【読書記録】ドイツ・ヴァンパイア怪縁奇談集
2024年112冊目。
ヴァンパイアといえば『ドラキュラ』ですが、ドラキュラより先に刊行されヨーロッパにヴァンパイアを広く知らしめたのがポリドリ『ヴァンパイア』。本書はポリドリのヴァンパイアブームのさなか、1820〜30年代に発表されたドイツのヴァンパイア小説を集めた作品集です。
ポリドリもストーカーも作品は英語で発表されてますが、ドイツをはじめとしてヨーロッパ中で読まれたのがよくわかりますね。
怪縁奇談集とあるように、男女の恋愛に絡めた作品が収められています。
ヴァンパイアの牙は男根のメタファーという言説をどこかで読んだ覚えがありますが、ヴァンパイアは必ずしも男性とは限らず、本作でも『死人花嫁』があります。ドラキュラでもルーシーがヴァンパイアになりますしね。
とはいえヴァンパイアと恋愛というテーマが非常にウケたのがよくわかりました。「狂想曲ーーヴァンパイア」は一族であれば男女問わずですが起点は恋愛になっています。
面白かったのは「死者を起こすなかれ」でしょうか。魔法使いが死者を蘇らせるお話しですがストーリー展開が非常に民話風でもありながら近代小説として楽しめる作品でした。
訳者による解題は80ページほどある大作です。作品の解説だけでなくヴァンパイアの呼び名の問題などにも触れられており楽しめます。ヴァンパイアの特徴は「吸血」と「蘇った死者」の二つということですが、最近では「吸血」によりフォーカスされているように感じます。蘇り要素はゾンビに取られているかな、と。最近の作品だとヴァンパイアが一種族のように扱われている例もあり、変遷が窺われます。
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