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誰にとっても故郷は愛しい

 故郷は「ふるさと」とも「こきょう」とも読みますね。特に「ふるさと」は、『万葉集』にもみられるほど古くから使われている言葉です。この故郷は「出身地」と同じ意味でも使いますが、さらに拡(ひろ)がりをもった不思議な響きがあります。生まれた場所だけでなくそこで育った頃の懐かしい思い出が、この言葉には込められているのでしょう。
 さて、お釈迦さまも晩年に、生まれ育った故郷であるカピラヴァットゥが隣国の大国に攻め込まれ、滅ぼされるという悲しい経験をされています。このお言葉は、その時に発せられたものです。
 悟り(さとり)を開かれ、執着(しゅうじゃく)、あらゆる執(とら)われの心から離れられたとされるお釈迦さまであっても、やはり生まれ育った故郷のことは愛(いと)しく思われたのでしょう。
 近年、日本でも地震や大雨などの自然災害が多発して、多くの方々が故郷を失っています。そして、目を世界に向けると人類の歴史で争いのなかった時代はありません。現に今、ウクライナの人びとが理不尽にも故郷を離れざるをえないのです。そういう方々の思いに、少しでも想いを寄せたいものです。
(本願寺新報2022年4月1日掲載)

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