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4.暗闇坂むささび変化/風街ロマン

1番

ところは東京麻布十番
折しも昼下り
暗闇坂は蝉時雨

Wikipediaによると「暗闇坂」は実際に麻布十番にある実際の坂の名称のようだ。かつては昼間でも暗いほど鬱蒼と樹木が茂り、狭い坂道に覆いかぶさっていた。暗く見通しの悪い急な坂道であったため、妖怪や幽霊が出没するといった伝説が生み出されたようだ。そんな暗闇坂の真夏の昼下がりの出来事を描いている。

本格的なカントリー調の曲であるため、怖いはずの暗闇坂はポップさがあり、また強い郷愁感を覚える。

黒マントにギラギラ光る目で
真昼間っから妖怪変化
ももんがーっ
ももんがーっ
おー
ももんがーっ   

妖怪変化とは「化け物」の昔の言い方。黒マント×ギラギラ光る目×化け物=怖いという図式が成り立ちそうなものだが明るいカントリーの曲調に加え、昼間であること、そして「ももんがーっ」と繰り返すことにより全く怖くないモモンガの化け物が立ち現れる。

むしろ主人公はモモンガの化け物を求めていて、呼び出そうとしているのではないか。

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2番

蝶々はひらひらひーら
蝙蝠(こうもり)ぱーたぱた
怪しげな雲流れる

蝶々×コウモリ×怪しげな雲、は完全に怖いシーン。しかしなぜだろうか全く怖くない。「怪しげな雲」とあからさまに言い切っているのが可笑しい。お決まりのパターン。

黒ソフトに耳まで裂けた口で
「ごぶさたでした」と草疲びれた声
ももんがーっ
ももんがーっ
おー
ももんがーっ   

ここでモモンガの化け物と主人公の邂逅。「ごぶさたでした」とはなんと現実的な挨拶か。完全にくたびれている。「食べてやるぞ」ではないのだ。モモンガの化け物よ、あのころの生き生きしていた恐ろしい君はどこへ行ってしまったのだ。ももんがーっ、おー、ももんがーっ

3番

思い出してみればお婆ぁちやんの
昔噺でお目にかかった以来

モモンガの化け物が生き生きしていたのはお婆ちゃんから昔話で聞いた幼少のころだと思い出す。あの頃の東京と今の東京は違うものになってしまった。

「苦労ばなしのひとつやふたつ聞かせろ」と
手を取り行くのも絵空事
ももんがーっ
ももんがーっ
おー
ももんがーっ

そしてモモンガの化け物に話しかける主人公。いや、絵空事だった。
つまり、そもそも暗闇坂でモモンガの化け物に出会うことすらできていないのだろう。話しかけた瞬間にモモンガが立ち消えてしまうイメージを持った。モモンガの化け物が生きていく場所はもう今の東京にはないのだ。

まとめ

カントリーの曲調と歌詞を通じてかつての東京下町の和やかな雰囲気が想像される。主人公が「おーももんがーっ」と叫んでいるのは昔の東京を懐かしむ気持ちからなのだろう。ユーモアあふれる曲。

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