ママコンプレックス


一時期、同業の先輩方の起業・独立を続けて目の当たりにすることがあった。


普通に会社員として働いていたわたしには、どうにも理解できず、あんなに先輩方を尊敬していたのに、その時はなんだか苦手だなぁと感じていた。


起業なんて自分でとらなきゃいけない責任が増えるし、やらなきゃいけない事務仕事も増える。
なんでそんな面倒なことをわざわざみんなやるんだろう、わたしはそんなリスクとらないぜ!と思っていた。


そして、その先輩方は、揃いも揃って大体が「ママ」なのだ。


当時、独身だったわたしは、「ママ」の立場で物を言う人がとっても苦手だった。
わたしのしていた仕事は、「ママ」を相手にすることも多く、大半がいい人だったが、たまに「子供を産んでいないお前に何がわかる」というような気持ちをぶつけられることもあった。
それをぶつけられるのは、わたしの力量不足なので、経験していないことを必死に理解しようとして、なるべくなるべく「ママ」という人達に寄り添うように努力していた。
なので、「ママ」というカテゴリーに入る人達からたまに発せられる、「経験してないんだからわからなくて仕方ないよね」という空気がものすごく悔しかった。
こんなに努力して理解しようとして、日々の仕事でお客さんの気持ちを大事にしようと思っているのに、経験してないんだからわからないで片付けられたくなかった。
「ママ」という人達に、わたしが勝手に感じていたコンプレックスだ。


なので、余計に、尊敬している先輩方が「ママ」という立場になり、己の立ち位置を見直した結果、同じ仕事をしている場所から離れていってしまうのが納得いかなかった。
当時のわたしはあれこれ理由をつくり、尊敬していたはずの先輩を苦手だなと思い始めていた自分をなんとか正当化しようとしていたが、ただただ単純に、ちょっとした僻みや妬みと、先輩方が遠くに行ってしまうことへの寂しさだったのだと、今ならわかる。



さて、自分もいわゆる「ママ」という部類に仲間入りした今、わたしにも「起業」というものが視野にチラついている。
娘を目の前にして、会社員の不自由さが身に染みてしまった。


そんな時に、まわりを見渡してみたら、先に起業した先輩方がたくさんいた。
寂しい気持ちが恥ずかしいから蓋をして、自分の方が物分かりのいいふりをして、どこか見下すような気持ちでいたわたしのくせに、結局今その先輩方に助けられている。


そんな情けない今のわたしを、過去のわたしを、「経験してないんだから仕方ないよね」というつもりは毛頭ないが、そんなわたしも、抱きしめてあげる自分でいようと、今は思える。
それが、苦手だと思っていた先輩のおかげ。


わたしの人生、きちんと伏線を回収しているな。
必要でないことは、起きていない。



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