桜と絵具と腕時計。思い出話。

絵が好きだ。でも下手だ。

春風が吹くと蘇る、宝物のような思い出がある。
大好きな絵と、わくわくする気持ちと、大好きなお姉ちゃんの話。

記憶とは美しく補正されるもの。
私の記憶の中ではこのシーン、表参道で桜吹雪が舞っているのだけど、表参道に桜の木あったっけ?まぁいいや。

ある春の気持ち良い日、高校1年で上京したての私は出来たばかりの新しいお友達…といっても3歳年上なので実質お姉ちゃん、と連れ立って表参道へ遊びに行った。当時はまだ同潤会アパートがあった頃。美大予備校生のお姉ちゃんとたくさんのギャラリーやお店を見て回った。二人で一緒に雑貨屋さんでそれぞれの腕時計を買った。これから始まる東京、高校、下宿生活が託されたピカピカの時計だ。とても気持ち良い春の風、木漏れ日。その瞬間に隣にいてくれた優しい楽しいお姉ちゃん。この場面は私の中で、例えいつかボケても忘れたくない、それはそれは尊い美しい思い出のひとシーンなのだ。

フラグを立てまくったようで恐縮だけどこのお姉ちゃん、現在進行形で全然元気です。音信不通とかなってませんので、なんか儚げな想像させてたらゴメンナサイ…。

で、冒頭とこのお姉ちゃんがどう繋がるのかというと。

私は1年間、お姉ちゃんの勉強の合間に…いや、今思うと結構邪魔してたんだと思うんだけど…デッサンを教えて貰っていた。当時お姉ちゃんは予備校の課題で毎日毎日早朝も日中も深夜もとにかく絵を描いていた。何枚も何枚も。
私からしたら、もの凄く上手。それでも厚い、「美大」への壁。

そこで私はすっかり、そしてあっさり、「こりゃ、私には無理だ」と早々に諦めた。(そして美大は一切受験せず、私大の文学部へ進む。この話もまた後日。)
「こんなに上手い人が苦戦している。じゃぁ私は一生受からないな。」
…今思えば、当時の私の辞書には「努力・根性」という言葉が一切無かったのである!!デデン!!(偉そうに言うことではない)

結局私は、受験は私大文学部。現時点ではスーパー無職(※厳密には有休消化モラトリアム期間中)だが絵とは無縁の仕事ばかりしてきた。しいて言うなら店舗のPOP描くぐらい。

…でも人間、好きなものってずっと好きなもの。
人生の節目節目で、自分が「絵が好き」なことを思い出す。
そして、Hysteric Blueの「~春~spring」のBGMと共にあの表参道の空気感とお姉ちゃんに絵を習った1年間のことを思い出す。20年前のあの日々を。

あぁ、私はやっぱり絵が好きだ。でも下手だ。

でも、また20年後、「あぁ、絵が上手くなりたかったな」と言って過ごすのだろうか。それは嫌だな。

春ですもの。また始めてみませんか。

↑ひっさびさに描いてみた。20分間一本勝負。ひぃぃぃぃ。形すら取れない!!
↑元がこれ。ふと気づいたらここがやけにデッサンモチーフの構図のようだったのが面白くて。

#絵 #思い出 #チャレンジ  

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