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経済死者を防げ ――新型コロナウイルス禍に打ち克つ経済

【経世済民】世の中を治め、人民の苦しみを救うこと。(広辞苑)

 新型コロナウイルス流行による経済的打撃は庶民を広く襲う未曽有のものとなりつつあります。以下では個人の生活保障につき論じます。

◆ ただちに 10万円/人 の現金給付を*

 派遣や非正規で働く人たち、親を頼れずバイトでやりくりする大学生、余裕のないひとり親、零細自営業者・個人事業主……
 このひと月どころか、今日明日を乗り切れるかどうか、生活不安にあえぐ人たちが激増中です。
 自殺、餓死、セルフネグレクトからの死、家庭破綻、虐待……等々、国中の人々の生存と健康に関わる事態です。
 また、そこまで追い詰められていなくても、多数の人たちが収入減または負担増によって先行きの不安を抱え、生活の質を落としています。必要な通院を諦める、子どもの塾代を払えない、食費を削る、借金の返済ができない・借金をしなければならない……
 
 すみやかな現金給付が必要です。ここでいう「現金」は現金、預金、小切手など、いわゆる“お金”として使えるものです。
 商品券という案が出ていますが、準備に時間がかかるうえ、家賃支払いなどには使用できないので、適切な対応ではありません。
 また、生活困窮世帯に限って給付する案が報道されていますが(3/25)、その判断の難しさや手間に加え、生活者同士に不公平感が生まれれば、社会が分断され、一致団結して困難に向かう機運もそがれるでしょう。
 一律全員給付にするべきです。
 アメリカでは大人一人に約13万円の給付が決まりました(リンク先bbc)。
 日本にもできるはずです。できる限りすみやかに実施しましょう。
 
現金配布の方法を少々考えてみます。
・小切手の一律配布は、銀行での現預金引き換えに混乱をきたすおそれがあるので避ける。
・振込口座記入用の返送ハガキを全世帯に送り、口座を記入し返送。預金のかたちで給付する。希望者には小切手で対応する。
・住所不定の人などには、自治体等で対応する。

 預金のかたちでの振込は、国税還付金で既に行われている方法です。
 政治家や官僚・公務員の皆さんも必死で取り組んでいるでしょう。しくみをよく知る方々が知恵と努力を尽くせば、現段階での素早く効果的な手段を選択できるのではないでしょうか。

*4/1追記。額に関してもっと大きな額の提案もなされています。また小切手のほうが迅速であるという意見も出ています。事態の推移をみると、より大きな額か継続給付の必要を感じます。
一人当たり20万円意見
一人当たり100万円意見
小切手推奨意見
 など。

◆ 財源はつくれる

 一人当たり10万円とし、
  10万円/人 × 1億2000万人 = 12兆円  (+諸経費)
 必要であるとして、財源はどうするのかという声はかならず上がります。しかし心配不要です。財源はつくれます。
 現在の制度のもとでは、国債発行により資金を調達することになるでしょう。日銀はすでに、500兆円近い国債を下支えしています。同じ発想で、数十兆円の財源をつくることができます。これにより国民のいのちを支えてほしいのです。
 ※国債等の保有者別内訳(財務省)(PDF)

 (ただし、次項に述べるように、資金回収のしくみは必須です。)

 また、もしここで、利子のない国債にすることができれば、将来へのツケはありません。これはかつてのアメリカでリンカーンが行った施策(政府紙幣の発行)に近いものです。※政府紙幣(コトバンク)
 無利子国債は日本でもすでに議題に上がっており、緊急対策として導入する下地があるように思われます。※無利子国債(コトバンク)
 

 日銀が金融市場の混乱を避けるために12兆円を出せるのであれば、 庶民の生活のために政府が数十兆円負担することに何をためらうのでしょうか。
 「財源」とはいつも、「やる気」と「同意」の問題に見えます。
(兵器を買う財源はあっても、研究機関に振り向ける財源はありません。
 長年にわたり法人税を下げ続け、所得税の累進性を緩和し続けてきたのも、「財源」確保には反した「同意」です。)
 ※日銀、ETF購入を12兆円に倍増 利下げは見送り(日経新聞)
 ※アベノミクス増税10兆円はトランプからの押し売り兵器に注がれた(マネーポストweb)
 ※「大学の貧困」が「国難」につながる深い理由 「科学立国危機」に文科省が行うべき改革とは(東洋経済)
 ※消費税アップは大企業が税金を払わないからだ(PRESIDENT Online)

◆ 資金回収のしくみは必須

 国債(利子の有無にかかわらず)を発行して給付した資金を、政府が回収する仕組みは、必ず必要です。給付しっぱなしでは、大きな混乱を招く恐れがあります

 国債発行により生じたお金は、日用品の購入や家賃支払いなど広く庶民の生活に役立てられた後、モノ・サービス ・不動産などを取り扱う企業・個人にわたります。それらのお金が再び庶民に戻ってくる道筋があれば、庶民の生活は維持されます。
 ところが、現在のように低賃金・低収入だと、それらの金額がふたたび庶民に戻ってくることは、短期的にはほぼ望めません。

 12兆円が配布されたとして、それらが行き着くのは、儲けた会社・人のところです。その後さらに、お金を貯める知恵とすべを持った人のところへ流れてゆきます。

 巨額の余剰資金は、金融市場に流れて投機(マネー・ゲーム、カジノ資本主義)に用いられる恐れがあります。その場合には、圧倒的多数がごく少数に貢ぐことになりかねません。しかも、今や日本の市場取引の最大を占めるのは外国人投資家です。
 ※カジノ資本主義(コトバンク)
 ※『フラッシュ・ボーイズ 10億分の1秒の男たち』(マイケル・ルイス 文藝春秋)
 ※日本株の3割を外国人投資家が保有?~相場を左右する外国人投資家~(日本生命)

 各国で国民の生活保障給付が検討されていますが、同じようにして世界中で莫大な金額が発生した先に、一部の富裕層が資産を爆増させる事態になったら、世界経済はどれほどの混乱をきたすでしょうか。
 したがって、現金給付を行った場合には、回収のしくみが必須です。現制度の下で現実的に対策するには、所得税(個人・法人)の累進性強化や、投資利益への累進制導入・強化が考えられます。

 たとえば、前澤友作氏はこのような発言をしました。

「政府が予定する全国民への現金給付の対象から富裕層が外れるそうだけど、仕分けるのも面倒で時間かかるだろうから、いったん全員に無条件で現金配って、コロナイヤーでも余力のあった富裕層からは、何らかの税金を臨時徴収する方が効率良いのではと思った。もちろん僕は応じます。」
「儲かった人の税率はどんどん上げればいい。特に今回みたいに有事の時は臨時でもやったらいい。税率上げると富裕層が日本から出て行っちゃう、ってよく言うけど、儲けさせてもらった生まれ故郷に恩返しできないような人はとっとと日本から出ていけばいい。」
https://twitter.com/yousuck2020/status/1242408625353576448
https://twitter.com/yousuck2020/status/1242415721176391681 

◆ インフレの心配は不要

 大型の給付により、インフレを懸念する向きもありますが、汲々としている庶民に対して緊急的に現金を支給するのであれば、通常の生活費に使われていくだけです。 インフレが生ずるほどの需要増にはなりません。
 そもそも、これまでも長年にわたって通貨は国から供給され続けていたのに、デフレが進んできています。世の中全般で、経費節減、人件費節減、低賃金・低収入が進んできたのがこの20年です。

 ただし、前述の、富める一部の者による投機、金融市場の攪乱が起きた場合には、どのような影響が生じるかわかりません。

◆ 継続的な給付も視野に

 現在の状況をみると、一度きりの現金給付で人々の安心が手に入るとは思われません。継続した給付も視野に入れていく必要があります。(その際には、適切な資金の回収が必要であることを、いまいちど強調しておきます。)

 こうした現金給付は、社会を構成するすべての人々に基礎所得を保証する「ベーシックインカム」に通じます。
 ※ベーシックインカム(コトバンク)

 アメリカでは、保守派で知られたニクソン大統領がベーシックインカム導入に画策し、貧困撲滅に動いていました。 1969年にはアメリカ人のほぼ80%がベーシックインカムを支持したという指摘もあります。
 50年たった今、アメリカでも日本でも「貧困は自己責任」とする風潮があり、歴史は後退しているかのようです。
 ※『隷属なき道 AIとの競争に勝つ ベーシックインカムと一日三時間労働』(ブレグマン、文藝春秋)

◆ 生活保護費の受給者や、外国人について、ひとつの見方

 現金給付について、生活保護費等の受給者に対して、厳しい声も存在するようです。もともと公費で給付されているので不要であろう、という意見です。
 ・支給されている生活保護費が、臨時の給付費に届かない場合には、差額の給付により埋める。
 ・それ以外については現状維持。
 とするのはいかがでしょうか。
 ただし、生活保護費は継続的に削減されてきており、その額の妥当性についてはここでは触れません。別途検討されるべきと考えます。
※4/28追記。生活保護受給者にも一律給付となりました。「一律10万円給付」で生活保護を放置しなかった厚労省の意外な英断」(ダイヤモンドonline)

 外国籍の人たちについても、同様に厳しい声が聞かれます。しかし、労働力としての外国人受け入れに動いている現状で、また、「研修生」と称した労働搾取に近い状況がたびたび明らかになるなかで、日本経済の維持に貢献している人たちを給付から外すのはおかしなことです。
 労働力を一方的に得ておきながら、困難の際には支援しない。こういう態度で日本が対するならば、彼らがいずれ国へ帰ったとき、日本の国益を損なう行動に出ても責められません。
 反対に、労働力という協力に対して、感謝の気持ちをこめた支援を行えるならば、日本への好印象を国に持ち帰ってくれるでしょう。将来的な日本の国益にもつながるはずです。

◆【経世済民】のために

 世の中を治め、人民の苦しみを救う。
 そのためには短期的な視野に立って財源の心配ばかりするのでなく、または一部のマイナス面に囚われるのでなく、人の命を救う姿勢を前面に、強い対策で既成概念を打ち崩し取り組んでいくことが、長期的には社会の安寧と人々の幸せにつながっていくのではないでしょうか。

 以上、いろいろな検討・議論に一案を提供すべく記しました。だれかを批判する意図はありません。私たちが手を携えて困難に向かえればと願います。
 今後さらに優れた案が世の中で検討されてゆく可能性もあります。
 いずれにせよ、とりいそぎの速やかな対策が必要です。


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