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山小屋の読書感想文①『山小屋ガールの癒されない日々』

山小屋スタッフという仕事、
登山をする人であれば知っている人は多いと思いますが、

登山をしない人にとっては
「何それ?」
と言われてしまうような非常にマイナーな仕事です。

そんな認知度の低い仕事の体験談を綴った本が、
近頃書店で目につくようになってきました。

そんな近年、なぜか流行りの?山小屋本
山小屋の認知率アップに貢献するためにも
何冊か紹介したいと思います。

1冊目は吉玉サキさんの
山小屋ガールの癒されない日々』(平凡社)

著者の吉玉サキさんはnoteクリエイターであり、
noteの姉妹サイトcakesで「小屋ガール通信」というエッセイの連載をされていた方です。

この本はその「小屋ガール通信」の内容をもとに作られています。

タイトルを含め、
山小屋あるあるが多数散りばめられていて、
最も現場に近い山小屋本だと思います。
同業の人間としても「わかるわー!」と頷きたくなる場面がたくさんあります。

実際に私のマガジン「山小屋よもやま話」や「小屋番日記2021」と比較すると、
私がこの本を真似したのではないか、
と思われてしまうくらい
同じような描写があります。

(真似しているつもりはありませんが、
恐らく影響は受けています…)


水、食糧、ヘリコプター、クマ、賄い作り、などなど。
多分この本を読めば山小屋での様子は
概ね網羅できるかもしれません。


実際に私の同僚には、
この本がきっかけに山小屋へ来たという方もおり、改めてその影響力を感じます。


山小屋の描写ともう一つ、この本の特徴は
山小屋における人間関係に大きく焦点が当てられていること。

特に個性あふれる山小屋スタッフは
10代の若者から定年退職をしている60代まで。
愛されキャラから、おっちょこちょい、しっかり者もいれば引っ込み思案まで、
様々な人たちが紹介され、そのエピソードが綴られています。

他にもお客様、常連さん、救助隊、そして著者のパートナーさんとの馴れ初めの話。


どれも山小屋という特殊な環境下では起こっている話でありますが、
よく考えると下界でも同じようなシチュエーションはあるな、と思える話がたくさん出てきます。

山小屋って日本の僻地にありながら、
実は下界と地続きの普遍的な場所なんだ、
と気づかされます。

だからこそ、山小屋に来たからといって
期待通りには「癒されない」ということにもなるのです。


最後に著者の吉玉サキさんは、
山小屋業界では恐らく少数派の
登山経験が無い状態で山小屋に働きに来た方です。

下界での仕事が上手くいかなかったところ、
ご友人の勧めで山小屋に来て、
結果として10年勤め上げられたそう。

だからこそ下界での生活とのギャップをよく理解されていて、
山小屋を知らない、という方にも伝わりやすい内容になっています。

「山小屋で働いてみようかな、という方」
「山小屋の仕事を知りたいな、という方」
にオススメの作品です。


つの

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