出せなかったラブレター②

拝啓 君へ


また私です。


君がまめに返事をくれるようなタイプじゃないのはわかっていたから、返事を待たずに次の手紙を送ることにしました。




元気ですか?


私はようやく仕事に慣れてきたところです。また、会社に行きたくないなあなんて感じる暇もないほど、毎日刺激的で退屈はしていません。

いつかは朝起きて通勤することが憂鬱になる日が来るんだろうか。あまり、想像できません。



さて、新社会人として毎日が新しいことの連続で、なんていうと陳腐に聞こえるけれど、実際学生とは全く違う仕事に毎日取り組んでるわけだ。


ところがなぜか最近すべてのことにおいて、なんとなく「終わり」を意識してしまう。


この電車に乗って通勤するのももう少しで「終わり」かもしれない。友人と狭いテーブルを囲ってお酒を飲んだりするのももう少しで「終わり」かもしれない。靴擦れで足を引きずりながら同期と研修の愚痴を言いあうのももう少しで「終わり」かもしれない。



フレッシュな新社会人とは思えない思考。


何が、私をそんなに「終わり」へと駆り立てるんだろう。


すべて、君との時間が「終わり」に近づいてきてるから、かもしれないという考えに至った。


君はもうすぐこの土地を離れてどこか遠くに引っ越してしまうんだよね。

そう思うと、ここでの私の生活の全部が「終わる」ような気がして、こんなにも寂しさと焦りに駆り立てられるんだろう。


なんとなくラブレター(これ、ラブレターだよ気づいてた?)らしからぬ話題になってきたので、ここらで終わりにしよう。これ以上自分語りを始めてしまうと君がイライラしてこの手紙を破り捨てかねないからね。


とにかく、私は元気です。君も元気だといいな。

早く会いたい。


p.s. この前君が送ったよって言っていた誕生日プレゼント、まだかなあって首を長くして待っています。届いたら1番にインスタで自慢するって決めてる。


じゃあね



敬具


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