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通貨は「インフラ」①――補償・給付の財源はつくれる

 新型コロナウイルス禍において国の「108兆円規模の経済対策」が示されましたが、現預金(お金)のかたちで補償や給付に回る額は十分ではありません。
全国知事会の緊急対策本部 損失補償求める緊急提言へ(NHK)
このままでは多くの人に壊滅的影響。「現金30万円を非課税世帯中心に」では明らかに足りない理由(Yahooニュース)
 補償がなければ休業できません。十分な補償を。
 個人に現金給付があれば、ひとまず生きていけます。すみやかな一律給付を。
 終息後、元気に動ける会社と人を維持できるかの瀬戸際です。
 ここでは、財源をつくれることを示します。

◆2つの財源

 財源には、以下の2つが考えられます。
①国債・地方債の発行
②企業・家計に増えた現預金(20年間で400兆円増加)の、有志による活用

◆①国債・地方債の発行

 国債残高はいま、1000兆円を超えています。地方債残高は150兆円近くあります。しかし、社会は維持されてきました*。(昨今の貧困拡大は、現預金が一部に偏る仕組みが原因であり、政府の借金とは無関係です。)(*MMT=現代貨幣理論に通じますが、ここでは論じません。)

 したがって、国債・地方債を発行すればよいのです。すでに日銀は、国債を500兆円近く買い支えています。同じ発想で、十分に財源をつくれます。
 そして、国債・地方債を発行して得られた資金を、あとで政府が回収すればよいのです。
 資金を補償や給付に充てれば、お金は、困窮する会社や人々に配布されたあとで、社会をめぐって富裕層のところ(多く稼いだ会社や人のところ)にたまります。そのお金を、税(法人・個人)の累進性を高めて、政府が回収すればよいのです。
 
 なお、国債・地方債を、銀行が買うと、世の中に出回るお金の量が増えます(”信用創造”が生じるためですが、詳説は省きます)。このことは社会に混乱と悪影響をもたらすおそれがあり、本記事の続き「通貨は「インフラ」②」で触れます。資金の回収が肝要です。
 
 いくつか留意すべき点はあります。
のちの国債償還(借金返済)を容易にするためには、国内向けに売ること(外国勢が買わないようにすること)
資金の回収は、たまったところ(富裕層=法人・個人)から行うこと。累進性を強化すれば可能

 地方債については特に、
富裕層からの資金の回収は国が行うこと。地方債発行により生じた資金は、地方から出ていって首都圏などの富裕層にたまりやすいため

◆②企業・家計に増えた現預金(20年間で400兆円増加)の、有志による活用

 日本の企業と家計は、この20年間で200兆円ずつ、合わせて約400兆円の現預金を増やしてきました(下図)。この現預金を活用できるはずです。

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 現預金が増えた一方で、
 ・日本の企業数は減少傾向&企業間格差は拡大
 ・人口は横ばい&家計格差拡大
なので、増えた現預金は一部の企業・人に偏って所有されていると思われます。
 
 増えた現預金が、いま、世の中に役立っていないこと=死蔵されている可能性を、下記の比較に見ることができます。
 【1980年、通貨の量は200兆円、GDPも200兆円程度】
 【2019年、通貨の量は1300兆円超、GDPは550兆円程度】
 GDPは、経済活動の活発さを表します。1980年には、通貨の量とGDPがほぼ同じでしたが、2019年には、通貨の量の半分以下しかGDPがありません。

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 ⇒現在は、経済活動に使われずに死蔵されたお金が、どこかに大量にあるということです。

 企業や家計で十分な現預金を保有している有志が、社会的協力の精神で、基金をつくれないでしょうか。それを国に無利子で貸し出すか、上記の国債・公債発行に応じて購入すれば、財源のひとつとなります。
 この場合は、世の中に出回るお金の量を増やさずにすみます。

◆将来のツケにはならない

 国債等の発行は国の「借金」ですが、将来困ることにはなりません
 前述したように、国債発行により生じた資金は、困窮する会社や人々に給付されたあとで、社会をめぐって富裕層のところ(多く稼いだ会社や人のところ)にたまります。それを適切な課税により政府が回収すればよいのです。
 これまでは適切に回収されていないから、国が赤字を積み重ねるほかありませんでした。その傍ら、企業や家計のどこかには、20年で400兆円の現預金が増えています。

 適切な対処をすれば生じないはずの「財政悪化」を恐れて、国民の命を救う補償・給付ができないのは、本末転倒です。

 将来的に、国債を償還する(借金を返済する)には利子分を支払う必要がありますが、財政上の心配はいりません。利子は、国債を購入した者の「儲け」になります。そのお金も結局は、誰かのところにたまります。たまったところ(富裕層)から回収すればいいのです。
 ※無利子の国債について、こちらの記事で少々記しました。

 十分な休業補償と、個人への一律給付を行い、のちに富裕層から回収するという方式は、世間の多くの声と合致していると思われます(4/8現在)。

◆通貨はインフラ。流通してこそ機能する

 通貨=お金は流通することで、さまざまな取引に使われ、人々の生活や社会をよくするものです。その意味で、ガス・電気・水道や、交通基盤などのインフラと同じです。

 今とにかく、お金を流通させることが肝要です。
 社会をくまなく流れるお金は、その過程で人々の、食費になり、家賃になり、教育費になり、医療費になり、活動資金になるでしょう。

 全国飲食店数を70万店として、平均500万円補償しても3.5兆円。
 全国中小企業360万社として、平均1000万円補償しても36兆円。
 国民一人あたり一律10万円を配布しても12兆円、20万円を配布しても24兆円。

 給付後の資金を適切に回収できれば、新しい財源を用意せずに、再び給付できます。給付→回収→・・のサイクルは、いま注目されている「ベーシックインカム」を可能にします。後日あらためて論じます。
 ※ベーシックインカム=すべての人に最低所得を補償する制度

 
 以上、いろいろな検討・議論に一案を提供すべく記しました。だれかを批判する意図はありません。私たちが手を携えて困難に向かえればと願います。
 今後さらに優れた案が世の中で検討されてゆく可能性もあります。
 いずれにせよ、とりいそぎの速やかな対策が必要です。

 ※つづく②では、補償や給付で出した資金は、必ず回収しなければならないこと、回収しない場合の世界的混乱のおそれを示します。
 ※また、本テーマのあとにはベーシックインカムについて論じます。

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