだったからか、おそらくぼくは新たな刺激を求めていたのだろう。そのスイッチが入ったのだろう。
直感的に、心が走る。「詩を読まなければならない」と。
断っておくが、ぼくは詩など読んだこともない。これまでまったく触れ合ってこない世界であり、文化だ。現代の著名な作家など誰一人としてあげることができない。
それなのに、詩を読まなければならなかった。喉が乾いたら水を飲みたくなるように。肉ばかり食べる日々の中で野菜による栄養が欲しくなるように。ぼくの身体は無意識下で「詩による栄養」を欲していた。
その熱が、後半が冷めない内にぼくは書店に急ぎ、生まれて初めて詩集を購入した。
著者のことはまったく知らないので、後で調べていく。なにを読むのかなんて考えない。すべて直感のままに選んだ。
抽象的な詩の表現が理解できたかどうか? それは無論理解できなかった、だ。その意味を、機微を、心情を理解するのには経験値が足りなすぎる。それは読む前からわかっていた。
詩を読む。すべては理解できない。ただそこには、知っている感情がいくつもあった。アンビエントミュージックのような、リズムなきリズム。リズムはあるし、ない。存在しているが、強要しない。
行間には数秒の間もあれば、数年の間もあった。また数千キロメートルの距離もあった。1センチかもしれないし、別の惑星、別の次元かもしれない。
ささやきか、無声か? 一歩先に、知らない言葉。頭がふわふわになる浮遊感と高揚感。理解が及ばないということに身を委ねられる幸福。
知らない世界は優しい。無垢なままでいられるから。
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狭間。果たしてこれは自分か? 突如詩に興味を抱き、書店に走り、ノイズのないようにカフェに入り詩を嗜む。昨日までの自分との差。これは自分か?
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本屋や図書館は好きだが、ある意味では苦手だ。死ぬまでに絶対に享受しきれない物量を視界いっぱいに見せつけられるから。
ただそれは絶望のための材料ではない。世の中には、特に本を読むという一つのカテゴリーのみにおいてすら、美しい世界があるということを教えてくれる。
詩の世界。知れてよかった。今日の衝動が無ければ、この先一生知らない世界だったかも知れない。衝動に従ってよかった。従う選択ができてよかった。
この先も詩を読むだろう。そしてしばらくした後に今日の作品を見返したとき、なにが待っているんだろう。
耽溺しなければならない。
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