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祝詞 -norito-

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永遠に解けない暗号を、祈りの言葉に代えて。 詩集のような短編集のような。 書き手の意図など置き去りにして、言葉の羅列から立ち上ってくるイメージや感覚、それらが自分の内側にある世界… もっと読む
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2017年11月の記事一覧

私の町にだけ存在するヤドリ木について

私の町にだけ存在するヤドリ木について

 私の家の近所にヤドリ木の並木道がある。世間一般に知られている宿り木ではない。それは私の町にだけ存在する、いっぷう変わった植物だ。

 足元の道——訳あって舗装されていない——には、すでに赤い羽毛の絨毯が敷かれていた。スニーカーの底で踏みつけると、新雪のようにやわらかく沈み込む。あまりに心地よいので、つい持ち帰って布団や枕を作りたくなるが、残念ながらそれは国から禁止されている。

 ヤドリ木には葉

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贈り物

流れ弾を受けた覚えはないけれど
むしろ、弾丸を撃ち抜いたのは
この私なのだけれど
なぜか私の身体には
無数の弾痕が眠っていて
目覚める日を
今か今かと待ちわびている

ひとつ、再開の目処は立ち
ふたつ、繰り返し日々の再利用
みっつ、取り返しのつかない未来との和解

これらすべてを孕んだ夢を
枕元に置いて立ち去る者よ

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