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映画『この子は邪悪』片岡翔監督TCPインタビュー

『ここでしか聞けない』映画の"ウラバナシ"をお伺いする TCP Interviewのお時間。今回は、第六弾となる受賞者インタビューを、現在絶賛公開中の映画『この子は邪悪』監督・脚本を務めた「TSUTAYA CREATORS’ PROGRAM FILM 2017」で準グランプリを受賞者、片岡翔監督(脚本作に『町田くんの世界』『ノイズ』「消しゴムをくれた女子を好きになった。」、著作に「さよなら、ムッシュ」「その殺人、本格ミステリに仕立てます。」など)にインタビュー。

心に傷を抱える少女が、恐ろしい出来事に巻き込まれていく本作。主演を務めた南沙良さんや、父親役で怪演が話題の玉木宏さんら、キャスト陣の印象や、ドキッとするインパクト大のタイトルについて聞きました。またTCPへの応募には、「映画を撮りたいなら応募しないほうが不思議」と断言。そんな監督の映画原体験なども直撃。さらに劇中に張り巡らされた伏線に対して様々な考察と議論を巻き起こしている本作についての観客のコメントへの感想も話してもらいました。

◆インパクト大のタイトル、好演のキャスト陣について

――ドキッとするタイトルですが、このタイトルになった経緯を教えてください。

タイトルが一番大変でした。TCPに応募した企画のタイトルは『ザ・ドールハウス・ファミリー』だったんです。でもそこから改稿があって、『グッド・ファーザー』というタイトルで進めていったのですが、ちょっとインパクトがないなとか、いろいろ悩みました。物語のラストで、本当にあり得ない行為が起きるので、それを表す言葉はなんだろうとずっと考えていて。“邪悪”かなと。でも『邪悪な子』だとインパクトに欠ける。そこで出てきたのが『この子は邪悪』でした。

――キャストについての感想をお聞かせください。主人公の花を演じた南沙良さんから。

窪花 (南沙良)

期待通りでした。お芝居の力量があるのは分かっていましたし、影のある役を演じると抜群な魅力を発揮するんじゃないかと思っていたので。こちらがそんなに言わずとも花の気持ちを理解して演じてくださいましたね。花はリアクションがほとんどなんですけど、その大小、細かいところを表現する感覚が優れていて、そこしかない、と言える繊細なお芝居を淡々とされていくので、すごい才能だと思いました。

――花が出会う純を演じた大西流星さんは「なにわ男子」としてのCDデビュー前の撮影でした。

四井純(大西流星(なにわ男子))

すごい好青年だなという印象でした。ほかの方に比べてお芝居の経験が少ないですが、鍵になる役だったので多少の心配はありました。でも、結果何も心配は要りませんでした。芝居をする度にどんどん良くなっていきましたし、表情が素晴らしくて、特に目の演技は、すごくリアリティのあるお芝居をしてくれたので、お願いできてよかったなと心から思いました。カメラの外では、挨拶がすごく丁寧な方で、常に目がキラキラしているんです。「あのキラキラはどうやったら出せるんだろう」とすごく不思議でした(笑)。

――両親を演じた玉木宏さんと桜井ユキさんについても一言ずつお願いします。

窪司朗(玉木宏)

玉木さんは狙い通り圧倒的なパンチ力というか、存在感を出してくださって、シリアスなリアリティのある感じだけだと司朗の役はつまらないなと思っていたので、そこのさじ加減が素晴らしかったです。本当に不気味な嫌な顔を作ってくださったり。観た方の感想を見ていても、「玉木さんの怪演がすごい」というコメントが多くて、とても嬉しいです。人間的にもすごく紳士的でした。主演ではないので表立ってみんなをまとめるわけではないのですが、周りに声をかけてリラックスさせてくれたり、陰で包んでくださっていました。

窪繭子(桜井ユキ)

桜井さんはどんなキャラクターでも真実味を出せる方なので、そのエッセンスがすごく効いてくれたと思っています。少しお話するだけで自分の役割を理解して動いてくださって、前に出すぎてもダメな役なので、一歩下がって周りを引き立てるお芝居をしてくださったと思います。

――俳優さんが実際に演じたことで、いい意味で「こうなるのか」と感じた部分などはありましたか?

自分が思っていた以上に、父親の思いにぐっと来ました。狂ってはいるけれど、家族への愛の強さが、こんなにすごかったんだと、玉木さんのお芝居を見ていて感じました。

――お客さんのコメントの話が出ましたが、現在、作品が公開中です。観客の反応をどう感じていますか?

「面白かった」とか、「伏線回収がすごい」といった感想はやはり嬉しいですね。タイトルの回収についても喜んでいるお客さんが多くて。あとは賛否両論だなと感じています。平均的に丸く「いい映画だね」と終わるよりも、好き嫌いが分かれても刺さる人に刺さるものにしたかったので。賛否の否を読むのは辛いですが、両方読んでいます。

◆見たことがない、読んだこともないものを作りたい

――片岡監督は現在、監督のほかに脚本や小説も多く書かれています。20歳のころに「楽しいことを仕事にしたいと思った」そうですが、表現者になりたいと思われたのでしょうか。

映画監督になりたいと思いました。最初にあったのはそこですね。実家が人形店をしているのですが、そこで働きながら自主映画を撮っていました。映画監督になろうと決めて、23歳くらいから20本近く撮ったと思います。ほとんど短編ですけど、全て本気で作っていました。

――映画の原体験、影響を受けた作品を挙げるなら?

『天空の城ラピュタ(1986)』と『バック・トゥ・ザ・フューチャー(1985)』です。映画の面白さを知った作品です。色褪せないのがすごいですよね。

――本作とは随分テイストが違う作品ですね。

僕の中では違うとは思っていないんです。『天空の城ラピュタ』も『バック・トゥ・ザ・フューチャー』もファンタジーですよね。あり得ない話を描くという意味で、僕の作ったものもある種のファンタジーだと思っています。自主映画を撮っていたときも、シリアスなものもあればコメディもありましたし、リアリティのある話もありましたが、どこかにファンタジーが入っていました。そうした意味で同じかなと。だから僕にとっての「楽しいこと」というのは、あり得ないこと、あり得ない世界を作りたいということですかね。見たことがない、読んだこともないものを作りたい。リアリティを突き詰めた映画も好きですけど、自分はそっちじゃないなって。それと今回の作品に関しては、TCPに応募したとき、明るい話よりも不穏な話を作りたいという衝動があったときだったので、こうしたテイストになりました。

――監督はTCPの前にも『1/11 じゅういちぶんのいち』(14)、『たまこちゃんとコックボー』(15)と長編映画を2作撮られていますが、TCPはどこで知って、なぜ応募を?

最初に情報を知ったのはインターネットだったと思います。「なぜ応募を?」と何度も聞かれましたが、逆に映画を撮りたい人間が、こんなチャンスがあると知っていて応募しないほうが不思議です。知ったからには応募するしかないです。

――応募するしかない、その一番の魅力は?

新人がオリジナルで撮れる機会って、ほぼないですよね。オリジナルに限らず、実績がないと監督を任されるチャンスはありません。なのに、企画を面白いと思ってもらえれば実績は関係ない。ほかにはないすごいところだと思います。

――「TSUTAYA CREATORS' PROGRAM FILM 2017」で準グランプリを取られたときは。

正直、取れると思っていなかったんです。だから最後のプレゼンでも割とリラックスできていたのかもしれません(笑)。『ザ・ドールハウス・ファミリー』は、人形を題材にしたもので、内心「商業映画として成り立つのかな」という思いがあったので、もちろん嬉しかったんですけど、驚きが大きかったです。

――そこから映画化に向けての改稿作業が4年かかったとか。人形が出てこない物語になったのはかなりの変更だと思うのですが。

映画をお客さんに届ける、映画を売る、というビジネス的な観点の勉強になりました。2年ほど脚本を直し続けても、なかなか上手くいかない。その原因が、「人形」にあると気づいてしまったんです(苦笑)。尖ったモチーフなのに、映像化するには相当な製作費がかかってしまうので。そこで、「人形を外す」という決断をしました。大変な決断だったんじゃないかと思われますが、僕の中ではもっと面白くなればいいと思っていただけでした。テーマの根本は変えずにより面白くできる案を思いついたので、前向きな方向転換でした。

――映画が完成して公開され、何か変化を感じていますか?

オリジナルでだいぶ好きなことをやらせてもらったので、もうこの先撮れなくてもいいかなみたいな気持ちが出ていたんです。でも大きな反響、様々な感想を頂いて「これでは終われないな」と思い始め、また監督作を撮りたいという欲が出てきました。

――映画を撮りたいならTCPを知って応募しない選択肢はないとお話されましたが、それでも踏み出そうか迷っている人に何かアドバイスはありますか?

自分の内から出てくる物語、自分にしか書けない、思いつけないものが、誰しもあると思うんです。実際に受賞してからは、ビジネス的な観点も必要にはなりますが、まずは「こういう話がヒットしているから」ではなく、「こういう話、面白そうだな」というものを書けばいいんじゃないかと。一言でいうと、オリジナリティですよね。それが大事。あまり深く考えずに、面白いと思ったことを書きなぐってみるのがいいんじゃないかと思います。

――最後に、一言お願いします。

『この子は邪悪』は、驚く方もいれば、笑う方もいると思います。なかなか無いタイプの日本映画になりました。大きなスクリーンで映える映画なので、ぜひ劇場に足を運んでほしいです。

映画『この子は邪悪』新宿バルト9ほか大ヒット上映中
出演:南沙良/大西流星(なにわ男子) 桜井ユキ/玉木宏
監督・脚本:片岡翔
主題歌:ゲスの極み乙女「悪夢のおまけ」(TACO RECORDS / WARNER MUSIC JAPAN)
製作幹事:カルチュア・エンタテインメント
制作プロダクション:C&I エンタテインメント Lamp.
配給:ハピネットファントム・スタジオ
TSUTAYA CREATORS’ PROGRAM FILM 2017 準グランプリ作品企画
Ⓒ2022「この子は邪悪」製作委員会
PG12

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