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京都・鴨川の等間隔カップルを画像解析してみる

ラーメン屋の行列を画像解析したら?

私は学部・院生時代を京都の大学で過ごして今も京都に定期的に通う生活なので、この街にはとても思い入れがあります。

例えば木屋町の三条通りに「長浜らーめん みよし」というラーメン屋さんがあります。1983年創業の老舗で、学生時代にサークルやゼミのコンパで2次会で痛飲したあとは、このラーメン屋さんで〆る…というのが京都の大学生の典型的な習性のひとつでした。

2022年現在の長浜らーめん みよし。

不思議なことに昼間にこのお店の前を通ってもそれほど「食べたい」という気持ちは起こらないのですが、夜中に痛飲して木屋町通を歩いていると、誘蛾灯に引き寄せられるようにふらふらとこの店に引き寄せられ、気がつけばトロトロのスープの長浜ラーメンを啜っているのでした。

コーディングで考現学

そんな「みよし」も、昨今の学生が街に出なくなった時期にはお客さんもまばらでしたが、最近はかつてのように、深夜になると行列ができるようになってきました。

先の週末(5月下旬)も22時ごろに木屋町通りを歩いていると、ぽつぽつと行列ができていて、「最近は若い人たちも1軒目が終わったらすぐに帰ると言われてるけど、そこそこ夜まで飲んでいるのかもしれないな」と思いました。

待てよ…そうか。「みよしの行列」や「鴨川の等間隔カップル」みたいに、「人の集まりの象徴として機能しているような場所」を考現学的にひたすら定点観察し続けて、人数や間隔データをストックしていけば、何らかの意識や行動の変化を捕捉し、未来洞察に役立てられないだろうか…?

そしてそれを自動化できれば…

ということで、Pythonでコードを組んで、自分が撮影した写真を解析して物体検出してみました。

とりあえずこのよくわからない試みを「コーディング考現学」と名付けておいて、まずは、みよしの行列を解析してみましょう。

長浜らーめん みよしの物体検出結果。

ほぼ完璧に人物を検出できていますね。右のほうの隠れている通行人もちゃんと検出できていますし、左手に駐車されている原付も検出できています。

これくらいのアングルにカメラを据え置きして、毎日同時刻に自動撮影した画像を解析して一年位蓄積していけば、木屋町の飲食店の景気動向くらいとは何らかの相関を見出せるかもしれません。

鴨川のカップルを画像解析したら?

次は鴨川の河原に座る人々です。まずは四条大橋から北山方面に向かって撮影した画像を解析してみました。

四条大橋から撮影した写真を物体検出してみる。

手前に座っている人たちはほぼ検出できていますね。奥に行くと、アングル人物同士の上重なりが多くなるため難しいようです。四条大橋からの画像を用いる場合は、もう少し高い位置か、橋の東詰めから撮った写真を対象にする必要がありそうです。

そこで思い切って、川を挟んで真向かいにあるビルの屋上から、同じ場所を撮影して解析してみました。

鴨川の向かいから撮った写真を物体検出してみる。

うん、なかなかの出来です。

一部、 5〜6人のグループは検出できていませんが、カップルは概ねできていますね。

この画像はiPhone13 Proの3倍望遠モードで撮影したのですが、一眼レフの望遠レンズを使ったり、左右にかけて複数の画像を撮影しマージしたものを分析するなどすれば、すべての人物を漏れなく検出できるかもしれません。

他のデータとの相関を探ってみたら?

その上で、背後の川床の人物や通行人を除外するコードを組んで、時系列分析を行えば、ちょっとおもしろい可視化ができるかもしれません。

  • 全部で何人いるか?

  • 何人組が何組ずついるか?

  • 組み同士の間隔は平均して何メートルか?

  • これらが曜日や季節によってどう変動していくか?

  • その数値は気温や湿度、その他のデータとどのように関係しているか?

さらには動画を使ってリアルタイムな解析ができれば、

  • 平均滞在時間はどのように変化していくか?

  • どのようなメカニズムで等間隔が保たれるのか?

  • 来訪者が座る場所を決める時の何らかの法則はあるのか?

などの考察ができるかもしれません。

こうした考現学的リサーチは、すべて人力で行おうとするととてつもない労力がかかっていましたが、今や機械の目や計算能力をうまく使うことで、ずっと効率的にできる可能性が高まっていると思います。

棋士の羽生善治さんは、人間の将棋とAIの将棋の関係について、次のような指摘をされています。

人間が指す将棋は、美意識が高いといわれます。それに対して、AIの将棋は美しくはないものの、盲点や死角を見つけるのがうまい。異なる個性があるんですよ。私は人間とAIの発想の両方を吸収しながら、さらに実力を高めていきたいと思っています。

https://onl.sc/yKMTfZR

人間の思考や身体の機能を、完全に機械に代替させるのではなく、機械の強みを使って人間側の思考や身体能力を活性化する。

鴨川の等間隔カップルについても、機械の目は、もしかしたら私たちが見落としていた何かを発見するのを手助けしてくれるかもしれません。

何の役に立つかはわかりませんが、よくわからないワクワクとした可能性を感じます。引き続きコーディング考現学の試行・試作を続けたいと思います。

それではお聴きください、鴨川が舞台のアニメーション作品『四畳半神話大系』より、ASIAN KUNG-FU GENERATIONで「迷子犬と雨のビート」。以上、徒然研究室からでした。


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