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【読書記録】群青学舎 1〜4

2021年206〜209冊目(漫画等122〜125冊目)。

友人からおすすめされた漫画です(ありがとうございます)。私のことをよく分かってるって感じのチョイスですね。

青春学園モノっぽいタイトルですが、学園モノもあればファンタジーもあり、アオハルもあれば大人の恋愛もありと多様な作品が収められた短編集となっています。

入江作品自体を初めて読むのですが、書き込みが多いながら画面がうるさくなく読みやすかったです。

以下、いくつかピックアップしてみます。

『異界の窓』

第一話。遠野物語の座敷童を彷彿とさせるエピソード。こちらは狐のお話ですね。狐といえば「狐の窓」は異界を覗くための手組みの形のことですが、タイトルはそちらを意識しているのかな。

『森へ』

第六話。こちらも異界を強く意識させるエピソードです。ほぼセリフ無しで展開されますが、丁寧に書き込まれた背景が雄弁に語りかけてきます。節々で姿を見せる異形の存在や境界をイメージさせる地蔵に対する老婆の付き合い方が郷愁を感じさせます。ラストですれ違う一団に対する老婆の「お気をつけて」というセリフが完璧。森にいる存在は幻想的で美しいだけではなく、正しく付き合わないと恐ろしい目にあうことを暗示させます。

『時鐘』

第十二話。自分の墓穴を掘る老人。校舎の一室で事切れてしまうあたり、本当に埋葬されることを願っていたというよりは死期を悟った老人の洒落っ気とも捉えられます。時鐘は定時を告げる鐘の音のことですが、ここでは寿命を表していますね。死に出会ったことで初めて昼田は生きていることを実感したのでしょう。「殺さんでも人は死ぬ」わけですが、子どもは作らなきゃ生まれませんね。

『薄明』

第二十二話、第二十三話。「薄明」は日の出の直前、または日の入り直後の薄明るい時間のこと。何に対しても興味を持てなかった青子は、本の虫だった万里雄を待つ間に自らも本を読むことを覚えます。今はまだ薄明の時間ですが、万里雄が見たかった世界を、彼女はこれから見ていくことになるのでしょう。4巻最後のエピローグでの日差したっぷりの描写が素晴らしいですね。

『待宵姫は籠の中』

第二十五話〜第二十七話。待宵姫の故郷の蚱蝉国の蚱蝉は蝉のメスのこと。発声器官を持たないため鳴かない。ずいぶん悪趣味な名前ですね。また「待宵」は来ることになっている人を待つ宵の意。輿の天井を破るのは空蝉(蝉の抜け殻)の暗示でしょうか。源氏物語の空蝉は光源氏の手から逃げるため空蝉となりましたが、籠の中から抜け出した待宵はマミジロの元へ帰っていきました。

『七色ピクニック』『七色ファミリア』『七色トゥモロー』

第三十一話〜第三十三話。特に何があるわけでもないですが好き。最後が「トゥモロー」なのがいいですね。

『スパイ・アンド・スパイ』

第三十四話。急に某ウィスキーのキャラクタみたいなのが出てきて笑ってしまいました。

『本日はお日柄も良く』

最終話。最後が卒業式の話なのがいいですね。「大人はもっと楽しいんだよ」「自分の未来に期待してほしい」は中々言えませんね。私には無理です。この言葉で次のステージに進める二人の心情もいまいちピンとこないのですが、自己の責任でやることを決められることがいいのかな? 「またね」でこのシリーズが締め括られてエピローグにいくのが「らしい」感じがしました。

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